2013年5月29日水曜日

地名研究方法に関する情報収集

花見川地峡の自然史と船越の記憶 8

1 この連載記事のふりかえり
この連載記事は2013.05.09記事「花見川地峡と印旛沼筋の「戸(と、ど)」地名」からスタートしています。

趣旨は次の仮説を証明するという検討をおこない、そのプロセス展開の中で花見川流域に対する興味と知識を深めようということです。

【仮説】「印旛沼堀割普請の前に、花見川地峡が東京湾と香取の海を結ぶ重要な交通路であり、古代において地峡は船越であった。」

仮説検証プロセスを経ることによって仮説の的確性がどの程度のものであるという結果が明らかになります。たとえ、この仮説の的確性が低かったとしても、これまで不明であった自然と歴史の情報が明らかになれば、大成功と思います。

この仮説検証を地名検討と自然史検討の両面から行いたいとおもい、まず地名検討からスタートしています。

地名検討は花見川地峡の両端にある横戸、天戸という地名に注目し、この地名が、海や舟に起源を発し、同時に印旛沼筋の「戸地名」と相互関連地名であるという仮説に立脚しています。(2013.05.11記事「天戸、横戸、平戸が一連の地名であると見立てる」参照)

そして、花見川-印旛沼筋の戸地名をリストアップしました。(2013.05.12記事「花見川-印旛沼筋の戸地名リスト」参照)

また、戸地名に関して次の検討をおこないました。
・戸地名が津より古い地名であること。(2013.05.15記事「戸は津より古い言葉(地名)である」参照)
・天戸、柏井、横戸地名の全国検索。(2013.05.17記事「参考 天戸、柏井、横戸地名の全国検索」参照)
・戸が人に通じるということ。(2013.05.18記事「紹介 戸が人に通じるという考え方」参照)
・戸が4つのイメージを有するということ。(2013.05.20記事「「戸」を構成する4つのイメージ」参照)

2 地名研究方法に関する情報収集
これまでの記事に関わる検討で地名に対する興味をますます深めました。
特に、小字名とその境界をGISにプロットして地形を含む各種情報と重ね合せれば有用な情報を得ることができるに違いないと考え、そのような研究事例についての情報を知りたくなりました。
同時に、どのような分野にも専門家がいて、専門的図書があるはずだから、そうした専門家によるオーソドックスな専門図書を入手して研究方法等を知り、自分の趣味活動に活かそうと思いました。
手始めに、地名に関係しそうな次の教育委員会や博物館等の公共機関から情報を収集しました。

●地名について情報の所在や専門知識入手方法を問い合わせた公共機関
国立歴史民俗博物館、千葉県教育委員会、千葉県立中央博物館、千葉市教育委員会、千葉市立郷土博物館

●小字の境界図について問い合わせた公共機関
印西市教育委員会、佐倉市教育委員会、酒々井町教育委員会、成田市教育委員会
(千葉市及び八千代市は小字境界図を入手済み)

国立歴史民俗博物館から次の2点の有用情報を教えていただきました。
1 小字を対象としたパソコン検索システム(GIS)を構築して行った地名研究は存在しない。大字レベルは国土地理院のシステムが利用できる。
2 国立情報学研究所(NII)が提供する無料の情報サービスサイト「Webcat Plus」を使って「地名学」の本を探して研究するとよい。全国 約1000館の大学図書館の文献等、検索することができる。
Webcat Plus       http://webcatplus.nii.ac.jp/

千葉県立中央博物館および千葉市立郷土博物館からは、地名について展示や研究の対象としていないということと、既存の図書以外に提供できる情報はないとのことでした。

小字の境界図については千葉市と八千代市以外の市町では、印西市が旧印西町のみ存在、佐倉市が民間団体の地名調査報告書が図書館で利用できる、酒々井町は地籍図閲覧、成田市は旧成田市分について地図が存在するという状況でした。

情報収集してわかったことは、次の諸点です。
1千葉の公的機関で地名そのものを歴史的対象として扱っているところはない。(地名の専門家と呼ばれるような人もいないようです。)
従って、公的機関から地名研究方法等について情報を得ることはできませんでした。
自分で進むしかありません。

