2012年12月30日日曜日

地物の3次元モデル化ソフト image master ビギナーズ

今年の9月に、好学趣味の一環として、日本写真測量学会主催デジタル写真測量講習会に参加しました。
この講習会で、通常のデジカメと写真測量ソフト(「image master ビギナーズ」というデジタル写真測量入門ソフト)を使った3次元モデル作成法について体験しましたので、参考までに報告します。

1 講習会参加目的
私がこの講習会に参加した目的は、空中写真あるいは通常の風景写真を実体視した時に、自分が感じた立体感覚をそのまま第三者に伝える方法がどこかに無いものかと探していたところ、地物を3次元モデル化するパソコンソフトが世の中にあり、それが写真測量ソフトというものらしいと気がついたからです。
この講習会ではimage master ビギナーズというソフト(学習教育用ソフト)の操作方法等を体験でき、ソフトも無償で入手できると知り、そのために日本写真測量学会の会員になり、講習会に参加した次第です。

デジタル写真測量講習会風景(2012年9月11日)

2 3次元モデル作成に用意するもの
・通常のデジカメ
・ソフト「image master ビギナーズ」とパソコン

3 デジカメのキャリブレーション
image master ビギナーズに内包されているソフトimage master calibを使って、デジカメ個体の歪みを計測します。
この歪み計測データにより、撮影した画像の歪み補正画像を作成することができます。

image master calibを使って計測するカメラ内部のパラメータは次の項目です。
① レンズの焦点距離     : f
② レンズの歪み(放射方向) : K1,K2
③ レンズの歪み(接線方向) : P1,P2
④ センサの主点位置     : Xp,Yp

キャリブレーションは次の写真に示すような壁に貼った目標を左右、上下から角度を変えて撮影してパソコンにセットすれば、ソフトがカメラ内部のパラメータ(カメラデータ)を自動計測します。

キャリブレーション用目標

私のデジカメのキャリブレーションの結果

4 練習用モデルの3次元モデル化
主催者が用意した単純な形状の練習用モデルを写真撮影しました。

練習用モデルの撮影

撮影は左側からと右側からの2枚です。 この2枚の写真をimage master ビギナーズで標定(同じ地点の計測など)し処理すると3次元モデルを作成できます。

パソコン上に作成した3次元モデル

3次元モデルはパソコン上で自由に動かしてみることが出来ます。
また、次のように、任意の平面を基準にして等高線を描くこともできます。

3次元モデルに等高線を描いた画像

また、3Dモニター偏光メガネ用立体画像も作成できます。3Dモニターと偏光メガネを用すればパソコン上で実体視できるというわけです。

3Dモニター偏光メガネ用立体画像

5 感想
世の中にこのようなソフトがあり、その使い勝手(自分にとっての使い勝手)レベルが体験できたことは大変良かったと思いました。
何よりも、手持ちのデジカメがパソコンソフトにより、一級の測量機器に変身することが魅力的です。
このソフトにこだわることなく、類似のソフトについても検討して、次のような活動を個人レベルで実現したいという夢が広がりました。

趣味活動の一環として、小型無人飛行体から花見川等の空中写真を超低空から撮影し、特徴的地物(例 覆土されたトーチカ)の3Dモデルを作成して情報分析し、地域を知る活動を深める。

なお、image master ビギナーズの親ソフトはトプコン製3D画像計測統合ソフトウェア「image master photo」であり、価格が60万円程度ということのようです。

2012年12月29日土曜日

戦争遺跡予備調査報告書の公表

12月8日記事「花見川河川敷内で発見された戦争遺跡の予備調査参加者募集」で呼びかけた予備調査を、12月18日に無事実施することができました。
関係機関等の皆様のご協力に感謝申し上げます。
この予備調査の報告書を公表します。
次の表題をクリックしてください。
花見川河川敷内で発見された戦争遺跡の予備調査報告書 (2.6MB)

なお、この予備調査報告書についてご感想等があれば、次までメールしていただきたく、お願いします。
arakiあ246.ne.jp  (「あ」を「@」に差し替えてください)

