2013年4月30日火曜日

花島谷津と小崖


花見川流域の小崖地形 その16

花島の谷津の地名(字名)は「谷津」です。「谷津」だけではこのブログで識別ができないので、花島谷津と呼びます。

花島谷津

花島谷津の風景

花島谷津付近の地形の3D表現
カシミール3Dにより作成

花島谷津は小崖を切って存在しています。
花島谷津と小崖との関係を地形縦断図を作成して考察してみました。

花島谷津の地形縦断線位置図(地形段彩図)
地図太郎PLUSで作成(色の区分は標高20m以上で50㎝刻み)

花島谷津の地形縦断図
地図太郎PLUSで作成(高さは10㎝刻み)
(線が途切れているところは水面で、5mメッシュ標高データが欠)

次の参考図は縦断線位置図を1960年測量千葉都市図14にプロットしたものです。この地図はこの付近が市街地化(公園建設等)される前の地形を表現しています。

参考図 花島谷津の地形縦断線位置図(1960年測量千葉都市図14

この参考図及び1949年に米軍が撮影した空中写真(USR-R2769-105USR-R2769-106)を実体視して得られる情報から花島谷津の地形縦断線に次のような開発前地形縦断想定線を記入することができます。

花島谷津の地形縦断図(開発前地形縦断想定線加筆)

この図から判る花島谷津のもともとの地形縦断線(谷底面縦断線)は花島小崖を切って存在しています。

花島谷津(東京湾水系花見川の支川であり、台地を刻む侵食谷)の場所には、東京湾水系の谷頭浸食が及ぶ前には、印旛沼水系の谷津が存在していたものと考えますが、その顕著な証拠はみつかりませんでした。

*  *  *
2013.04.15記事「小崖地形検討箇所と検討方法」で小崖地形の検討区を18か所設定し、最初の検討を花島小崖C検討区に設定しました。
花島小崖C検討区の検討は2013.04.17記事「花島小崖模式地における地形」からはじめ、本日の記事まで含めて、図らずも、12記事も連載してしました。
ボーリング資料が存在していることもあり、自分が想定していた以上に詳細な地形地質の検討になりました。
これまでの検討結果だけでも、小崖地形が断層地形であることを証明でき、大きな成果を得たと思っています。

他の分野の予定記事も溜まってきてしまっていますので、今後は他の記事と交互に掲載することになると思いますが、引き続き小崖地形記事の連載を続けます。検討は花島小崖D検討区に移ります。ここには古い湖沼跡と考えられる地形が沢山現存しています。
*  *  *

つづく

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2013年4月29日月曜日

谷津によって小崖の高さが異なる理由の説明図


花見川流域の小崖地形 その15

2013.04.28記事「カシミール3Dでみる花島小崖と芦太川交差部の地形詳細」で、芦太川本川谷津と支川谷津を切る小崖の比高が異なる理由のモデル(仮説)を文章で説明しました。
そのモデルをポンチ絵で作成しましたので、掲載説明します。

1 断層発生前
断層発生前に水量の多い谷津と水量の少ない谷津がある場合を比較します。

2 断層発生
断層が発生し、断層崖が水量の多い谷津にも、水量の少ない谷津にもできます。

3 水量の多い谷津では、断層活動が活発でなければ、断層崖を下方侵食してそのまま流下する
水量の多い谷津では、断層活動が活発でなければ、断層崖を下方侵食してそのまま流下するが、水量の少ない谷津では下方侵食エネルギーが少ないので、断層崖を乗り越えて水が流下できなくなるという現象が発生します。

4 断層活動が活発になると水量の多い谷津でも断層崖を下方侵食できなくなる
断層活動が活発になると水量の多い谷津でも断層崖を下方侵食できなくなります。その結果、水量の多い谷津(芦太川本川谷津)では小崖の比高は小さく、水量の少ない谷津(芦太川支川谷津)では小崖の比高は大きくなります。

なお、断層崖でダムアップしてしまい、下流に水が流れなくなると、ミニ湖沼ができます。
花見川流域にはその跡が沢山あると考えます。それが花見川流域付近の台地の上に浅い谷が多い理由です。

