2015年11月28日土曜日

アドレスマッチングの見える化

小字地名データベース作成活用プロジェクト 41

国勢調査の町丁・字等別境界データを入手してGISにプロットしましたので、結果的にアドレスマッチングの見える化が実現しました。

これまで、アドレスマッチングを多用していますが、そしてその原理は理解しているつもですが、実際の「マッチ」がどのように行われているのかは、自分にとってはブラックボックスでした。

東京大学空間情報科学研究センターのアドレスマッチングサービスを利用していますから、完全な東京大学まかせでした。

しかし、千葉県北部34市町域の小字全部(約46500)をアドレスマッチングでプロットしたものと、境界データを重ねることができますので、アドレスマッチングの有様が広域について、見える化しました。

千葉県北部34市町 小字全部のアドレスマッチングプロットと国勢調査の町丁・字等別境界データ

同上拡大図(部分) 基図 色別標高図(やや薄く)

同上拡大図(部分) 基図 標準地図

昭和59年発行図書(角川千葉県地名大辞典)の小字から最新市町村に対応した所在地表示を生成して、それをアドレスマッチングすると、上記のような分布図になるということが判りました。

アドレスマッチング結果が見える化したことによりいくつかの感想と課題が浮かび上がりました。

感想
大半の境界(大字)ではその中心部付近にドット位置がプロットされていて、確かにアドレスマッチングの原理が実行されていることを確認できました。
また高度成長期以前の市街地部では昭和59年時点大字(町丁目)と細分化された境界データが対応していてより精細な分布状況が判ることも確認できました。

地図上でこうした確認ができたことはアドレスマッチングの有用性を確認できたことになります。

課題 ア
・ドットがプロットされていない町丁・字等別境界がありますから次のような可能性をチェックする必要があります。
1 角川千葉県地名大辞典の小字リストが土地全部を網羅していない可能性がある。
2 アドレスマッチングに使った小字の所在地表記が現在の住所表示と異なっている可能性がある。
3 アドレスマッチングシステムサイドに不具合がある。

3の可能性はゼロと考えます。

2の可能性は大いにありうると考えます。

現在の小字所在地表記は「市町村名」+「昭和59年時点の大字(町丁目)名」+「小字名」です。

昭和59年以降開発地番整理された地域について、この表記を現在使われている住所表示に修正変更する必要性があります。

1の可能性はこれまで全く考えてこなかったのですが、あり得ます。自分にとって盲点でした。

課題 イ
・町丁・字等別境界の中心にドットがプロットされていない
1 アドレスマッチングシステムが使っている境界データが平成22年国勢調査境界データと異なる。
2 アドレスマッチングシステムが所持する境界中心データに誤差がある。

1、2ともその可能性があります。この問題はアドレスマッチング結果を自分で手作業で修正するしかありません。



アドレスマッチングの様相が見える化して、それを利用する際の自分にとっての課題を明瞭に意識できたことはとてもよかったと思います。


今後は課題アに対応した後、アドレスマッチング結果(小字リストの位置情報csvファイル)を、個々データを自分が理解して修正等を行い、正確なcsvファイルに直して、GISにプロットするという作業になると考えます。

その時にはアドレスマッチングの最適投入データを作成するという視点は2の次、3の次にランクを下げています。

なお、境界データは図面上にあるだけでなく、csvファイルとして存在しているのですから、データベースソフトのリレーション機能を工夫して活用すれば、小字データと境界データのマッチングを自分で行うことも可能であると考えます。




境界データを利用した小字分布図作成方法

小字地名データベース作成活用プロジェクト 40

国勢調査の町丁・字等別境界データが入手できましたので、それを利用して小字分布図作成が効率的に行える可能性が出現しましたので、メモしておきます。

現在千葉県全体の小字リスト電子化、データベース化を行っています。

この小字リスト電子化、データベース化の次に小字をGISにプロットしてしっかりとした地理的データに変換して、空間分析ができるようにしたいと考えています。

千葉県全体の小字数は8万から9万くらいと考えていますから、それをGISにプロットする作業は目がくらむような膨大な作業となります。

ですから、今から何とか超効率的GISプロット方法を見つけたいと考えています。

IT技術を使った夢のような超効率的方法がそのうち見つかるに違いないと楽観しています。

現時点では、境界線の入った小字分布図作成はあきらめています。

小字領域の中心位置にドットを打ち、それをもって(点情報として)分布図を作成しようと考えています。



さて、超効率的方法ではなく、極めて泥臭い方法ですが、入手できた境界データを使えば、既存の(紙に書かれた)小字分布図をGISにプロットする作業が相当効率化しますので、その方法を説明します。