2012年12月24日月曜日

無償強力調査ツール パソコン画面上の空中写真実体視法

おそらく地理や地形地質など地域に関わる調査研究者はだれでも行っていると思いますが、お金のかからない、即時情報入手可能な、パソコン画面上における空中写真実体視法を紹介します。

私は偶然この方法を発見し、どうしてもわからなかった事柄が空中写真実体視で氷解したことが何度もあります。
調査したい対象をお持ちの方ならば、今すぐ利用できる無償強力調査ツールです。活用しない手はありません。

2012.12.18記事「覆土秘匿前のトーチカの姿を米軍空中写真で見る」のコメントで、海老川乱歩さんから空中写真実体視の方法について知りたい旨質問がありましたので、私が実行している方法を以下に書きます。
空中写真の専門家等の方とこの方法について話したことはありませんので、もっと効率的、効果的な方法があるかもしれませんので、その点はご容赦ください。

なお、終戦直後撮影の米軍空中写真を対象に話を進めます。

ア 用意するもの
1 面積の大きいパソコンディスプレイ
パソコンディスプレイ上で空中写真を2枚用意して実体視するので、大型のディスプレイがあった方が作業領域が広がり、作業しやすいと思います。
私は真ん中に24インチ、両端に27インチの3枚のディスプレイを使っていて、空中写真実体視は真ん中の24インチディスプレイを利用しています。
空中写真判読そのものはディスプレイは1枚でも全くかまいません。しかし、前後の作業をするスペースが別の画面としてあると重宝です。(心理的ストレスも減少します。)
作業空間が手狭になることを覚悟すれば、小さいディスプレイ1つでも作業を行うことはできます。

(一般論としてパソコンの画面を2画面、3画面にすることをお勧めします。画像を扱う場合や多種資料を扱う場合は、1画面よりも作業効率が数段階アップします。図面を広げたり、多量の資料を扱う仕事を狭い机でする場合と、広い机で行う場合とでは作業効率が大きく異なりますが、デジタル作業でも全く同じです。)

2 2枚の画像を別々に表示できる画像ソフト
画像の切抜ができる機能と2枚の画像を別々の画面で表示し、それぞれを同じ比率で拡大したり、縮小したりできる画像ソフトを用意します。
私は当初フォトショップ使い、最近ではイラストレーターを使っています。

詳しい説明は省きますが、画像の切抜ができるソフトとエクセルだけでも大丈夫だと思います。
エクセルを2画面立ち上げ、それぞれに張り付けた画像(空中写真)を同じ比率で簡単に拡大縮小できるテクニックを見つければ(おそらくすぐ見つかると思います)、シンプルなだけに、もしかしたらフォトショップやイラストレーターより使い勝手がよいかもしれません。

イ デジタル空中写真のゲット法
国土地理院WEBページの「国土変遷アーカイブ 空中写真閲覧」に行き、「空中写真を見る」をクリックします。
http://archive.gsi.go.jp/airphoto/

現在公開されている次の空中写真デジタル画像を閲覧できます。
1936年1月~1945年12月撮影:約 17,000枚
1946年1月~1960年12月撮影:約151,000枚
1961年1月~1970年12月撮影:約160,000枚
1971年1月~1980年12月撮影:約428,000枚
1981年1月~1990年12月撮影:約161,000枚
1991年1月~2000年12月撮影:約 91,000枚
2001年1月~2010年12月撮影:約205,000枚
2011年1月~2011年12月撮影:約 27,000枚

このWEBにおける各種検索機能を使って例えば次のような画面に到達します。
この画面は米軍空中写真(USA-R2769-95)の画面です。

米軍空中写真(USA-R2769-95)の画面

この画面で画像解像度200dpiをクリックします。
クリックすると拡大された空中写真が表示されますが、ctrlキー+マイナスキーあるいはWEB閲覧ソフトの拡大縮小機能を利用して、写真全体が画面に表示されるようにします。

