2013年10月31日木曜日

2つの隆起軸の影響圏

花見川流域の小崖地形 その50

下総台地の活構造を2013.10.30記事「下総上位面と活構造」で紹介しました。

この情報から、花見川流域付近の下総上位面は主に下総台地西部隆起帯の影響を受けて変形していることが判りました。

同時に、下総台地東部隆起帯の影響を受けていることも予感されます。

そこで、二つの隆起帯のおおよその影響圏について検討してみました。

次の高度分布図(谷埋め図)は杉原重夫(1970):下総台地西部における地形の発達、地理学評論43-12、p703718に掲載されている高度分布図に塗色したものです。

下総台地の高度分布図(谷埋め図)(杉原、1970
塗色は引用者による。

この下総台地の高度分布図から下総上位面の変形の仕方が下総台地西部隆起帯と下総台地東部隆起帯のそれぞれの主影響圏と重合した影響圏をおおよそ把握することができそうです。

そこで、この高度分布図と隆起帯の位置及び地形段彩図を重ね合せて見ました。

高度分布図・隆起帯位置・地形段彩図の重ね合せ図

この重ね合せ図を作成することにより、地形段彩図の情報より広い範囲の地形を検討できます。そのため、下総台地西部隆起帯の主影響圏、下総台地東部隆起帯の主影響圏、および二つの隆起帯が重合して影響する範囲をおおよそ知ることができました。

二つの隆起帯のおおよその影響圏

下総台地西部隆起帯の主影響圏には柏井検討面、花島検討面、犢橋検討面などの階段状の(大局的に見れば波状の)地形がみられます。

二つの隆起帯の重合影響圏には四街道検討面が含まれます。
四街道検討面の地形の変形は下総台地西部隆起帯の影響と下総台地東部隆起帯の影響の双方を考える必要があります。
従って、四街道検討面の地形変形の検討は、花見川流域という狭い範囲の検討では不可能であり、視野を広域的に広げる必要が必須であることが判りました。

二つの隆起帯のおおよその影響圏と検討面との関係は次のようになります。

二つの隆起帯のおおよその影響圏と検討面



2013年10月30日水曜日

下総上位面と活構造

花見川流域の小崖地形 その49

1 下総台地の地形面区分と活構造
「日本の地形4 関東・伊豆小笠原」(貝塚爽平他編、東京大学出版会)に「下総台地の地形面区分と活構造」という図面が掲載されていますので紹介します。

下総台地の地形面区分と活構造
隆起軸、沈降軸、伏在断層の塗色は引用者がおこないました。

本文中では次のような説明が行われています。
「下総台地の高度分布を詳細にみると、緩やかなうねり構造-波状の地形(貝塚、1961)-が認められる。これらは活褶曲による地形面の変形と考えられ、これらの変形が分水界の位置や水系パターンだけでなく下総台地の輪郭を決定している。」

この活褶曲は地質図にも記載されています。(2013.06.15記事「「地質図Navi」を知る」参照)

この図面の中の活褶曲「①下総台地西部隆起帯」が花見川流域の中央部を横断していて花見川流域の地形を特徴付けていますので、次に拡大表示してみます。

2 下総台地西部隆起帯と小崖地形(断層地形)との関係
次の図は「下総台地の地形面区分と活構造」をGISにプロットしたものです。

GIS上での位置合わせ

この位置合わせに基づいて、花見川流域の下総上位面分布図に下総台地西部隆起帯をプロットすると次のようになります。

花見川流域における下総上位面分布と下総台地西部隆起帯

参考 花見川流域における下総上位面分布と下総台地西部隆起帯
基図は標準地図(電子国土ポータルによる)