次の小字分布図を例に途中まで作業してみました。

小字分布図の例
「多輪免喜」第二号(佐倉地名研究会)から引用

小字分布図が国土地理院などの地図に印刷されている場合は、それをGISに取り込むことは容易です。

しかし、上記例のように作成時に下敷きに地図を利用しているにしても、地物が出ていない分布図になるとそれをGISにプロットすることは多大の労力と時間がかかります。

その理由は、小字分布の形状から谷津形状(地形)や道路形状を探し出し、それをGIS上の各種背景地図情報と対照させて、小字分布図を移動・回転・拡大縮小させてプロットさせる必要があるからです。

ところが、GIS上に大字レベルであってもその形状が境界データとしてすでに存在すると、小字分布形状を直接大字境界データと対照して小字分布図を移動・回転・拡大縮小させてGISにプロットできます。

境界データ

境界データに小字分布図をプロットした様子

境界データを消して小字分布図だけにして、小字中心にドットを打てるようにした様子

小字分布図を多少の誤差があってもプロットできれば、小字中心付近にドットを打って、小字位置情報とすることができます。

小字分布図がポンチ絵で地図としての正確性がない場合でも、それしかデータがなければ、そのポンチ絵を境界データとある程度強引に対照させて、小字分布図(点情報)を作ることになると考えます。

境界データがなければ、ポンチ絵としての小字分布図から小字分布図(点情報)をつくることが困難です。


2015年11月26日木曜日

境界データのプロット

小字地名データベース作成活用プロジェクト 39

2015.11.20記事「町丁・字等別境界データの入手」で平成22年国勢調査町丁・字等別境界データの入手方法をメモしました。

その境界データを千葉県北部34市町について入手してプロットしてみました。

町丁・字等別境界データ 千葉県北部34市町

サイトe-Statで入手したファイルは世界測地系緯度経度・Shape形式です。

そのファイルには次の定義書にあるように38種の情報が含まれています。

国勢調査境界データの定義書(一部)


このファイルを地図太郎PLUSで「他形式で編集ファイルに読み込み」しました。

上記定義書に記載されている情報については、試しに29町丁・字等名称と15マッチング番号を取り込んでみました。

取り込みすると、地図太郎PLUSは次の表示をします。

国勢調査境界データ(Shapeファイル)を読み込んだときの地図太郎PLUSの表示

地図太郎PLUSでは自動的にcsvファイルが生成し、それと結合している状態になります。

そのcsvファイルをExcelでみるとつぎのようになります。

境界データと結合しているcsvファイル 千葉市中央区
(情報の無い欄は非表示)

タイトル欄に町丁・字等名称が、キーワード欄にマッチング番号が表示されています。

町丁・字等別境界データを町丁・字等名称を表示して拡大表示すると次のようになります。

町丁・字等別境界データ 町丁・字等名称表示

小字分布図の作成やアドレスマッチング精度の検討にとても有効なデータを入手できたと思います。

2015年11月25日水曜日

ランドスケープに関する趣味活動

Google Chromeの拡張機能であるEarth View from Google Earthを利用して世界のランドスケープ(地形およびそれと関連する地物が織りなす風景)を楽しみ、時々ブログ「花見川流域を歩く 番外編」で記事にして情報発信しています。

Google earthに地形3D表示機能があることから、過去のどのような旅行家、探検家よりも自分の方が(自分に限らず現代人がという意味ですが)より多種のランドスケープ観察ができうる環境にあることが判りました。