つづく

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2013年4月28日日曜日

カシミール3Dでみる花島小崖と芦太川交差部の地形詳細


花見川流域の小崖地形 その14

1 花島小崖と芦太川交差部の地形詳細

カシミール3Dにて詳細な3D地形画像を作成しました。

花島小崖と芦太川交差部の詳細3D地形画像
カシミール3Dで作成
立体感を際立たせるために2秒間隔経緯線を入れてあります。画像中経緯線メッシュの短辺は約50.4m、長辺は約61.6mであす。

この詳細3D地形画像にこれまでの検討で判明した地形を書き込みました。

花島小崖と芦太川交差部の詳細地形分類
小崖が台地面だけでなく、谷津谷底をも切って段差が生じていることが明白に示されています。
また、小崖地形が東京湾水系の谷頭浸食を受けている様子も示されています。

こうした詳細地形分類の画像に地図をオーバーレイした画像を示します。

詳細地形分類画像と25千分の1地形図画像をオーバーレイした画像

詳細地形分類画像と数値地図情報をオーバーレイした画像
これら画像により、現場の地物と地形との関係をより具体的に知ることができます。

2 谷津交差部における小崖の比高
次の図は谷津交差部における小崖比高を知らべるための断面線位置図です。

断面線位置図
A-Bは芦太川本川の谷津です。C-Dは芦太川支川谷津です。

次にこれら断面線による地形断面を示します。

谷津交差部における小崖の地形断面図
5mメッシュ標高データ(10㎝刻み)を地図太郎で作図(断面の精度は10㎝刻み)

双方の断面の場所ともに市街地化が進んでいて、厳密な意味での自然地形は残っていませんが、自然地形を類推できるに値する地形は残っていると考えます。

A-B断面の小崖比高は5060㎝程度です。C-D断面は3m程度あります。その差が大きくきわめて特徴的な小崖比高の違いが明らかになりました。
この差が生じた理由は次のようなモデルによって単純化して考えることにより、合理的に納得することができます。

ステージ1
下総上位面に谷津が形成されていた時代に最初の断層運動があり小断層崖が形成された。
・この時、断面C-Dの谷津は支川谷津で流量が少ないので小断層崖でせき止められてしまった。
・一方、断面A-Bの谷津は本川谷津であり、流量が多いので、小断層を乗り越えて流れ、断層崖を浸食して河道を維持した。

ステージ2
その後断層運動は継続的に発生し、小崖は比高を増した。
・断面C-Dでは断層運動垂直成分全ての量が小崖に加算された。
・断面A-Bでは断層運動垂直成分全ての量が河川によって下方浸食され、小崖地形は形成されなかった。

ステージ3
ある時点で、断層運動が活発になった。
・断面C-Dでは断層運動垂直成分全ての量が小崖に加算された。
・断面A-Bでは断層運動垂直成分全ての量を河川が下方浸食することが出来なくなり、河川は堰き止めれ、小崖地形が形成されるに至った。

ステージ4
その後断層運動が続いた。
・断面C-Dでは断層運動垂直成分全ての量が小崖に加算された。
・断面A-Bでも、断層運動垂直成分全ての量が小崖に加算されるようになった。


断面C-Dでは14の時期全ての断層運動垂直成分に対応した小崖(断層崖)が形成されました。

断面A-Bでは34の時期だけの断層運動垂直成分に対応した小崖(断層崖)が形成されました。

このモデルは、より単純化すれば、ステージ1とステージ3だけで成立します。

つづく

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2013年4月26日金曜日

花島小崖と芦太川交差部の現在の地形


花見川流域の小崖地形 その13

前報(2013.04.24記事「花島小崖が断層崖である地質証拠」)で示したポンチ絵付近の現在の実際の地形をカシミール3Dで作成した3D地形画像で見てみます。

1 参考図
3D地形画像に入る前に戦後の高度経済成長期以降の顕著な人工改変を知るために使った地図と、現在の地図及び地形段彩図を資料として掲載します。経緯線は2秒間隔で引いてあります。