2小字レベルのGISを使った研究はないようです。従って、花見川-印旛沼筋でGISを使った小字検討をすれば、意義があると感じました。

3歴博から教えていただいたWEBサイト「Webcat Plus」はとても有益です。このサイトを利用して早速地名学に関する図書をいくつか入手しました。

早速入手した図書の1


つづく

2013年5月28日火曜日

珍しい軽便鉄道と普通鉄道の軌道併設写真

鉄道連隊の花見川架橋作業の紹介 追補

鉄道連隊が敷設した軽便鉄道軌道と普通鉄道軌道(広軌と狭軌に対応する3本軌条)が同じ敷地に併設されている珍しい写真を見つけたので紹介します。

特別騎兵演習(昭和10年)
出典:「目で見る習志野・八千代の100年」郷土出版社
(写真掲載許可済み)

出典書籍では次のような写真説明を行っています。
「昭和10年頃には戦車が幅を利かせ、騎馬は少しずつ縮小されていた。これはその過渡期にあたる珍しい場面である。写真の場所は北習志野のようである。津田沼から松戸までの演習線のどこかである。左側の線路は軌条が3本あるが広軌と狭軌の二種の機関車に対応するものである。右側は軽便鉄道の軌道である。」

鉄道連隊の花見川の柏井架橋は、当初は軽便鉄道で演習実施され、後に普通鉄道で演習実施されましたが、この写真から、軌道の幅を直感的に知ることができます。
大陸での鉄道建設のために、広軌による鉄道敷設演習が行われていたことが写真で確認できます。

関連記事

なお、鉄道から離れて「特別騎兵演習」に視点を移すと、家畜を戦争の道具にしていた時代から機械による戦争に移行している様がよくわかります。
私の父は大久保の騎兵連隊にいて騎兵訓練を受けていたので、万が一この写真の騎兵の一人として私の父が写っているかもしれません。


2013年5月26日日曜日

千葉土木事務所に質問して回答を得る3(河川改修事業について)

1 質問
河川改修事業に対する住民参加に関連して、次の質問を千葉土木事務所にしました。
………………………………………………
● 花見川の河川整備計画の策定プロセスについて

質問その4 利根川水系手賀沼・印旛沼・根子名川圏域河川整備計画の策定プロセスにおいて、住民参加がどのように行われたのか具体的に教えてください。

● 花見川の河川改修計画・事業について
地域住民の一人として、花見川の河川改修計画・事業に関して、特に堀割部のあり方について、治水・利水面だけではなく、歴史的、自然環境的、生活環境的側面からの慎重な検討と配慮が必要であると思っています。
これまでどのような調査計画を行い、今後どのような事業を展開するのか教えてください。

質問その5 花見川の河川改修計画策定状況と事業実施予定の概要
質問その6 花見川の河川改修計画策定と事業実施における住民説明(住民参加)の予定
………………………………………………
2 回答
これらの質問にたいして次の趣旨の回答(情報)をいただきました。
(回答(情報)は口頭でいただいた話を当方でまとめたものです。)
質問その4の回答
河川整備計画策定時の住民参加として次のことがらを実施した。
① 関係市町に流域委員メンバー候補の推薦情報をいただき、流域委員選定の参考にした。
② 流域委員会開催時に県ホームページで広報し、住民の傍聴参加を可能とした。傍聴参加者には書面による意見提出を許可した。

質問その5の回答
花見川の河川改修事業のための基本的な設計は既に済んでいる。
昨年度実施したボーリング調査結果を踏まえて、今年度中に経費見積書を作成し、国に補助申請する。
補助が決まってから工事に入る。(次年度以降予定)
工事の順番では、堀割部が後になる。

質問その6の回答
(明確な回答は無く、特段の住民参加は予定されていないと理解した。)