その結果、無意識的自己規制が解けたのだと思いますが、世界のランドスケープに対する興味が急激に増進しています。

Earth View from Google Earthの機能にほれ込み、それによる楽しみから、地球全体のランドスケープの様子をくまなく知りたくなっています。

国内のランドスケープの現場はかなり見ている方だと思いますが、世界のランドスケープの現場は自分自身の海外旅行の回数など知れたものですから極めて限定されています。

しかしそうした現場観察とか旅行とかは、極一部の専門家を除いて、たとえそれを職業としているような人であっても、Earth View from Google Earthの多数のランドスケープ事例(画像)に対してそれを知っているとか見たことがあるとかの比率は、自分(および多くの人)と大差ないということに気が付きました。

その理由はEarth View from Google Earthが地球表面全体を対象としているからです。観光地であるとか、都市であるとかという偏りがないのです。偏向した興味ではない、地球表面全体を平等に対象としたランドスケープという切り口はこれまでほとんどなかったと思います。

Google Earthが生まれたことにより、世界のランドスケープに対する興味を発展させる活動の同じスタートラインに、世界中の人の多くが今立ったという感覚を持ちます。

当面次のような準備体操のような活動を行ってみて、その結果を踏まえてその後の活動を計画してみようと思います。

●ランドスケープに関する当面の趣味活動

1 Google Chrome拡張機能のEarth View from Google Earthで興味あるランドスケープをブログ(花見川流域を歩く 番外編)で紹介する。(現在進行形)

2 Earth View Web Galleryのマップ(画像)内容を分析整理してみて、自分の興味とランドスケープ要素との関連を検討してみる。

自分がランドスケープに魅せられる要因を分析します。

3 手持ちの世界ランドスケープ(地形)図書の事例をGoogle Earthで観察することによって、ランドスケープ(地形)要素とその魅力との関係を検討してみる。

この検討では古典的な地形学図書を対象にして、そこに掲載されている地形ブロックダイヤグラムの場所を特定して、その場所をGoogle Earthで観察することも含みたいと思います。

4 これらの検討のなかで、自分自身が海外で撮影した写真からランドスケープ検討で使えそうなものをピックアップしてみる。

これまでこのブログでは、花見川流域とその関連地域を微に入り細にわたり検討するというミクロ探索活動を充実感を持って継続してきています。

そしてその微細検討の持続エネルギーを維持するためには、視界を地球全体に広げたランドスケープ検討がカウンターバランスとして有効であるように感じます。

花見川関連のミクロ検討思考の健康性を維持するために、思考における疲労や飽きからの回復のために、世界のランドスケープ検討が必要であるような気がしています。

ランドスケープに対する興味は趣味活動中に入れ子で生まれた趣味活動のようです。

Earth View from Google Earthの画像例
Earth View from Google Earthから引用

2015年11月24日火曜日

マイフィールド

以前マイカップとかマイ箸とかの言葉に接したことがあります。環境とかエコロジーとかの視点で物のむやみな消費を抑制しようという視点から生まれた語法のようです。マイ○○を定めることで浪費を防ごうということのようです。

同じ語法、視点でマイフィールドはどこかと考えました。

フィールドとは、ここでは趣味の興味を投影する場所のことです。

興味がある、思い入れがある場所のことです。

あまりに多くの場所に興味を投影すると、いわば自分が依って立つ場所(地域)つまり自分の居所(地域)が不明になります。

マイフィールドと自分が呼べるような場所(地域)を作っておいた方が便利です。

誰よりも深くその場所(地域)に興味を持っている、思い入れがあるということは、つまりマイフィールドがあるといことは、いざという時に自信の素になると考えます。

そんなマイフィールドというものが自分にとってどこか?

あるいは何処をマイフィールドにするか?

ということを考えてみました。

とりあえず次のように自分の居所(実際に住んでいる場所)を中心にして同心円状にいくつかのマイフィールドを設定してみました。


散歩のマイフィールド
Google earthによる

日々散歩しているマイフィールドは柏井橋から弁天橋までの花見川とその周辺地域です。

自然史的・考古歴史的興味対象のマイフィールド
Google earthによる

ブログで検討している多くの自然史的・考古歴史的興味対象のマイフィールドは花見川流域と印旛沼流域を中心とする下総台地です。

ランドスケープのマイフィールド
Google earthによる

乾燥地形とか氷河地形とか見知らぬ土地のランドスケープに興味を持っています。
したがって、この興味対象のマイフィールドは地球そのものです。

これらの3つのマイフィールドに自分の興味の焦点を合わせるように規制するというつもりはありません。

興味を持てばどの地域にでも首を突っ込みたいと思います。(ランドスケープについては月や惑星等についても将来は興味を持つかもしれません。)