次のような画面にします。

200dpiによる空中写真の画像

この画面になったら、altキー+prtscnキーを押します。この画面だけをパソコンのクリップボードに保存したことになります。
次に何らかの画像ソフトを立ち上げ、新規画面をつくりクリップボードから情報を書き込みます。
(フォトショップでは、ファイル→新規→ok→ctrlキー+Vキー)
次に、画像ソフト上で、書き込んだ情報の本来の空中写真部分を切抜きファイルとして保存します。

切り抜いた空中写真

これで、200dpiのデジタル空中写真を1枚ゲットしたことになります。
続いて、この空中写真の左右いずれか隣の空中写真についても同じ操作を繰り返します。

隣り合わせの2枚の空中写真の重なる部分が実体視可能な範囲です。

ウ デジタル空中写真の実体視法
空中写真の実体視を行っている時のパソコンディスプレイ画面です。
空中写真の実体視を行っている画面

この画面で、右の画面は右目、左の画面は左目で見ます。
確実にそうするために、最初は、画面中央で視線が交錯しないように、衝立になるような物(紙など)を障害物として鼻の先に持つことも有効です。
左右の目で見た画像で同じ特徴地物や模様に着目して、それが重なるように目を動かします(眼球運動)。
左右の同じ特徴地物や模様が重なった瞬間に実体視が成立します。
その時、凹凸が眼前に、印象上は突如広がりますので、実体視できているかいないかわからないという状況はありません。比喩ではなく、字義通りの意味で次元の異なった映像に変化します。

実体視がなかなかできない時は、一方の空中写真画面をマウスで左右どちらかに少し動かして実体視しやすくするような工夫も必要です。
疲労している時はなかなか実体視できないこともあります。
一度実体視ができれば自転車運転、水泳のようにいつもできるようなります。
早い人で5分くらい、遅い人でも15分くらい試行錯誤すればできるようになると思います。

書店に「目を良くする」というキャッチフレーズでカラー刷り模様の立体視専門の本がいくつも出ています。
このような本を立ち読みして立体視の練習をすれば、空中写真の実体視も同じことですから、コツがはやくつかめるかもしれません。

写真を左右入れ違えると、谷が凸、尾根が凹の反転した実体視になります。

エ 実体視における拡大縮小、判読結果の記入
画面上で2枚の写真を同じ割合で拡大・縮小して、それに合わせて画像の配置を実体視できるように変えれば、より詳細の凹凸、あるいはより広域の凹凸がわかります。
これは印画紙印刷空中写真ではできないことです。
実体視しながら、一方の写真に判読した結果をマウスを使って線等で記入することも工夫次第でできます。

オ 超精密作業は印画紙印刷空中写真を購入して自分でスキャンする
国土地理院のWEBサイトから入手できる空中写真の画像解像度は200dpiが限界ですから超精密な作業はできませんが、一般的には空中写真を購入しないで、WEB画面から情報を入手して、それで事足りることが多いと思います。
今回の戦争遺跡予備調査ではWEBからゲットしたデジタル空中写真では拡大していくと画像が荒くなり、自分の望む結果が得られないので、印画紙印刷写真を国土地理院から購入しました。
スキャンは自分の持っているスキャナーの最高画像解像度である1200dpiでスキャンしました。
1枚スキャンするのに10分かかりました。
こうして作成したデジタル空中写真を64倍に拡大して実体視し、トーチカ本体の姿を見つけました。
空中写真を64倍に拡大するという行為は使った画像ソフト(イラストレーター)の画像拡大機能の最大値を使ったものであり、自分にとっては初めての極限に挑戦するような行為でした。
空中写真を64倍に拡大すると1枚だけではぼんやりした画像ですが、実体視すると詳細なところまで物の形状、凹凸がはっきり認識できます。

カ 余談
このようにして空中写真を実体視して、自分自身はトーチカの3D形状がよくわかるのですが、それを他の人に生き生きと伝える方法が見つかりません。
今回、トーチカの形状を簡単な線画で表現しています。
作業労力配分上そこまでしかできません。
本当は微細な影等を書き込んだ3Dスケッチを作成したいのです。しかし、それはかなりの労力と(私が未習得の)テクニックが必要となります。
自分が実体視したその立体感覚そのものをデジタル情報として切り取り、そのまま他人に提示できるような方法が見つからないものか、思案している今日この頃です。
要するに、2枚の空中写真から対象物のデジタルモデルを瞬間的に作成する方法の出現を希望しているのです。

