2017年4月29日土曜日

土坑集中の意味

大膳野南貝塚 前期後葉集落 土坑集中の意味

2017.04.28記事「土坑の出土物」で土坑から土器細片だけでなく石器や獣骨が出土するものがあり、その主な分布が土坑集中域から離れていることを述べました。
この事実をきっかけに分析すると、土坑集中の意味が判ってきましたので、この記事でメモしておきます。

1 土坑分布域の集中
次の図は土坑分布域をヒートマップで表現したものです。

大膳野南貝塚 前期後葉 土坑ヒートマップ
半径パラメータ10mのヒートマップです。

土坑分布域は見事に特定場所に集中しています。
そしてその場所は竪穴住居から離れた場所に位置しています。

2 竪穴住居10m圏内の土坑
次の図は土坑と竪穴住居10m圏をオーバーレイして示したものです。

大膳野南貝塚 前期後葉 土坑と竪穴住居10m圏

竪穴住居10m圏内外の土坑数をカウントすると次のようになります。

大膳野南貝塚 前期後葉 竪穴住居10m圏内外別土坑数

竪穴住居10m圏内にある土坑の倍以上が圏外にあります。

竪穴住居は廃絶するとその場が送り場となり、恐らく故人の送り場として長期の殯(もがり)が行われ、その場で故人のミイラが作られたり、あるいは腐乱死体が存在していたと考えられます。
同時に動物の送り場となり食用等に使う有用部位以外の臓器や骨と頭骨が置かれたと考えます。
つまり竪穴住居は廃絶すると送り場となり、極めて不衛生な環境になります。

一方、土坑集中域のサンプル土坑全てからオニグルミ核が出土し、堅果類貯蔵庫であったことが判っています。

前期後葉集落縄文人は竪穴住居の近くに食料を貯蔵すると、不都合がいろいろと生じることを知っていて、計画的に住居ゾーンと食料貯蔵ゾーンを区分していたのだと考えます。

このゾーニング思考存在を次のデータが補強します。

3 送りをした土坑の場所
土器・獣骨・石器等が出土した土坑はその廃絶時に送り場として利用した土坑であると考えます。
そのうち、獣骨が出土する土坑をみると、次の図に示すように土坑集中ゾーン(食糧貯蔵ゾーン)からすべて離れていることが判ります。

大膳野南貝塚 前期後葉 土器・石器・獣骨等出土土坑

土坑集中域の中にも3つの送り場となった土坑があるのですが、いずれも土器と石器だけの出土です。
道具の送りは行われても動物の送りは行われていません。
集落社会が土坑集中ゾーン(食料貯蔵ゾーン)における衛生状況を管理していたと考えざるをえません。
集落社会が環境衛生面の観点から土地利用ゾーニングを極めて意識的に行っていたことが判りました。


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