しかし、興味の中核はこれらのマイフィールドに設定しておこうということです。




2015年11月23日月曜日

香取社の影響圏を示す地名 香取

小字地名データベース作成活用プロジェクト 38

千葉県北部34市町の小字データベースの試用として、「カトリ・カンドリ」(香取)について予備的な検討をしてみました。

2015.08.16記事「小字DB活用効果の展望 1(例 香取)」ですでに検討していますが、データ数が2万から倍以上増えているので、再度同じ検討をしてみました。

データベースで香取(読みカトリ・カンドリ)をキーワードに検索すると11市町に37件がヒットしました。

これらの小字をアドレスマッチングで地図にプロットしてみました。

千葉県北部34市町 カトリ・カンドリ(香取)の分布(アドレスマッチングによる)

8月の検討では太平洋岸の分布状況が判らなかったのですが、今回の検討で、太平洋岸にも小字香取の分布を確認できました。

さらに、上記分布図と下総国領域図を重ねることによって、小字香取がすべて下総国領域内に分布することが判りました。

千葉県北部34市町香取の分布は全て下総国領域内に位置する

香取の地名は香取社が存在していて、水運上の関(徴税所)となり、香取社の影響圏であることを物語っています。

その有様の中世の状況を示した研究例を次に示します。

参考 中世香取社と浦・海夫・関
一部書き込み

この参考図には海夫注文に載る香取の海の津と市川から松戸にかけての太日川(現在の江戸川)の河関が掲載されています。

しかし、地名からみると野田市付近の太日川と香取の海西端(蘭沼)の連絡部[現在の江戸川と利根川の連絡部]付近に多数の香取地名が存在していて、交通の要衝(香取の海と東京湾水系の連絡)であり、香取社の影響が強かったと考えます。

香取の海と手賀沼の合流部付近にも香取地名がありますから、この場所も香取の海から手賀沼経由で東京湾水系に出る場所で交通の要衝です。

八千代市に香取地名がありますが、この場所は印旛浦から平戸川(現新川)を遡り、支川の桑納川畔に位置します。この場所もここを経由して市川方面に抜けた陸路(船越)が存在していたと考えます。

市川市柏井町(カシワイ=杵隈=船着き場)を通るルートになりますから、八千代市香取と市川市柏井が関係する可能性もあります。(2015.11.19記事「古代船着き場を示す「かし」」参照)

九十九里浜(横芝光町)に香取地名があります。この場所も水運交通の要衝であったと考えますが、香取の海との連絡は下図のC、D船越を経由していたと考えます。

ふなこし(船越・舟越)の意味の想像

学問的厳密さとか、時代の特定はありませんが、地名香取に関して香取社の影響圏と関連する水運路をイメージすることが出来ましたので、絵にしておき、今後の検討における1ステップとして利用します。

小字香取分布から類推する香取社の影響圏と関連水運路(千葉県北部34市町のみを対象とする)

香取地名の分布が判っただけでも、小字データベース作成意義が大きなものであることがわかります。

千葉県小字データベースが全部完成した時、香取という小字が千葉県南部にも分布するのか、しないのかわかります。

その時、香取の地名について本検討を行い、自分にとって有用な情報を汲み取りたいと思います。


2015年11月22日日曜日

古代の地名 シラハタ

小字地名データベース作成活用プロジェクト 37

千葉県北部34市町の小字データベースの試用として、「シラハタ」と「ウシ」について予備的な検討をしてみます。

2015.08.17記事「小字DB活用効果の展望 2(例 白幡)」ですでに検討していますが、データ数が2万から倍以上増えているので、再度同じ検討をしてみました。

データベースで白幡・白旗・白畑・(読みシラハタ、シロハタ)等をキーワードに検索すると21市町に69件がヒットしました。

これらの小字をアドレスマッチングで地図にプロットしてみました。

千葉県北部34市町シラハタ(白幡、白旗等)の分布(アドレスマッチングによる)

