2015年8月12日水曜日

白幡前遺跡出土墨書土器の閲覧 その4(釈文「廓」)

花見川地峡史-メモ・仮説集->3花見川地峡の利用・開発史> 3.4〔仮説〕律令国家の直線道路、東海道水運支路の検討>3.4.186 白幡前遺跡出土墨書土器の閲覧 その4(釈文「廓」)

白幡前遺跡出土墨書土器を八千代市立郷土博物館で閲覧できる機会があり、その感想をシリーズ記事で書いています。
この記事ではなぜ「廓」が読めたのか、検討してみました。

次の墨書土器は「廓」と釈文されています。

史料586番 廓

もちろん私は、この墨書をはじめて見て「なるほど廓だ」とは納得できません。

以前、別の件で同じく八千代市立郷土博物館の研究員の方に古地図の記載文について、その読み方を教えていただいたことがあります。
2011.11.01記事「絵図注記文字の解読を教えていただく」参照

その時、「くずし字辞典」のような資料をみせていただきました。

くずし字辞典のような資料があるということは、くずし字を解読する専門技術が存在しているのだと思います。

しかし、漢字を図像として捉え、それを転写するように書くことも多い墨書土器の文字釈文は、既存のくずし字辞典のような資料だけでできるとは思えません。

白幡前遺跡を発掘して墨書土器の文字を釈文した方は恐らく、類似の文字図像を集めて検討し、他遺跡の研究成果等も参照して、徐々に釈文の正確性を高めていったのだと思います。

さて、千葉県出土墨書土器・刻書土器データベース(明治大学日本古代学研究所)では墨書・刻書の図像を見ることができます。
「廓」を検索して、「廓」の図像だけを次々に見ることができます。

実際に次々に見てみました。

そうすると、くずし字の知識は全くゼロの私ですが、史料586番の墨書をなぜ「廓」と釈文したのかという理由を素人なりに理解できました。

自分なりに「廓」がくずされる様子を次のようにイメージしてみました。

文字「廓」のくずしイメージ

史料586番は、まだれの中の右側の構成要素であるおおざとが、右ではなく、下に移動しているくずしであることを理解しました。

釈文という行為は極めて高度な専門性を必要とする技術であると改めて理解しました。

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