2012年12月23日日曜日

戦争遺跡予備調査における草刈の感想

ア 草刈決行に至るまで
最初の下見の際、トーチカ監視塔は笹によって完全に隠れていて、情報がなければ100%見つけることはできない状況でした。
しかし、柏井小学校創立20周年誌の写真と鉄筋の一部(戦後捨てられたものであることがその後判明する)が見えていたこともあり、それを手がかりに笹藪の藪漕ぎをしてトーチカ監視塔に到達し発見することができました。

最初にトーチカ監視塔に気がついた時の状況
トーチカ監視塔は全く見えないが、戦後誰かによってこの場所に捨てられた異形鉄筋の上部が右に見える

藪漕ぎをしている最中には、足が地面に着くことはなく、曲がった笹の上に乗っていて、まるで空中浮遊している状態になってしまいました。
地面の傾斜もあり、一人で心細い気分になりました。
しかし、危険に対する不安より、好奇心の方が勝って、トーチカ監視塔を発見できました。

藪の中を空中浮遊するような状況では予備調査を実施できないので、後日の下見の際に草刈を行うこととしました。

イ 草刈決行
人生初めてのエンジン付き刈払機による草刈りを始めたところ、すぐに機械操作のコツはおぼえました。
3時間かかってトーチカ監視塔の近くの予備調査に必要な最低限の面積を草刈しました。
背丈をはるかに超える笹が密生し、ノイバラ等の刺の多い小灌木が混ざり、径3センチはあろうかというツタ類が縦横に張り巡らされていて、この草刈作業は公園や道路脇の草刈とは全く作業の質が異なるであろうと想像しました。
草刈を終えた時は、前日WEBで見たキックバックなどの危険な状況の回避を念頭においた作業時間が終了したことでもあり、ほっとしました。
しかし、思った以上に小面積しか草刈できなかったことに改めて気がつきました。草刈のプロならおそらく私の2倍はできるかもしれないが、3倍は無理なのではないかと体が勝手に積算していました。
トーチカ本体全体の草刈はプロの仕事として5人日くらいの重労働作業であろうと考えました。

草刈後姿を現したトーチカ監視塔(下部)
メジャーの長さは1.5m

ウ 笹の切り残しの危険性
なお、草刈の跡に尖った笹の切り残しが出るのは避けがたいものですが、それが大変危険であることをこの作業前に認識していたので、靴の中敷きに踏み抜き防止用の鉄板を入れて作業しました。
おそらく踏み抜き防止用鉄板を靴底に入れなければ、安心して作業できなかったと考えられます。怪我をしていた可能性もあるとおもいます。
安全靴と称するもので、踏み抜き防止機能を有するものは無いとのことですので、笹地における草刈では、他の防護装備とともに鉄板の靴中敷きが必須です。

危険な笹の切り残し

エ 草刈時期
草刈をしながら、ハチ刺されの危険性が無い時期であることに、密かに安心しました。
ハチが活動している時期ではハチ刺されによるアレルギー反応で重体に陥ったり、重篤な後遺症が残ったり、場合によっては命を落とすこともあると野外調査関係者から体験を聞いたことがあります。

オ 行政に本格調査を要請する理由の一つが草刈の実施
今回の予備調査でトーチカ監視塔、トーチカ本体、軽便鉄道橋台を再発見し、今後本格調査の必要性が生まれましたが、今後の調査では草刈が必須であり、その作業を市民が行うのはあまりに危険であり、草刈のプロに登場してもらう必要を痛感しました。
行政に本格調査実施を要望する理由の一つが、当該現場における草刈実施は市民では無理であるという点にあります。

●「花見川河川敷内で発見された戦争遺跡の予備調査報告書」は近々このブログで公表予定です。

2012年12月18日火曜日

覆土秘匿前のトーチカの姿を米軍空中写真で見る

米軍による1949年4月26日撮影1万6千分の1空中写真を拡大実体視して戦争遺跡について分析を行いました。

分析に用いた空中写真の1枚

国土地理院より入手した印画紙印刷空中写真を1200dpiでスキャンし、それを6400%に拡大して、パソコン画面上で実体視して構造物の状況を把握しました。赤枠内の拡大図を次に示します。