データ数が2万の時はシラハタの分布はほぼ一様であるような印象を受けましたが、倍以上のデータ数になると、偏在的分布である様子が浮かび上がります。

白幡は新羅系渡来人の秦氏の居所を意味すると想定し、古墳時代における鍛冶遺跡や交通拠点と関わりがありそうだと考えています。

つまり古墳時代の渡来人による技術的・文化的拠点と、小字白幡がきわめて密接な関係にあるのではないかと考えています。

分布の様子が浮き彫りになってきたので、今後小字シラハタの由来についてその核心に迫る検討が可能であり、その検討価値には大きなものがあると考えます。

シラハタに関連する小字として古代の殺牛祭神を地名にとどめたと考えることができる「牛喰」「牛殺し」などの小字があります。

「牛喰」「牛殺し」に関連する小字をピックアップするとつぎのようになります。

千葉県北部34市町殺牛祭神との関連が疑われる小字名の分布(アドレスマッチングによる)

八千代市、四街道市、成田市、東金市に合計6つの「牛喰」「牛殺し」関連小字があります。

今後これらの地名について個別にその由来を検討して相互に対照すれば「牛喰」「牛殺し」に関する密度の濃い情報を得ることが可能だと考えます。

なお、牛に関連する小字をすべてピックアップすると23市町から134件となります。

その分布図を次に示します。

千葉県北部34市町牛関連小字名の分布(アドレスマッチングによる)

この分布図にプロットされた小字の中には古代起源のものが数多く含まれていると考えます。

シラハタやウシの予備検討から、小字データベースの有用性を確かめることができました。

2015年11月21日土曜日

2015.11.21 今朝の花見川

今朝の日の出前、旭日が高空の高層雲に当たり、雲が赤から金に、空が紺から青へと短時間で変化し、光のドラマのようでした。

旭日の当たった高層雲

旭日の当たった高層雲

旭日の当たった高層雲

花見川にはうっすらと霧が出て、パステルカラーの世界となっていました。

花見川風景

花見川風景

花見川風景

花見川風景

花見川風景

弁天橋から下流

弁天橋から上流

花見川の散歩道(サイクリング道路)は舗装していない砂利道で、落ち葉が多く、さらに濡れているので、私にとっては舗装道路よりもはるかに自然に親しむことができる散歩環境です。

ところどころ水たまりがあって歩きにくいということはありますが、それを理由として舗装するようなことがないように願っています。



2015年11月20日金曜日

町丁・字等別境界データの入手

小字地名データベース作成活用プロジェクト 36

GISにプロットできる町丁・字等別境界データの入手ができましたので、その方法をメモしておきます。

GISにプロットした千葉市花見川区の町丁・字等別境界データ

世界測地系緯度経度・Shape形式データを地図太郎PLUSにプロットするとcsvファイルを生成して各種グラフ作成が可能となるデータになりました。

このデータの入手はサイトe-Statで行います。

e-Stat画面

e-Stat→「地図や図表で見る」→地図で見る統計(統計GIS)→データダウンロード

データダウンロード画面(統計表検索(ダウンロード用)の「Step1:統計調査(集計)を選択」画面で「調査名」で国勢調査を選択

表示リストの中から「平成22年国勢調査(小地域)2010/10/01」をクリック

「Step2:統計表を選択(複数選択可能)」画面で「男女別人口総数および世帯総数」をチェックして「統計表各種ダウンロードへ」をクリック

データダウンロード画面(統計表検索(ダウンロード用)

統計表各種データダウンロード画面の「Step3:地域選択」で都道府県と市区町村(複数選択可)を選択して「検索」クリック

「Step3:データダウンロード」の「境界データ」から必要とする境界データと定義書をダウンロードする。

統計表各種データダウンロード画面

境界データ拡大画面

小字データベースの情報を工夫すれば、この境界データ(大字レベルの境界データ)で何らかの様式で表現できそうです。アドレスマッチングよりも精度の高い分布図作成が可能であると直観します。

