2013年6月5日水曜日

地名研究情報収集に関する感想

花見川地峡の自然史と船越の記憶 9

花見川流域の地名語源情報を扱って一つの材料として、花見川流域の歴史をひもとけないものかと考えています。地名研究方法の情報を集めだしてみて、最初に感じた感想をメモしておき、後日もっと先に進んだ時のふりかえり用資料として記録しておきます。

1 初めて地名研究方法の存在を知る。
地名研究に関する幾つかの図書を入手して読んでみて、専門的な地名語源検討方法は次のような項目について検討することであると知りました。

地名名義を考察するための項目
(1)いくつかの同類の地名をあつめて比較すること。
(2)地図上や現地で当たってみること。
(3)方言辞典でそのような言葉がないかを調べてみること。
(4)歴史や民俗に関係ある意味でないか省みること など
出典:「地名の語源」(鏡味完二・鏡味明克、角川書店、1977)

具体的研究方法は地名をタイプ区分すること、地名の発生年代を検討することなどを基礎作業として実施し、その上に個々の地名の語源検討を行うとしています。

地名をタイプに分けて検討する方法の一つに「語根型」検討というものがあることも知りました。これは、大多数の地名は、方言または共通語によって表現された、土地の環境的な性質にしたがって命名されたものである、という考え方にもとづいています。
一つの地名型を決めるためには次のような作業を行うとしています。

A 同類と思われる発音を語根としてもつか、意味上で主要部の言葉としてもつ地名を、できるだけたくさんあつめること。
B集めた地名を地形図上で、地形、耕地、森林、交通路、などの関係上、共通分母となるような事情がないか調べる。
C 方言辞典、民俗辞典、古語辞典、歴史辞典などで、その語根となっている言葉がどんな意味であるか考える。
D 過去に研究されてきた信用のおける多くの地名についての、命名の傾向、その他研究の成果、ならびに言語法則を参考資料として利用する。
出典:「地名の語源」(鏡味完二・鏡味明克、角川書店、1977)

BCによって得た結果が一致し、Dによって調整または裏付けされるならば、その語根型の語根意味は確定するなどの成果を得るとしています。

この方法は戸地名の検討に役立ちそうです。

個々の地名を対象とした全国分布図集も入手しました。(例 日本地名学 地図編 日本地名学研究所、昭和333月、限定300部)

体系だった地名研究方法が存在していることを初めて知ることができました。

2 地名研究の発展が感じられないこと
体系だった地名研究方法が存在していることを知ったのと同時に、地名研究が社会の中で「順調円満に発展」していないような印象を受けました。
1970年代頃までは「地名学」が存在していることは明確にわかるのですが、それ以降現在も含めて方法論が明確で、研究成果の蓄積がはっきりしている「地名学」の存在が私には感じられません。地名に関する図書は現在に至るまで多数あり、個々の図書は興味深いものが沢山あるのですが、地名学を体系化し、これまでに得られた成果を総括的に取りまとめたものが、見つかりません。単に私の情報収集力が虚弱であるだけならそれでよいのですが、それだけではなく、他の学問分野と比べると、学術的発展が進んでいない現実があるように感じられます。

特に気になる点は次の2つです。
全国を対象とした地名タイプの最近の研究成果が見つからないこと。
GISを使った研究が見つからないこと。

流域を歩いているなかで素朴に地名に興味を持った者として、不安定感、あるいは不安感をおぼえます。
「地名学」の発展を望む社会要請が弱いのか、ブレーキをかける要因があるのか、その事情にも興味が飛び火してしまいます。

3 花見川流域の地名検討について
花見川流域や印旛沼流域の地名の由来に関する書籍、報告書等を収集してみると、全国的観点から地名タイプ区分を伴うような方法論のはっきりしたものはみつかりませんでした。
千葉市や八千代市、佐倉市の地名にかかわる図書等では、既存の地名掲載古資料をまとめ、それに言い伝えと直感、現場の状況を加え、地名語源を検討しているものがあり、労作資料となっており参考図書として価値があります。しかし失礼ですが、私は満足できませんでした
花見川流域や印旛沼流域の地名に関しては検討すべき広大な領域が存在していると感じました。

多輪免喜(たわめき)
佐倉市の市民グループによって調べられた小字レベル地名の由来調査報告書
1号~5号が発刊されている。佐倉市立図書館で閲覧。

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