米軍空中写真の実体視により把握した構造物

最近現場で発見した軽便鉄道の西岸橋台とトーチカ監視塔の外、軽便鉄道橋脚2基、東岸橋台、トーチカ監視塔上部、トーチカ本体を確認できました。
トーチカ本体の空中から見る姿は想像していた以上に複雑で、かつ攻撃的な構造を有していることが判明しました。トーチカですから当然ですが。
また、1949年時点では地表に露出していて、それ以降に土で埋められたことがこの空中写真から判明しました。
さらに、現存する監視塔は下部であり、その上部に小さい塔の存在が確認できました(上部小塔は現存しない)。
これまで、この構造物がトーチカではなく、防空軍事倉庫等である可能性を排除できないと考えていましたが、米軍空中写真判読によりその可能性は消えました。

米軍空中写真の実体視により把握した監視塔とトーチカ本体の構造に関する情報

トーチカは花見川斜面を利用して築造され、3方向の砲口をもつ構造であると推察できました。

これまでに現場では次のような情報を得ています。

これまでに得られた現場の情報

これまでに得られた現場の情報に、米軍空中写真判読結果を、本来必要な各種補正をしないで便宜的仮作業として重ね合わせてみると、双方の情報をほぼ整合的に理解できることを感得しました。

現場で得られた情報と米軍空中写真判読の大ざっぱな重ね合わせ

米軍撮影空中写真を実体視している時、ふとタイムトラベルの空中飛行をしているような感覚に襲われました。なにしろ地下に埋もれていて空想するしかなかった構造物の立体形を3Dで見てしまったのですから。

2012年12月16日日曜日

花見川河川敷トーチカの地下構造部の露出部発見

12月18日に花見川河川敷内で発見された戦争遺跡の予備調査を行いますが、その下見をしていたら、トーチカと考えられる構造物の監視塔だけではなく、その地下にある巨大な地下構造物のコンクリートが地表に露出している部分を発見しました。

地下構造物のコンクリートの一部が地表に露出している部分
コンクリートの上に乗るケーブル管のようなものは戦後の工業製品と考えられ、戦後の何らかの工事等の際に置かれたものと考えます。

地下構造物のコンクリートの一部が地表に露出している部分は、監視塔から30m程離れた場所で、花見川の崖の上部に位置しているところです。
サイクリングロードからも見えます。
この部分の草刈は千葉県によるボーリング調査用通路抜開のために最近行われたようです。

地下構造物のコンクリートの一部が地表に露出している場所
グーグルアース画面に情報を追記して作成

12月18日に実施する予備調査の目的は、「今回新たに見つかった戦争遺跡が学術的等の観点から本格調査するに足る対象であるか否か検討判断するための情報を得る。」ことにありますが、調査目的を是非とも達成したいものです。

2012年12月11日火曜日

強風で軽便鉄道橋台が見えるようになる

12月8日(土)に強風が吹き枯葉が舞飛びましたが、翌日の12月9日(日)に花見川サイクリングロードを散歩すると、これまで双眼鏡を使っても確認できなかった軽便鉄道橋台のコンクリートが誰にでもわかるように露出していました。
コンクリートを覆っていた蔦の葉が強風で全て吹き飛ばされたようです。

軽便鉄道橋台のコンクリートが見える場所

同上拡大写真
橋台コンクリートの左に緑の植物が写っていますが、この植物が次写真の足元の緑の丸い植物です。

軽便鉄道橋台のコンクリートに乗って真下を写した写真

軽便鉄道橋台がそこにあると判っていますから、確認できますが、そのような知識や意識がない一般の散歩者が、花見川サイクリングロードからこのコンクリートを見つけることはほとんどないとおもいます。