このオーバーレイ図から次の重要な結論を導きます。

ア このブログで検討してきている柏井小崖(柏井断層)、花島小崖(花島断層)、犢橋小崖(犢橋断層)の存在と下総台地西部隆起帯という概念が整合すること。

イ 従って、柏井小崖(柏井断層)、花島小崖(花島断層)、犢橋小崖(犢橋断層)を下総台地西部隆起帯の細部における具体的姿として位置付けて捉えることができること。

つまり、下総台地西部隆起帯という活褶曲は、柏井小崖(柏井断層)、花島小崖(花島断層)、犢橋小崖(犢橋断層)等の具体的事象から構成されているということです。

3 下総台地東部隆起帯の影響
下総台地西部隆起帯(という概念の図示)は四街道検討面に入ったところで終わっています。

そしてその付近の地形面高度は南東に行くに従って高くなっています。

30m以上の地形面分布と下総台地西部隆起帯

四街道検討面の高さが高くなるのは下総台地西部隆起帯というよりも、下総台地東部隆起帯の影響によると考えると、いろいろなことが説明できそうです。

柏井検討面・花島検討面・犢橋検討面・長沼検討面と四街道検討面は異なる地殻運動によって変形したから、つながらないのではないかと仮想します。


もしそうだとすると、長沼(古長沼)の成因仮説をより豊かな情報で合理的に再構成できる可能性が生れます。

2013年10月29日火曜日

下総上位面の大局把握

花見川流域の小崖地形 その48

柏井小崖(柏井断層)の縦ずれ量を計測するというミクロな検討をしようとして、ふと気がつくと下総上位面の大局的把握、基本的特性の把握が出来ていないことに気がつきました。この記事では急遽下総上位面の大局的把握をしたいと思います。
下総上位面の基本的特性の把握は引き続き、別記事で行います。

1 下総上位面の分布
次の図は下総上位面検討のための専用地形段彩図(2013.10.27記事「下総上位面の微地形検討のためのツール作成」参照)に、「千葉県の自然誌 本編2 千葉県の大地」(千葉県発行)に掲載されている下総台地西部の地形面分布図(原図は杉原(1970))をオーバーレイしたものです。ハッチ(斜め線)で示される所が下総下位面、黒塗りが千葉段丘です。

地形段彩図と地形面分布図のオーバーレイ図
地形面分布図(原図は杉原(1970))は「千葉県の自然誌 本編2 千葉県の大地」(千葉県発行)から引用

このオーバーレイ図から、この付近の下総上位面の分布は次のようになります。

下総上位面の分布
地形面分布図(原図は杉原(1970))の情報を、現地の状況から一部修正して扱っています。
図示した部分の黒色及び紺色以外の色で示した台地が下総上位面であることを示します。

2 下総上位面の作業上の地形面区分
検討している小崖地形(断層地形)との関連で、下総上位面を次のように作業上の区分を行いました。

作業上の地形面区分

こうした地形面区分および名称を付与することにより、効率的に地形面の特性を把握し説明できるようにしたいと思っています。

なお、柏井検討面・花島検討面・犢橋検討面・長沼検討面と四街道検討面の関係が不明であるので、区分線を重ねてあります。

勝田検討面、志津検討面は当面の検討からは外します。

位置がわかるように、参考までに作業上の地形面区分を標準地図にプロットした地図を掲載します。

参考 作業上の地形面区分
基図は標準地図(電子国土ポータルによる)

2013年10月28日月曜日

上ガスが極端に減少

花見川の上ガス(現象)が極端に減少したので、記録しておきます。

台風26号の影響による大和田機場からの120m3/s放流(2013.10.1619)の後、上ガス現象が目に見えて減少しているように感じていました。(2013.10.20記事「放水後の上ガス」、2013.10.23記事「上ガスの水紋」参照)

昨日(2013.10.27)の観察では放流後特有の水中懸濁物質も無くなり、ほとんど無風で水面の観察が良くできたのですが、上ガスは止まってはいないが、いつもの1/10とか1/20に減少しているという印象を受けました。

本日(2013.10.28)にはいつも水面を見る場所数か所で観察したところ、1つの場所で1つの気泡発生を見たのみでした。気泡は見えないけれど小さな水紋だけ発生するという微細な上ガスは全く見ませんでした。

ほとんど上ガスが止まったという印象を受けます。

上ガスの見られない花見川水面

2013.10.28にようやく見つけた唯一の気泡と水紋

水辺に降りれば、どの場所でも水面全てで気泡が上がり、水紋が拡がっていた状況と大違いです。

なぜ上ガスが極端に減少したのか?
幾つかの理由を列挙しておき、後日さらに検討したいと思います。

上ガスが極端に減少した理由(検討リスト)

1 大和田機場放流により底泥が堆積し、その後微細な懸濁物質が時間をかけて堆積し、地層水の湧出に蓋をしたような環境が生まれたため。

2 20131026日午前210分頃の地震(あるいは別の最近の地震)で地下の地層水の水道が変化したため。

3 特定の理由によるものではなく、一般的自然現象のリズムとして上ガスが止まった。(20135月から発生した局地上ガス現象の地下資源の枯渇)

4 観察したときたまたま上ガスを見かけなかった。(観察の仕方が不十分であった。)

観察をさらに継続します。


2013年10月27日日曜日

下総上位面の微地形検討のためのツール作成

花見川流域の小崖地形 その47

柏井小崖(柏井断層)を把握するためには、崖地形そのものを検討する前に、下総上位面がどうなっているのか(崖の前後で侵蝕されているのか、傾動しているのか等)把握する(見当をつける)ことが必要であることに気がつきました。(2013.10.26記事「柏井小崖(柏井断層)の縦ずれ量検討の違和感」参照)