3 感想
上記回答から、住民サイドから能動的に河川管理者に情報を求めない限り、住民が河川事業について知る機会は無いということが判りました。

現在、花見川堀割部の河川改修事業実施について次のような心配をしています。

堀割部の護岸工事は、現在の形状が構造物がない素掘堀割であることから、現在の環境を確実に大きく変えることになります。
工事のあり方によっては、生態環境的、風景的、土木遺構保全的等の観点から多大なマイナス影響が発生する可能性があります。
しかし、現在は県によって「花見川の河川改修事業のための基本的な設計は既に済んでいる。」という言葉情報だけしか知ることができません。実際の設計情報は公開されていません。
また、工事によってどのようなマイナス影響があるのか、マイナス影響がある場合、それを少なくするような工夫がされているのか、マイナス影響と事業がもたらすプラス影響の比較考量をどのような方法で行っているのか等の検討について知ることができません。
こうした情報を知らないで、工事のおぜん立てが全て整ってしまってから、具体的工事の説明を聞いても手遅れになると感じます。

このような心配をしているので、今後自分が住んでいる地域の自治会等に働きかけて、まずは、自治会等から河川改修事業に関する情報の提供を千葉土木事務所に申し入れしたいと考えました。

参考 「利根川水系手賀沼・印旛沼・根子名川圏域河川整備計画」に掲載されている断面イメージ図

おわり


桜の実を食する

散歩道の桜の実が熟れています。

桜の実

桜の実

1粒つまんで食べてみました。

苦さと甘さと酸味が混ざっていて、苦さを除けばアメリカ産のサクランボに近い味です。粒に比して種が大きいので果実の食べごたえは少ないのですが、思った以上に果物感がありました。ジャムなどにすることはできると感じました。

果肉をつぶした汁は鮮やかな赤色でした。

2013年5月25日土曜日

花見川を利根川本川の放水路とする構想は遠のく

平成18年(2006年)2月に「利根川水系河川整備基本方針」が策定されました。この基本方針の中で、花見川が利根川本川の放水路として1000m3/sの放流を担うことになりました。

利根川水系河川整備基本方針における利根川高水流量図
(図中の赤線、赤文字は引用者が付け加えたもの)

この基本方針に基づいて、利根川(本川)と江戸川を対象に当面の河川整備を具体化するために、平成25年(2013年)515日に「利根川水系利根川・江戸川河川整備計画【直轄管理区間】」が策定公表されました。

この河川整備計画は直轄管理区間を対象としたものですから当然のことですが、印旛沼と花見川を使った放水路の記述はありません。
今後30年程度を視野に入れた国の河川整備事業に、印旛沼と花見川を使った放水路が含まれていないということです。

「利根川水系利根川・江戸川河川整備計画【直轄管理区間】」の計画対象区間

「利根川水系利根川・江戸川河川整備計画【直轄管理区間】」では「利根川水系河川整備基本方針」で定められた計画高水流量を採用していません。その理由は「河川整備基本方針は、長期的な河川整備の方針であり、整備の期間及び費用を定めるものではない」(※)からです。

※「利根川水系利根川・江戸川河川整備計画(原案)」について学識経験を有する者、関係住民、関係県等からいただいたご意見に対する関東地方整備局の考え方」(国土交通省関東地方整備局、平成25424日)

このような状況から、印旛沼を経由して花見川を利根川本川の放水路とする構想の実現化は遠のいたと考えてよいと思います。

なお、花見川を含む千葉県の河川整備計画(「利根川水系手賀沼・印旛沼・根子名川圏域河川整備計画」では花見川に270m3/sの流量を配分しています。
この流量の数値と「利根川水系河川整備基本方針」の流量の数値(1000m3/s)が異なることに関して、千葉県河川整備課より次のような説明を受けています。

●利根川水系河川整備基本方針と利根川水系手賀沼・印旛沼・根子名川圏域河川整備計画の整合は取っていない。
●利根川水系河川整備基本方針に基づく利根川水系河川整備計画の策定を待っていては、いつまでも千葉県管理の利根川水系河川の整備の実施ができない。そこで、利根川水系手賀沼・印旛沼・根子名川圏域河川整備計画を独自に作って、国の承認を得た。
●利根川水系河川整備基本方針に基づく利根川水系河川整備計画が策定され、利根川水系サイドから花見川に新たな要請があれば、その時調整することになる。
2011.09.24記事「花見川の河川整備で気がかりなこと」掲載)