参考 1917年(大正6年測量)の旧版1万分の1地形図(「大久保」、「三角原」図幅)

参考 1960年航空測量により作成した千葉市都市図14

参考 数値地図2500の情報
主要公共施設、道路、町丁目界等を示す。

参考 地形段彩図
5mメッシュにより地図太郎で作成
標高20m以上を0.5m刻みで段彩してある。

2 3D地形画像

花島小崖と芦太川交差部付近の3D地形画像
カシミール3Dで作成
高さ52mから撮影、高さ強調20倍、立体の刻みは1m単位。

参考図と3D地形画像を比較することによって、著しい盛土地の存在が判ります。これらの著しい盛土地を除いて考えると、花島小崖と芦太川谷津との交差部の本来の地形の姿が現代地形にかなり残されていることが判ります。

3D地形画像説明図

ア 芦太川の3谷津合流部の存在と花島小崖との交差
花見川第三小学校の敷地が顕著な盛土地であり、この部分が3つの谷津が合流する場所であることが判りました。(この場所に五差路があり、2011.12.31記事「谷中分水界と道」でこの場所を谷中分水界と説明しましたが、地形学的には正確な認識でなかったかもしれません。小金牧の馬防土手による盛土があったことも考慮して、後日検証します。)
芦太川の3つの谷津の内、支川谷津Aは花島小崖と交差していないようです。
本川谷津B3D画像でみると1mくらいの段差が確認できます。画期的な発見だと思います。今後現場で確認したいと思っています。
支川谷津Cは、盛土が邪魔していますが、花見川小崖によって上流部が低くなったことが明瞭にわかります。これについては旧版1万分の1地形図に凹地等高線として表現されています。

イ花島小崖に沿った東京湾水系谷頭浸食の存在
花島小崖に沿って東京湾水系谷頭浸食が図中で4か所で確認できます。
この付近の地層は下から成田層、下末吉ローム層(下部は粘土層)、武蔵野ローム層、立川ローム層となっていて、何れも地質的には大変柔らかいものです。断層付近に断層粘土層ができて、周辺よりさらに軟弱になり、差別浸食が行われたとも考えられます。しかし、断層線に沿って谷頭浸食が差別的に発生している理由としは根拠が薄弱のようにも感じます。例えば断層に横ずれ成分があれば、浸食谷との交差部では地形的なズレが生じ、そこが浸食発生の新たな場所となることは大いに考えられそうです。断層線に沿った谷頭浸食の存在をきっかけとして、この断層の水平移動成分についても検討を深めたいと思います。

別の角度からみた3D地形画像を参考として掲載します。

花島小崖と芦太川交差部付近の3D地形画像
カシミール3Dで作成
高さ52mから撮影、高さ強調20倍、立体の刻みは1m単位。

花島小崖と芦太川交差部付近の3D地形画像
カシミール3Dで作成
高さ52mから撮影、高さ強調20倍、立体の刻みは1m単位。

つづく

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2013年4月25日木曜日

速報と予告 軽便鉄道橋梁の写真発見、掲載許可がおりる


201212月に「花見川河川敷内で発見された戦争遺跡の予備調査」を実施し、2012.12.29記事「戦争遺跡予備調査報告書の公表」で公表しました。

この時、軽便鉄道の橋台を見つけましたが、この橋梁の架橋工事の写真6枚(及び現在の花見川大橋の場所の軽便鉄道橋梁写真2枚)が見つかり、その掲載許可がおりましたので、速報としてお知らせします。

この写真は海老川乱歩さんが「写真に見る鉄道連隊」(髙木宏之著、光人社発行)から見つけたもので、当方にその書籍を提供していただきました。海老川乱歩さんに感謝します。