その検討(見当をつける)のためのツールとして専用地形段彩図を作成しましたので、報告します。

次の地形断面図に示すように、花島小崖より北の下総上位面は標高27m30m程度のところが多くなっています。

花島小崖と柏井小崖付近の地形断面(下総上位面) 例7

地形断面の位置

このような情報を他の箇所でも確認して、余裕をとって標高24m以上の下総上位面の微地形を検討することとしました。

これまで利用してきた地形段彩図は汎用版であり、台地とそれを刻む谷津全てを表現するものでした。地形の全体像の把握には適していますが、微地形の詳細検討には必ずしも適していません。

ここでは下総上位面を修飾する微地形を問題にするので、標高24m以上を1m刻みで7段階の段彩とする図面を作成しました。

下総上位面の微地形検討のための専用地形段彩図
赤点線は花島小崖(花島断層)
利用している基盤地図情報5mメッシュ(標高)のロット全体を示しています。

この地形段彩図でこれまで気がつかなかった各種情報を得られることが一見してわかります。(新発見もあります。詳細は追って記事にします。)

同時にこの図は情報量が多すぎることと、グラデーションの色の識別が困難になることがあるので、この図をサポートする次の補助図6葉を作成し、より多くの知見を得られるようにしました。

下総上位面の微地形検討のための専用地形段彩図 補助図 24m抽出図

下総上位面の微地形検討のための専用地形段彩図 補助図 25m抽出図

下総上位面の微地形検討のための専用地形段彩図 補助図 26m抽出図

下総上位面の微地形検討のための専用地形段彩図 補助図 27m抽出図

下総上位面の微地形検討のための専用地形段彩図 補助図 28m抽出図

下総上位面の微地形検討のための専用地形段彩図 補助図 30m以上区分図

図示した範囲の標準地図を参考までに掲載します。

下総上位面の微地形検討のための専用地形段彩図を作成した付近の標準地図
電子国土ポータルによる。赤点線は花島小崖(花島断層)。


専用地形段彩図と補助図の切り替えはGISソフト(地図太郎PLUS)上で「段彩設定の読込」によりワンタッチで行うことができ、他の地図(標準地図、旧版1万分の1地形図、DMデータ、空中写真等)や情報(断面線位置図等)と重ね合せて見ることができます。

有力な検討ツールが出来ました。


2013年10月26日土曜日

柏井小崖(柏井断層)の縦ずれ量検討の違和感

花見川流域の小崖地形 その46

1 違和感の説明
2013.10.25記事「柏井小崖(柏井断層)の縦ずれ量」の末尾にこの検討に違和感を感じた旨書きました。

その違和感がなんであるか、突き止めました。

まず縦ずれ量は横断図上で次のように計測しています。

柏井小崖(柏井断層)の縦ずれ量の計測の考え方と実際例

この図の実際の計測例でポイントaは下総上位面の高さを代表していなければなりませんが、断面線の端に位置しています。

従って、本当に下総上位面の高さを代表しているかどうか大変怪しいので、違和感を感じたのでした。

この違和感を平面図で示すと次のようになります。

違和感の説明図(分布に意味はありません)
基図は地形段彩図と旧版1万分の1地形図のオーバーレイ

柏井小崖(柏井断層)の縦ずれ量は図の「ウ」と「オ」を比較して求めました。
その発想は花島小崖(花島断層)で「あ」と「い」を比較したのと同じです。
双方ともに侵蝕地形の影響を排除することに留意しました。

しかし、「ウ」と「オ」の比較(柏井小崖)では「あ」と「い」の比較(花島小崖)と結びつきません。

地形段彩図の色の濃さを見てわかる様に、柏井小崖(柏井断層)と花島小崖(花島断層)の間の地形面(下総上位面)は一様な面ではなく、「い」と「う」に分かれることが直感できます。

つまり、柏井小崖(柏井断層)を検討するためには、「ウ」、「エ」、「オ」の検討だけではなく、「い」・「う」・「ウ」と「オ」・「お」の二者を比較して検討することが必要であるのです。

その際、「い」と「う」の関係を把握する必要があります。

「い」と「う」は地殻変動で高さが異なるようになったのか、それとも「い」が侵蝕されて「う」ができたのか、その違いによって柏井小崖(柏井断層)の計測の仕方が異なってきます。

「う」の分布をみると侵蝕作用で形成されたように直感できますが、ほんとうにそうであるのか、検討することが大切です。

2 断面線を延長して地形を予察してみる
「ウ」、「エ」、「オ」の検討だけでは近視眼的な検討になってしまう可能性が濃厚です。

そこで「ウ」、「エ」、「オ」の検討で使った断面線を延長して断面図を作成して、下総上位面(特に「い」と「う」)の高さがどうなっているのか、予察的に検討してみました。