私も平成元年から散歩していて、今回初めて気がつきました。

12月18日にこの軽便鉄道橋台と近くの新発見トーチカと考えられる構造物の予備調査を実施します。
幸い下水道管理者のご好意によりこの場所まで車でも行くことが出来るようになりましたので、ふるってご参加ください。(この場所すぐ、ゴルフ場手前に印旛沼流域下水道西部ゲートがあります。)

2012年12月8日土曜日

花見川河川敷内で発見された戦争遺跡の予備調査参加者募集

このブログで記事にしてきた花見川河川敷内(花見川区柏井町地先)の軽便鉄道橋台とトーチカ(※)と考えられる構造物の予備調査を下記の要領で実施します。

予備調査に興味のある方はクーラーまでメールでお問い合わせください。

花見川河川敷内で発見された戦争遺跡の予備調査について(参加者募集)
●予備調査の趣旨
今回新たに見つかった戦争遺跡が学術的等の観点から本格調査するに足る対象であるか否か検討判断するための情報を得る。

●予備調査の概要
1 軽便鉄道橋台を確認する。
2 トーチカと考えられる構造物の全体像を、それを覆っている草を一部除去するなどして把握する。
具体的には、構造物内部(地下部分)への出入り口を探すとともに、構造物全体の大きさを推察できる情報を集める。
なお、今回の予備調査では構造物内部への出入り口を発見しても、内部への立ち入り調査は安全性等の観点から行わないこととします。

●予備調査の日時
平成24年12月18日(火)13時~15時 (雨天の場合12月20日(木)13時~15時)

●参加費:無料

●問い合わせ及び参加申し込み
予備調査に関する問い合わせ及び参加申し込みは予備調査呼びかけ人(クーラー)までメールでお願いします。
(参加申し込み締め切り:12月14日(金))
集合場所や注意事項等は参加申込者に直接お知らせします。

予備調査呼びかけ人(クーラー)のメールアドレス
arakiあ246.ne.jp
「あ」を「@」に差し替えてください

●自己責任による参加
この予備調査の現場は普段は人が入らない、背丈以上の笹が茂り、急斜面もある河川敷です。怪我や事故に対して自己対処、自己責任を持てる方のみご参加ください。(保険は入りません)

●予備調査結果の公表
予備調査後、参加者が連絡を取り合うなどして調査結果をとりまとめ、参加者、地元団体、関係機関等で共有します。
また、ブログ「花見川流域を歩く」で公表します。

●参考
なお、調査に伴う河川敷草刈は河川管理者から、下水道管理用道路の通行については下水道管理者から許可を得ています。

軽便鉄道橋台
樹木に覆われた崖にあり外部から見ることができない。
最近、河川管理者によるボーリング調査用通路が切り開かれ、到達できるようになった。

トーチカの監視塔と考えられる構造物
下見の際は草で完全に覆われていたが、手で排除して構造物を露出させた。
写真に写る飛び出した鉄筋はここに捨てられた戦後の鉄筋で、トーチカとは無関係

トーチカの監視塔と考えられる構造物
壊れたコンクリートから粗末な鉄筋のかけらが見える。
右面が花見川東岸に面する。銃眼口が3つある。
左面が軽便鉄道橋梁に面する(南に面する)。銃眼口が4つある。下部の銃眼口の1つは現在の地表すれすれに位置している。
下見の際にはこの構造物の中にははいれないかったが、北側には出入り用の切欠きがあり、内部は周辺と同じような高さに落ち葉が積もっている。
銃眼口の位置から、本来は、内部は深い構造であったと考えられる。

戦争遺跡が存在する場所
グーグルマップにより作成

※トーチカ:鉄筋コンクリート製の防御陣地を指す軍事用語。トーチカが城塞と区別される点は機関銃やそれ準ずる自動火器、あるいは小型高性能な火砲の登場でごく小規模な単位で、敵部隊の攻撃を阻止できるようになった事である。トーチカは一般に円形や方形などの単純な外形で、全長が数メートルから十数メートル程度、銃眼となる開口部を除いて壁でよく保護された防御施設である。(出典:ウィキペディア)