利根川水系サイド(国サイド)から花見川に対する具体的要請は当面は無いという結論になったようです。従って、これからは、国策としての放水路機能というワイルドな外圧はあまり気にしないで、地元レベル(千葉県レベル)で情報を深く掘り下げ、落ち着いた環境の下で花見川のあり方を考えることができる状況がうまれたと考えます。


2013年5月24日金曜日

千葉土木事務所に質問して回答を得る2(河川整備計画の記述の疑問)


1 質問
次の質問を千葉土木事務所にしました。
………………………………………………
花見川の河川整備計画の記述に関する疑問

利根川水系手賀沼・印旛沼・根子名川圏域河川整備計画における印旛放水路(下流部)の記述「印旛放水路(下流部)は印旛沼開発事業により下総台地を開削して作られた人工河川です」は次のような誤りと人々に誤認識を与える表現です。

利根川水系手賀沼・印旛沼・根子名川圏域河川整備計画における記述の誤りと人々に誤認識を与える表現
誤り・人々に誤認識を与える表現
説明
印旛放水路(下流部)は印旛沼開発事業により下総台地を開削して作られた
1 印旛沼開発事業では天保期印旛沼堀割普請でつくられた堀割の改修を行っていますが、「下総台地を開削した」という表現は工事の実態を調べることなくイメージだけで作文した誤りです。
堀割を改修したのですから堀割の掘削工事はしていますが、台地開削という表現は極端な誇張表現であり、誤りとして訂正されるべきものです。
2 天保期印旛沼堀割普請(およびそれ以前の印旛沼堀割普請)は下総台地に刻まれた谷津(河川)の改修工事です。台地の開削ではありません。
江戸時代の印旛沼堀割普請まで遡って考えても、現在の花見川(「印旛放水路(下流部)」)の出自は台地ではなく、河川(※)です。
※横戸台付近に谷中分水界があり、南が東京湾水系花見川の谷津、北が印旛沼水系の谷津
千葉県の「印旛放水路(下流部)」=下総台地開削説は訂正されなければなりません。
印旛放水路(下流部)は人工河川
1 現在の花見川(印旛放水路(下流部))の自然地理的出自は河川です。もともと存在した河川地形を利用して江戸時代からの工事の継続の結果できた河川です。出自という面から見ると人工河川は誤用です。
花見川は全く何もない台地を開削してつくった人工河川ではありません。

2 花見川は流域変更し、放水路機能を持たせましたから、人の手が加わっています。そのように人の手を加えた河川を人工河川とよぶなら人工河川です。そのような用語法を執るならば千葉県にある河川はすべて人工河川です。しかし、千葉県の河川整備計画では花見川のみを特定して人工河川と定義していて、他の河川について人工河川とか自然河川とかの定義をしていません。

花見川が人工河川であるということさらの記述は、「印旛放水路(下流部)」という名称とペアになって、花見川が3つの自然流域(高津川流域、勝田川流域、もともとの花見川流域)から成り立つ河川であるという正しい認識を、人々が持つことを阻害する名称です。用語「人工河川」は人々が花見川を河川として認識することを妨げている役割を果たしています。


質問その3 上記の河川整備計画記述の誤りと誤認識を与える表現の指摘について、河川管理者の回答をお聞かせください。
………………………………………………
2 回答
この質問にたいして次の趣旨の回答(情報)をいただきました。
回答(情報)(口頭でいただいた話を当方でまとめたものです)
①「下総台地を開削」についての記述の根拠(出典)は河川課で調べたが見つかっていない。夏頃をめどに回答する。
②次の3つの理由から印旛放水路は「人工河川」である。
1印旛放水路ではポンプアップして水を流す構造になっている。常時水が流れうる構造ではない。
2江戸時代以降工事が行われてきた水路である。
3昭和の工事で現在の水路を造った。