この境界データは、小字データベースのGISデータベース化の第1歩において、補助線的な役割で使えそうです。

2015年11月19日木曜日

古代船着き場を示す「かし」

小字地名データベース作成活用プロジェクト 35

千葉県北部34市町の小字データベースの試用として、「かし」について予備的な検討をしてみます。

「かし」を含む小字について表記別にカウントすると次のようになります。

千葉県北部 表記別「かし」を含む小字名数

この分布図をアドレスマッチングで作成すると次のようになります。

「かし」をふくむ小字分布

この小字分布の多くが古代「杵(かし)…舟をつなぐもやい杭」起源で、船着き場を意味すると想定します。

近世になって「河岸」と書いて「かし」と読ませるようになったので、近世起源の「かし」と古代起源の「かし」が混ざっていますから分別する必要があります。

海面低下等により古代内陸水運が衰退して船着き場の存在が忘れられてしまうと、「かし」の音の意味が判らなくなり、柏の字をあてる場合が多くなったと考えます。

大字で柏井(かしわい)が2か所出てきます。

大字柏井の分布

いづれも杵隈(かしわい)、つまり杵(かし…舟をつなぐもやい杭)+隈(わい…いりこんだところ)であり、船着き場の意味です。

千葉市花見川区柏井町の柏井(杵隈)は東京湾から花見川を遡上してたどり着く最上流の船着き場で、そこから陸路(直線道路を含む)で平戸川水系の舟運路につながります。

市川市柏井町も東京湾から大柏川を遡上したところにあり、そこから陸路を通って手賀沼水系や印旛沼水系に通じていたと考えます。

自治体名である柏市の名称も古代に起源を有する「かし」地名であると考えます。

柏市の行政域

手賀沼付近の杵場(かしば)つまり船着き場が転じて柏(かしわ)になったのだと考えます。

漢字「柏」は当て字ですから、植物の柏などとは全く関係がありません。

杵場→柏、杵隈→柏井など、その意味が忘れられた船着き場の音「かし」の当て字の多くが、一斉に「柏」になる様子は、地名当て字に一定の法則性(流行)があることを示していると考えます。

この予備検討でも、小字データベースの利用価値が極めて高いことを確認できました。

ITによる異種情報組み合わせ

IT(データベースソフトとGISの組み合わせをイメージ)を使った異種情報組み合わせにより、新たな価値を生み出せないだろうかという夢(妄想)が2015.11.17日経署名記事(※)をきっかけに頭の中で肥大化して、趣味テーマとして成立しそうなので、メモしておきます。

ブログ「花見川流域を歩く」では次のような項目を趣味テーマとして取り組んできています。

ブログ「花見川流域を歩く」記事の主な分野、話題等

1 地形、考古・歴史、地名分野の情報組み合わせ(A)
これらの分野のうち地形、考古・歴史、地名の3つの分野の情報をIT(データベースソフトとGIS)で組わせれば、新しい価値が生まれると考えます。

現在扱っている情報単位が地形は5mメッシュ、考古・歴史が遺跡別あるいは遺構別、地名が小字別ということになり、専門家にとっても詳細な情報単位です。

この詳細な情報単位を手作業で重ね合わせることはできませんが、IT(データベースソフトとGIS)を使えば技術的に可能です。情報量も莫大な数を容易に扱うことできます。

3つの分野の情報を組み合わせようという人(専門家)は存在しないと思いますので、恐らく初めての試みになると考えます。

3つの分野の詳細情報を重ね合わせることができると、それらの話題を全部串刺しで俯瞰することができます。

●串刺しで俯瞰できる話題例
花見川河川争奪、小崖地形、レーキ、印旛沼河川争奪、縄文海進、最終氷期の谷地形、東海道水運支路仮説、墨書土器、原始・古代地名

異分野の話題を串刺しで俯瞰できる、つまりその相互関連性を見ることができるということはそれらの話題に関する興味を飛躍的に深めることができるようになることです。

Aの情報組み合わせが実現すれば、地域全体を歴史や自然史の情報宝庫とすることができます。

2 Aと風景・自然環境分野の情報組み合わせ(B)
地形、考古・歴史、地名分野の情報組み合わせは、いわば第一次興味(本来コンテンツ)間の組み合わせですが、その結果と風景・自然環境分野の情報組み合わせは、本格的な異種情報組み合わせになります。

この組み合わせにより、普段見ている(楽しんでいる、あるいは興味を失っている)風景・自然環境の背景に極めて興味深い文化情報が控えていることに気が付くことができます。