2012年12月7日金曜日

天保期印旛沼堀割普請の土木遺構の詳細検討 最終回

2012年8月24日にスタートしたシリーズ「天保期印旛沼堀割普請の土木遺構(捨土土手)の詳細検討」を今回で区切りたいと思います。

前回の掲載は11月6日で、その時はすぐにでも最終回を掲載しようとしていたのですが、軽便鉄道橋台とトーチカの発見があってそちらに興味が向かい、ついついサボってきてしまいました。
足かけ5ヶ月に及んでしまいました。

8月24日記事「天保期印旛沼堀割普請の捨土土手の詳細検討 その1」ではこのシリーズにおける検討目的として次の4つを掲げました。
1)土木遺構としての天保期堀割普請跡の範囲把握
2)天保期印旛沼堀割普請の捨土土手の土量の把握
3)天保期印旛沼堀割普請前の谷津地形の把握
4)捨土土手以前のもともとの台地地形の把握

以下この目的が達成されたかどうか検討して、このシリーズを終えたいと思います。

1)土木遺構としての天保期印旛沼堀割普請跡の範囲把握
地図太郎PLUS v.3に装備された地形断面図作成機能を利用して、花見川の横断面図を多数作成することにより、土木遺構としての天保期印旛沼堀割普請捨土土手の現状における範囲を平面図上で特定することができました。
このような情報は歴史関係、土木関係等の分野では、これまでにないものです。

土木遺構の捨土土手の範囲を特定した図面

この情報は、土木遺構としての天保期印旛沼堀割普請跡(堀割と捨土土手)を文化財として指定するため、文化財としての価値を検討するためなどに活用することができます。

2)天保期印旛沼堀割普請の捨土土手の土量の把握
25mピッチ横断面図(垂直方向の単位:0.1m)を作成したことにより捨土土手土量の計算が可能となりました。
(このシリーズの成果は「捨土土手土量の計算が可能となりました」というところまでです。)
土量計算はこれから(仕切り直して)行います。
土量計算を行えば、普請の土木活動量全体のイメージを得ることができます。

土量計算の基礎となる断面図

断面図というイメージだけでなく、次のようなCSV情報を得ていますので、デジタルな土量計算ができます。

断面図のCSV情報(例)

3)天保期印旛沼堀割普請前の谷津地形の把握
捨土土手の土量分を、戦後印旛沼開発前の谷地形(戦前までの谷地形)に対して埋め戻せば、普請前の谷地形を想定することが可能になります。
つまり、もともとの自然地形としての谷地形復元の手がかりが得られます。
この付近は花見川河川争奪により東京湾水系谷津と印旛沼水系谷津の谷中分水界があった場所であり、地形学的に有用な情報入手の期待が高まります。
捨土土手土量計算が可能になったので、この作業が定量的に行える段階に到達できました。

なお、戦後印旛沼開発前の谷地形(戦前までの谷地形)の復元は水資源開発公団資料(および明治期資料)等から可能であり、その作業も今後行います。

4)捨土土手以前のもともとの台地地形の把握
5mメッシュのデータレベルで、捨土土手形成以前の台地縁の地形を復元することにより(つまり、5mメッシュデータ上で捨土土手を除去することにより)、そのデータを使って、花見川谷津付近の縄文遺跡や古墳から見えた土地の範囲を復元することができます。(景観復元図や可視領域復元図の作成)
それにより、縄文時代住居や古墳の立地環境としての景観環境や、近世における古墳の測量杭利用に関して検討を深めることが出来ます。 このような検討も今後チャレンジしたいと思っています。


振り返ってみると、結局1)のみ実行して、2)~4)は手つかずでした。
しかし、1)を実行したことにより、2)~4)の作業を可能とする基礎が出来たので、よかったと思います。


なお、GIS上で100近くの断面図を作成して検討するという作業は、まとまった時間とそれなりの途切れない集中心が必要であり、日々のブログ記事作成というテンポとは合わず苦労しました。


たかが格安GISソフトのバージョンアップがきっかけで、この20回のシリーズ記事を書き、まだ作業したいことが沢山あるという状況がここに(=私に)あります。 それは、花見川流域というフィールドが、特段に濃密な歴史が刻まれた土地であるということが、世の中に表出してきたものだと考えます。

(シリーズ おわり)