予察のための断面線の延長

延長した断面図1

延長した断面図2

この延長した断面図の789では確かに下総上位面が明瞭に2面(「い」と「う」)に分かれるような断面になっています。

この作業から、「い」と「う」の違いがどのような理由であるのか、検討することなしに柏井小崖(柏井断層)の縦ずれ量を正確に計測できないことがわかります。

結論として、断面図で柏井小崖(柏井断層)の縦ずれ量を計測するためには、その前段として下総上位面のミクロな高さ分布(微地形分布)の検討が必須であるということが判りました。

柏井小崖(柏井断層)そのものの検討に入る前に、しばらく、下総上面のミクロな高さ分布(微地形分布)検討を急遽行うこととします。


2013年10月25日金曜日

柏井小崖(柏井断層)の縦ずれ量

花見川流域の小崖地形 その45

1 C検討区の位置と浅い谷の名称
この記事では柏井小崖(柏井断層)のC検討区について検討します。

柏井小崖(柏井断層)のC検討区の位置

C検討区では柏井小崖(柏井断層)に平行して浅い谷が走っていて、西側は高津川に東側は芦太川に流れ、中央部分で谷中分水界をなしています。
この浅い谷の名称を次のように仲東谷津・仲西谷津と呼ぶことにします。

浅い谷の名称
この図は南側を向いて描いていますから、右が西、左が東になります。

2 横断図・縦断図の作成
次の図に示す横断線・縦断線を設定して、横断図・縦断図を作成しました。


横断線・縦断線の設定
基図は地形段彩図と旧版1万分の1地形図のオーバーレイ図

横断線・縦断線の位置関係が判る様に、各線分を標準地図にプロットした地図を作成しました。

参考 横断線・縦断線の設定
基図は標準地図(電子国土ポータルによる)

横断図は検討事項を書き込んで次項で表示します。

縦断図は次の通りです。

縦断図
中央の尖った部分は京成線の盛土です。
浅い谷の谷底が明瞭な分水界を形成することなくつながり、その両端は別の河川に流入するという大変珍しい地形となっています。


3 地形模式と柏井断層縦ずれ量
横断図を検討して、次のような地形模式を設定して、そこから柏井断層の縦ずれ量を計測しました。

仲東谷津・仲西谷津付近の地形模式と断層縦ずれ量

横断図による縦ずれ量の計測 1

横断図による縦ずれ量の計測 2

合計9断面で縦ずれ量を計測することができ、その平均は1.1mとなりました。

当初考えていた量よりずっと少ない値です。

参考として縦ずれ量の計測に使った地形ポイントの分布図を掲載します。

地形ポイント分布図


さて、・・・

ここまで検討してきて、違和感を感じるようになりました。

自分が視野狭窄に陥っていると直感できます。

違和感の素を明らかにしたい、より合理的な検討が出来るように視野拡大を図りたい、と思うようになりました。

つづく

2013年10月24日木曜日

柏井小崖(柏井断層)検討の視点

花見川流域の小崖地形 その44

花島小崖(花島断層)の検討を一通り終えましたので、柏井小崖(柏井断層)の検討に移ります。

柏井小崖(柏井断層)の検討は次のAFの検討区を設定して、検討します。

それぞれの検討区の検討の視点は次のように考えています。

柏井小崖検討の視点(2013.10.23
基図は地形段彩図

検討区の位置を知るために、検討区を標準地図にプロットしました。

検討区の位置
基図は標準地図(電子国土ポータルによる)

具体的検討はCFBAの順番で次の記事から始めます。

なお、花島小崖は戦前期の地理学術論文に1度だけ表れたことがありますが、柏井小崖はこれまで誰からも興味対象として扱われたことが無かったものです。それだけに本当に小崖(断層)があるのかという根本次元から興味が出発します。

花島小崖(花島断層)、犢橋小崖(犢橋断層)(追って検討予定)と柏井小崖(柏井断層)の関係を概観すると、横ずれという視点でみると、次のようなイメージを持つことができます。その横ずれの移動量は130m~150m程度です。
このようなイメージの確からしさを、柏井小崖(柏井断層)の検討を通じて明らかにしていきます。

地殻ブロックの水平移動方向のイメージ

また、縦ずれという観点から見ると、次のようなイメージを持つことができます。
このイメージの確からしさについても、柏井小崖(柏井断層)の検討を通じて明らかにしていきます。

地殻ブロックの垂直移動方向のイメージ

つづく