現実の風景・自然環境にその快適環境上の価値、学術上の価値があるだけでなく、その文化的背景となる歴史的・自然史的価値(つまり文化的価値)が存在することが明確に判ることになります。

現実の風景・自然環境に強い興味を持つことができます。

Bの情報組み合わせが実現すれば、風景・レクリエーション計画や自然環境保全計画の質を高めることができると考えます。

3 Bと町づくり・川づくり分野の情報組み合わせ(C)
「「地形、考古・歴史、地名分野の情報組み合わせ」と風景・自然環境分野の情報組み合わせ」と町づくり・川づくり分野情報を組み合わせることにより、町づくり・川づくりにこれまで存在していなかった情報を提供できると考えます。

開発行為の際に、快適・便利・安全の視点だけでなく、文化的背景を知ることができ、その情報を開発行為に活かすことができるようになります。

Cの情報組み合わせが実現すれば、開発行為のための事前調査や環境アセスメント等の取り組みの質を大いに高めることができると考えます。

とりあえず、浮かんだ夢(妄想)をメモしました。

情報組み合わせの具体化について、今後、順次検討していきます。


この夢(妄想)がカバーする領域は膨大ですが、例えば次のような具体例はすでにこのブログで検討していますから、この夢(妄想)の実現可能性はおおいにありうると考えます。

例1
墨書土器データベース(千葉県分約2万件)と小字データベース(千葉県分約8万件)の情報を組み合わせ検討し、墨書土器で使われた言葉(祈願語)が地名として定着した事例を発見する。

例2
最終氷期谷地形(埋没谷地形)をボーリングデータ等から推定図化し、その情報と旧石器時代遺跡分布情報を組み合わせ、当時の狩猟活動の特性を知る。

この夢(妄想)の特徴は次の2点にあります。

1 これまで結びつけて体系的検討がなされてこなかった異分野を新たに組み合わせる。

2 これまで扱うことが困難であった膨大な情報をIT(データベースソフトやGISソフト)で処理する。

※2015.11.17日経朝刊28面経済教室「フィンテックの本質とは」(柳川範之)
この論文ではIT進展で異種「組み合わせ」が産業にとって新たな可能性をもたらしていることを話題にしています。

朝焼け

2015年11月17日火曜日

古代水運のキーワードとしてのフナコシ

小字地名データベース作成活用プロジェクト 34

千葉県北部34市町の小字データベースの試用として、フナコシについて予備的な検討をしてみます。

このブログでは船越という概念が古代水運を考える上で極めて重要であると考えています。

船越とは水運路を短区間陸路でつなげるという古代水運で使われた技術であり、技術用語として現代にまで伝わってきていると認識しています。

船越のイメージ
2015.01.08記事「古代交通技術「船越」の進化形 古代ギリシャの例」参照

その古代技術用語が地名となって、現代に伝わっています。

2014.11.23記事「相模湾と東京湾の古代水運路をつなぐ船越」では古代東海道水運の逗子湾と走海(東京湾)を結ぶ陸路の船越を紹介しています。
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参考

逗子横須賀船越付近の地勢と説明
Google Earth利用

古代の道
「千葉県の歴史 通史編 原始・古代1」(千葉県、平成19年)から引用
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千葉県北部34市町小字データベースからフナコシは大字1か所、小字3か所の合計4か所が抽出できました。

千葉県北部34市町フナコシ(船越・舟越)小字、大字の分布(アドレスマッチングによる)

古代水運技術用語であるフナコシが地名になっていることから、逆にその地名から古代の水運の状況を想像することができます。

その想像を地図に書き込んでみました。

フナコシ(船越・舟越)の意味の想像

この中で、CとDは椿海(太平洋岸)と香取の海を結ぶ船越であり、匝瑳郡の開発に絡んで興味が深まります。

参考「養老川と村田川から太平洋岸に通じる開拓ルート(想像)」
2015.10.29記事「参考メモ 房総古代の開拓に関する空間大局観」参照

小字データベースが有用な情報を生み出す情報源として価値の大きなものであることを確認できます。