2017年5月26日金曜日

西根遺跡 小グリッド土器総重量

西根遺跡の情報の最小単位は小グリッド(2m×2m)で扱われていますので、そのレベルまで立ち入って学習することにします。

この記事では小グリッド土器総重量の検討に入ります。

1 小グリッドの体系
西根遺跡発掘調査報告書では次のような小グリッド体系になっています。

西根遺跡発掘調査報告書の小グリッド体系

2 小グリッド土器総重量情報

小グリッド土器総重量情報を大きいものか順番に並べると次のようになります。

西根遺跡 小グリッド土器総重量(g)順位
(一括情報は含めていない)
1位207Kg、2位161Kg、3位75Kgと続き50Kg以上の小グリッドが7つであり、最小は10gで小グリッド数は302です。

このグラフと同じものを土器集中地点別に作成して次に示します。

第1集中地点 小グリッド土器総重量(g)順位
40Kg以上の小グリッドが1、30Kg以上が7あります。

第2集中地点 小グリッド土器総重量(g)順位
20Kg以上の小グリッドが1であり、第1集中地点と比較すると土器が散漫に置かれた様子がわかります。

第3集中地点 小グリッド土器総重量(g)順位
西根遺跡の他の小グリッドの値を大幅に上回る1位、2位の小グリッドが隣り合って存在していて、際立った特徴を示しています。
第3集中地点では間層を挟んで上下2層から出土していると記載されているので、新旧2回以上の土器送りがあり、それが一緒にカウントされている様子です。
洪水を挟んで再び同じ場所で土器送りをするのですから、この場所に他の集中地点にはない特別の空間的意味があったと想像することができそうです。
第3集中地点ではより深い層位から堀之内式期の深鉢形土器が単独で1個体出土していますから、この付近は加曽利B式土器期以前から土器送りが行われた場所であり、その空間的意味(情報)が加曽利B式土器期に伝わっていた可能性も考えられます。

第4集中地点 小グリッド土器総重量(g)順位
70Kgを越える小グリッドが3あり第3集中地点に次いで土器密集小グリッドが多くなっています。
土器総重量が大きい小グリッドの存在は、それだけ土器送りが熱心に行われたこと表現していると考えますので、第3集中地点に次いで、第4集中地点の土器送りが熱心であったと想定しておきます。

第5集中地点 小グリッド土器総重量(g)順位
40Kgを越える小グリッドが1、それ以外に30Kgをこえるものが3あります。
第4集中地点と比べると土器送り活動がピークを過ぎて衰退し始めたことをイメージできます。

第6集中地点 小グリッド土器総重量(g)順位
土器送り活動は衰退してしまった様子がうかがえます。

第7集中地点 小グリッド土器総重量(g)順位
土器送り活動は衰退してしまった様子がうかがえます。

3 考察
小グリッド第1位土器総重量と集中地点の小グリッド数の2つの指標から土器集中地点の類型区分を試みました。

土器集中地点の区分
(矢印は上流から下流という空間推移及び時間推移をイメージしています。)

7つの土器集中地点をいくつかのグループに分けようとしたのですが、衰退した第6、第7集中地点を一緒にする以外ではグループ化できませんでした。
しかし、土器集中地点の消長の様子がより詳しく理解できるようになりました。
特徴は第1集中地点から第2集中地点に活動が弱まること。第3集中地点になると際だった活動が行われること。第4集中地点になると活動が安定して行われている様子が観察できること。第5集中地点の活動レベルが第1集中地点に似ていることなどです。

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