パンフレット「印旛沼のあらまし」(千葉県印旛地域整備センター、佐倉市環境保全課)

3 感想
①「下総台地を開削」について
1月にこの質問をしました。その後年度末を挟んだといっても時間は十分あるはずです。千葉土木事務所のみならず本庁担当課でしらべても「下総台地を開削」した根拠(出典)が見つからないということは、それが存在しないからだと思います。
当方の趣旨は、資料の存否で千葉県と言い争いをしようという所にはありません。河川管理者にも花見川の出自(自然史的出自)について関心を持ってもらいたいと思っています。

②「人工河川」について
当方の質問といただいた回答が全くかみ合っていません。

千葉土木事務所さんのおっしゃる通り、「印旛放水路」(阿宗橋~東京湾)という設定は、二つの自然流域(印旛沼流域と花見川流域)を乗り越えて水を流すのですから人工です。

当方が問題にしているのは花見川流域(3つの自然流域を流域変更により統合した流域)という自然流域を流れる河川(高津川と勝田川が合流し、柏井、花島、犢橋、長作等で支川が流入する花見川)を人工河川として定義してしまっている点です。

質問と回答がかみ合わなかったおかげで、問題意識がより整理されました。

私は、次の千葉県作成「印旛沼流域図」に出てくる流域面積61.65km2の流域を花見川流域と考え、その流域に対応する水系を花見川水系と考え、その水系は(流域変更によってつくられたものだけれども)あくまで自然水系として取り扱うべきものだと考えました。

千葉県作成「印旛沼流域図」に現れる面積61.652の流域

一方、千葉県は印旛放水路(阿宗橋から東京湾に放水する水路)を設定し、それを人工河川と定義した。それだけがあるのです。
現実世界に存在する花見川流域、その流域に対応する花見川水系というものに対応する言葉や定義が、河川行政上存在していないと考えます。

花見川に対して、人工河川という言葉しか存在しなければ、花見川の環境や歴史や文化等に対する取組は虚弱なものにならざるを得ません。
「治水・利水・環境の3つの目的を達成する」という河川法の理念を、原理的に担保しない状況をセットしています。

つづく

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2013年5月23日木曜日

千葉土木事務所に質問して回答を得る1(河川名称の疑問)


横戸や天戸などの戸地名に関わる検討、小崖に関わる地形検討を中断して、千葉土木事務所に対する質問と回答を報告します。

1 経緯
昨年12月頃花見川を管理する千葉県千葉土木事務所によって花見川のボーリング調査が始まり、花見川の河川改修事業が差し迫っていることを実感しました。
花見川の河川行政についてはこれまで考えるところがいくつかあり(注1参照)、頭の中で検討していたのですが、疑問は深まるばかりでした。

1
2011.09.23記事「花見川の河川整備計画
2011.09.25記事「花見川出自記載の違和感

そうした中で、戦争遺跡の調査で千葉土木事務所に草刈許可や報告などでコンタクトし、同時に河川改修事業が迫ってきたということでもありますので、思い切って考えている疑問を千葉土木事務所に質問し、回答(情報)をいただけるようお願いしました。
このたびその回答(情報)をいただきましたので、報告します。
千葉土木事務所の担当の方には業務多忙のなか、回答していただきお礼申し上げます。

