2017年2月4日土曜日

大膳野南貝塚 土器形式から見た遺跡概要

大膳野南貝塚の出土土器形式リストを作成しましたので、これを使って遺跡概要をざっと眺めてみました。

発掘調査報告書における各時期別概要記述引用、出土土器形式一覧リスト、土器例を並べてみて、遺跡に関する自分のイメージを少し具体的にしました。

1 草創期~前期中葉の遺構と遺物

発掘調査報告書記述
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本時期に属する遺構は、炉穴7基と陥し穴33基であった。

炉穴からは野島式や茅山下層式、早期後半条痕文土器が検出されており、早期後半の所産と推定される。

陥し穴は遺物が検出されておらず詳細な時期は不明で、覆土や出土遺物から早期~前期という時期幅でしか捉えられなかった。

出土遺物は、井草式から黒浜式までの各型式にわたる土器が出土したが、早期後半条痕文土器と前期中葉黒浜式土器がまとまっている他は極わずかな出土量であった。
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土器形式一覧(草創期~前期中葉)

黒浜式土器の例

2 前期後葉の遣構と遺物

発掘調査報告書の記述
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検出された遺構は、竪穴住居趾16軒と土坑113基で、台地平坦面に広く分布する。

土坑群は主に調査区南西部に集中的に分布し、これを取り囲むような形で竪穴住居趾群が検出されている。

住居の分布範囲がやや散漫ではあるが、環状を呈する集落と考えられ、住居と土坑が場所を区別して構築されたものと推定される。

また、遺構から検出された土器は、諸磯b式ないしは浮島1~Ⅱ期にほぼ限定されることから、短期間に営まれた集落趾と考えられる。

出土した遺物は、土器、土製品、石器、石製品、獣骨、貝類で、総量は中テン箱にして約90箱を数える。
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土器形式一覧(前期後葉)

諸磯b式土器の例

3 前期末葉~中期後葉の遺物

発掘調査報告書の記述
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前期末葉では諸磯c式、十三菩提式、興津式、そして前期末葉から中期初頭にかけての東関東に見られる縄文を多用した土器群が出土している。

また、大木5式土器がわずかであるが出土した。

中期では、五領ヶ台式から加曽利E3式までの土器が出土し、調査区全体で68点を数える。

いずれも遺構外からの出土である。各型式とも出土量は少量であった。
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土器形式一覧(前期末葉~中期後葉)

中峠式土器の例

4 中期末葉~後期中葉の遺構と遺物

発掘調査報告書の記述
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大膳野南貝塚は後期初頭称名寺式期から前葉堀之内式期にわたる貝塚で、とくに堀之内1式期を最盛期とする。

貝の分布密度からみると、大きく3ヵ所の貝層(北貝層、南貝層、西貝層)として把握されるが、古墳時代以降の土地改変等を考慮に入れると、元来は環状に近い形状を呈する貝塚であった可能性が想定される。

環状貝塚と考えた場合の貝塚の規模は直径80m前後と推定される。

発見された遣構は、竪穴住居趾93軒、土坑墓1基、土坑264基、屋外漆喰炉8基、小児土器棺6基、単独埋甕12基、埋葬犬骨2体、鹿頭骨列1ヵ所などである。

検出された人骨は30体(住居内20体、土坑墓1体、土器棺6体、単独出土3体)を数える。

北・南・西貝層を除去した後に確認された貝層ブロックは大小160ヵ所を数え、このうち遺構に伴う貝層(地点貝塚)は78ヵ所(住居内26ヵ所、土坑内52ヵ所)である。

出土した遺物は土器、土製品、石器、骨角器、貝製品、人骨、獣骨、貝類などで、総量は中テン箱で約720箱を数える。

集落の成立時期は貝層が形成された時期より先行しており、中期末葉加曽利E4式期に属する住居が3軒検出されている。

続く後期初頭称名寺式期も小規模な集落が継続し、次段階の後期前葉堀之内式1式期に遺構数が爆発的に増えて集落の最盛期を迎える。

堀之内1式期の遺構群は南北貝層直下で密に分布している一方、中央平坦面では分布がやや希薄になっており、集落の形態は環状集落に分類される。

その後、堀之内2式期になると集落は縮小傾向となり、続く後期中葉加曽利B1~2式期では住居と土坑が散見されるのみとなる。

なお、加曽利B3式期以降に属する遺構は検出されていない。

特筆される発見としては、称名寺式~堀之内2式期の遺構で検出された「漆喰」があげられる。

一部の住居の貼床・炉趾および屋外炉などで検出された白色粘質土について分析を行った結果、生石灰(酸化カルシウム)を含有する方解石(炭酸カルシウム)が主成分であることが判明し、貝殻を素材として焼成→粉砕→加水の工程を経てペースト状にした「漆喰」と同様の物質であるとの所見が得られたものである。
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土器形式一覧(中期末葉~後期中葉)

堀之内1式土器の例




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