早速これらの写真のブログ掲載を求めたところ、書籍著者および出版社から許可をいただきました。

全ての写真掲載とその検討は後日記事として掲載しますので予告します。
見本として写真1枚を掲載します。

柏井橋梁(注)の架橋作業
出典:「写真に見る鉄道連隊」(髙木宏之著、光人社発行)
写真掲載は著者及び発行元の承諾済み

この写真の詳しい説明は後日の記事中で行います。

注 鷹之台ゴルフ倶楽部から横戸台にかけて架橋されていた軽便鉄道橋梁の名称が柏井橋梁と呼ばれることもわかりました。

ご期待ください。

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「花見川流域の小崖地形」特設サイトを設置しました


2013.04.12記事「花見川流域小崖地形の自然史上の重要性とその調査について」からスタートして、現在「花見川流域の小崖地形」シリーズの記事12本を掲載しています。今後このシリーズはさらに続く予定です。
そこで、過去のシリーズ記事を閲覧しやすいように特設サイトを設置して、記事リストに従って読めるようにしました。

特設サイト画面イメージ
特設サイトのURL

小崖地形について現場を歩き、調査するほど興味ある事実が判ってきていますので、現在その取組に熱中して、楽しんでいます。勢い今後の記事数も増加すると思います。

なお、小崖地形の記事とともに、別の興味あるテーマの記事も書く予定です。

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2013年4月24日水曜日

花島小崖が断層崖である地質証拠


花見川流域の小崖地形 その12

1 花島小崖が断層崖である地質証拠
前報で芦太川谷底面を切る小崖地形を発見し、それが小崖地形が断層崖である証拠であると述べましたが、さらに同じ場所における地質証拠を提示します。

次の図はボーリング地点とそれを結んだ地形断面図作成線を示してあります。

ボーリング地点位置図
米軍空中写真で確認した芦太川谷底を切る小崖地形の上下に位置に対応するボーリング資料があります。

地形断面図にボーリング資料をプロットすると次のようになります。

小崖を横断する地質断面
柱状図は千葉県地質環境インフォメーションバンクによる
なお、表示されている地形断面では人工改変が進んでいて、小崖を明瞭に認めることはできません。

この地質断面図から小崖の上と下の芦太川谷底面で下末吉ローム基底面の高度に段差(比高約2.5m)があり、小崖地形と対応していることが確認できます。
花島小崖が断層崖であることをしめしています。

2 説明
2013.04.19記事「花島小崖の模式地における地形と地質の関係」で次の図を示して、花島小崖に断層存在が推定できると述べました

地形断面線に地質柱状図を投影表示した図
柱状図は千葉県地質環境インフォメーションバンクによる

この図だけを考察の対象とするならば、地形と地質の双方に段差がある理由として断層の存在をあげるだけではなく、理論的には海食崖の存在とか下末吉ローム層堆積直前にできていた何らかの成因による地表の凹凸の存在などを疑う余地もないとは言えません。

しかし、このたび芦太川谷底を小崖地形が切っているという事実を発見し、その小崖地形が地層のずれと対応していることは、この小崖地形が下総上位面を削る谷が形成された後につくられたことを示しています。このため下総上位面が陸化した後に小海進があり、小崖はその時にできた海食崖であるという可能性を100%排除します。

花島小崖が最初に形成されたときのイメージは次の2枚のポンチ絵で示すことができます。

ポンチ絵A
下総上位面が陸化してしばらくたって、芦太川という必従谷津ができた時期を示しています。まだローム層は現在のように厚くはない時期です。(武蔵野ローム層や立川ローム層堆積前のイメージです。)

ポンチ絵B
ポンチ絵Aの時期に最初の断層活動があったと考えます。
断層活動により芦太川谷底は二分され、結局上流側(南側)の谷底は下流側(北側)と非連続になりました。
この後、時間経過とともに断層活動がさらに続いたのかどうかは、現在のところデータを入手していません。
この断層の時期は、たとえば10万年前とかという時期として空想していますが、検討は後日行う予定です。

ポンチ絵Bの時期以降、ローム層が数m積もったのですが、断層運動が継続していれば積もったローム層を切っているはずです。断層運動が継続していなければポンチ絵B以降に積もったローム層は切っていないはずです。

立川断層トレンチよりはるかに小さなトレンチを掘れば全てわかる可能性があります。

つづく

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