質問は次の3点について行いました。
1 河川名称の疑問
2 河川整備計画の記述の疑問
3 河川改修事業について

この記事では1 河川名称の疑問について報告します。

2 質問
次の質問を千葉土木事務所にしました。
………………………………………………
花見川の法的河川名称に関する疑問

花見川は法的に「印旛放水路(下流部)」となっています。
この法的名称は、次のような理由により現代社会とマッチしていないという疑問があります。

法的名称「印旛放水路(下流部)」が現代社会とマッチしていない理由
理由
説明
事業者独占名称である
花見川は印旛沼の放水路機能を持っているからといって、自然流域から成り立つ河川を「印旛放水路(下流部)」と名付けることは、この川を治水・利水事業者が独占していることになる。
河川法の趣旨に反する名称である
平成9年の河川法改正により、河川の目的に環境が加えられ、治水・利水・環境の3つの河川管理により河川の目的を達成することになった。
自然流域から成り立つ花見川を「印旛放水路(下流部)」と呼ぶことは、この河川法の趣旨と齟齬をきたしている。
古代からの名称「花見川」が存在し使われている
ハナミガワのハナは花島、猪鼻、花輪などのハナと同類で、下総台地の崖に付けられた縄文語由来の一般自然地名ハナである。
古代から受け継がれてきている花見川という名称は人々に親しまれ、行政区の名称にもなっている。
このように由緒ある固有名詞としての花見川を敢えて使わないで「印旛放水路(下流部)」と呼ぶことに、強い違和感が生じている。
「印旛放水路(下流部)」は住民に使われていない
殆どの住民が「印旛放水路(下流部)」という名称自体を知らない。聞いたことがあっても、それが花見川だとは理解していない。「印旛放水路(下流部)」は、事実上、行政機関の隠語にしかすぎない。
一方、花見川という名称を理解していない住民はいない。
人工施設をイメージさせてしまう
「印旛放水路(下流部)」という名称は、人々に人工施設という誤ったイメージを与える。花見川が自然流域からなる河川という実態を人々の目から覆い隠す役割をしている。
「印旛放水路(下流部)」では川づくり・地域づくりの発想がうまれない
放水路という名称は放水機能単体を表現しており、治水利水を思考するには好都合である。しかし、放水路という言葉からその川の流域について発想することは困難である。流域の発想が出来なければ、その自然や歴史についての発想はさらに困難である。
一方花見川という名称ならば、その自然、歴史、流域に関わる発想がだれでも浮かぶ。
「印旛放水路(下流部)」という名称は、花見川において人々の川づくり・地域づくりに関する興味を生じさせない役割を果たしている。

質問その1 法的河川名称に関する上記疑問についての河川管理者のお考えをお聞かせください。
質問その2 花見川の法的名称について再検討する機会を設けることは考えられないか?
………………………………………………

3 回答
この質問にたいして次の趣旨の回答(情報)をいただきました。

「質問その1 法的河川名称に関する上記疑問についての河川管理者のお考えをお聞かせください。」について

回答(情報)(口頭でいただいた話を当方でまとめたものです)
①県が住民とコミュニケーションする際には花見川という言葉を使うこともある。県が関係する団体の出版物には「印旛放水路(下流部)」とともに「花見川」という言葉を追記している場合もある。
②法的河川名称について住民からの意見はこれまでない。

「質問その2 花見川の法的名称について再検討する機会を設けることは考えられないか?」

回答(情報)(口頭でいただいた話を当方でまとめたものです)
①再検討する機会は考えていない。

4 感想
私は次のような感想を持ちました。

① 「印旛放水路(下流部)」という河川名称がこれからの川づくりや地域づくりにふさわしくないという意見に県が接したのは、どうも今回が初めてのようです。
住民から意見がないから、名称再検討などの機会を設けることもあり得ないということです。
河川管理者としては、これまで誰も口から発することのなかった疑問に少々驚いた(面食らった)ようです。
私も、そのような河川管理者の様子を感じて、そういう無風環境が存在していることに驚き、面食らいました。

河川管理者というよりも、住民とか自治体(千葉市には「花見川区」まである)が花見川についてどれだけ愛着をもっているのだろうか、どれだけ「自分事」として花見川について考えているのだろうかということが心配になりました。

千葉市が花見川の名称についてどのように考えているのか、いつか聞いてみたいと思います。
また、何かの機会があれば、花見川の河川名称問題について地域で情報発信していきたいと思います。

② 土木事務所の回答は私の疑問に対する回答(情報)ではないので、次のような再質問をさせていただき、後日回答をいただけることになりました。

再質問
「仮に「印旛放水路(下流部)」という名称を止めて、「花見川」とか「○○川」に名称変更すると、河川行政上何かの不都合が発生するか?」

弁天橋袂の刻まれた「花見川」名称

つづく

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