2014年9月18日木曜日

旧石器時代遺跡の地形分析の必要性と有用性

原始・古代関係図書を読む 5

印旛の原始・古代-旧石器時代編-のⅤ資料集に43遺跡の詳細が記述されています。

素人の自分には気の遠くなるような詳細な石器の検討が記述されています。残された物的情報がこれだけだと考えると、このような詳細な情報から様々な旧石器時代人の生活がわかるので、その専門性という知識を生み出す力に敬服します。

さて、素人の私の率直な感想を述べます。

旧石器時代の遺物が発見された遺跡の地形は旧石器時代の姿をかなり伝えていると思います。その地形についての検討に使っているエネルギーは、石器検討に注いでいる莫大なエネルギーに比べると、極端に少なく感じます。

地形は石器が出た場所の環境を示す1級の情報だと思いますが、遺跡記述では「樹枝状に発達した谷津の最奥部にある」とか「舌状台地の先端にある」程度の記述で、地形を示す地図はありません。

動物が集まる湧水とか動物移動ルートとか狩方法とかを考えるとさまざま地形要素の検討必要性が浮かびます。そうした遺跡を知るための地形検討が空白地帯になっているように、この本から感じます。

また素人考えですが、その場に石器が存在する理由も地形(かなりミクロな地形)によってその解釈が異なってくるに違いありません。

遺跡に関する地形検討をある程度体系に行えば、石器検討だけからは得られない別種の有用な情報を得られるように考えます。

次の図は附録の印旛郡内旧石器時代遺跡分布図の一部について遺跡の位置をプロットしたものです。
この地図では谷津をブルーに塗り地形との関係を示そうとしていて、他の資料にはない優れたものになっていますが、それでも遺跡と地形との関係は必ずしも明瞭ではありません。

印旛郡内旧石器時代遺跡分布図の一部

次の図は地形段彩図をベースにしてその旧石器時代遺跡をプロットしたものです。

印旛郡内旧石器時代遺跡分布図の情報を地形段彩図にプロットしたもの

地形段彩図と正確な遺跡位置プロットをよく見ると、私は例えば、次のような印象を持ちました。
(遺跡のある場所は狩をした場所の近くに違いないという想定で考えています。)

ア 谷津をぐるりと囲むように多数の遺跡が分布しているところがある。
→谷頭水源の分布に対応するのではないか。→水場に来た獣を狩っていたのではないか。
イ 台地中央部にも遺跡がある。
→かつて湖沼があり、その水場に来た獣を狩っていたのではないか。(東内野遺跡など)
ウ 台地が地峡になっている場所や狭窄部に遺跡がある。
→台地が狭まる地峡地形や狭窄部地形を利用して罠猟や待ち伏せ猟をしていたのではないか。
エ 台地の先端(ハナ)に遺跡がある。
→台地地形を利用して獣を追い詰めて狩っていたのではないか。

もっと遺跡と地形との関係はいろいろあるに違いありません。
上図のような地図縮尺ではなく、もっと拡大した詳細な地形について遺跡毎に記述・分析・検討して、比較していけば、石器分析を補完する有用な情報が得られるような気がします。

石器が大量に出土する場所の地形を検討・比較するだけでも、有用な情報を得られると思います。

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