2017年6月1日木曜日

西根遺跡 水辺祭祀濃密さの空間評価

次のような作業手順で分級評価基準を設定して西根遺跡水辺祭祀の濃密さ空間評価をこころみましたのでメモしておきます。

1 作業手順

小グリッド別土器重量と獣骨重量データを使った遺跡空間評価の試み

2 土器獣骨クロスによる空間評価基準の設定
2-1 土器重量分級

土器重量による小グリッドの分級

土器重量は土器送り祭祀の濃密さを表現していると考えます。
土器重量分布図は2017.05.31記事「西根遺跡 獣骨と土器分布の対照」に掲載しています。

2-2 獣骨重量分級

獣骨重量による小グリッドの分級

獣骨重量は獣肉食祭祀の濃密さを表現していると考えます。
獣骨重量分布図は2017.05.31記事「西根遺跡 獣骨と土器分布の対照」に掲載しています。

2-3 土器重量分級と獣骨重量分級のクロスによる空間評価基準

土器重量分級と獣骨重量分級のクロスによる空間評価基準

西根遺跡では土器送り祭祀と獣肉食祭祀により水辺祭祀が構成されていると考えます。
従って、土器重量分級と獣骨重量分級をクロスさせることにより水辺祭祀の濃密さを評価できると考えます。

3 評価結果
次に空間評価結果を示します。

土器獣骨クロス評価図 集中地点1付近

西岸(右岸)と東岸(左岸)の双方に水辺祭祀の跡が見られますが、主要部は西岸がA、東岸がCと評価され西岸の方が濃密です。

土器獣骨クロス評価図 集中地点2付近

水辺祭祀跡の主要部は西岸東岸ともにDと評価されますが、西岸の方が空間が広くなっています。

土器獣骨クロス評価図 集中地点3付近

水辺祭祀跡の主要部は西岸にのみ分布し、Aと評価されます。

土器獣骨クロス評価図 集中地点4・5付近

第4集中地点では水辺祭祀跡は西岸にのみ分布し、主要部にはA及びBに評価される2つの矩形区画が存在します。
第5集中地点でも水辺祭祀跡主要部は西岸にのみ分布し、Cと評価される矩形区画が存在します。

土器獣骨クロス評価図 集中地点6・7付近

第6集中地点は河道中でありEと評価され、主に東岸側と関わっています。
第7集中地点も河道中でありDと評価され、東岸側と関わっています。

4 考察
・集中地点別に祭祀濃密の強弱がはっきりしていています。第1、第3、第4集中地点では評価Aが存在していて、水辺祭祀が特段に濃密であったと推察できます。第5集中地点では評価C、第2と第7では評価D、第6では評価Eとなっていて、順次水辺祭祀が希薄になっている様子が観察できます。
C14年代測定結果から第1集中地点→第2集中地点→第3集中地点→第4集中地点→第5集中地点→第6集中地点→第7集中地点の順に祭祀が行われたと考えます。
この順に祭祀評価の上位のものが、A→D→A→A→C→E→Dとなるので、この強弱変化は祭祀母地域の活力時間変化を表現している可能性があります。

・西岸(右岸)と東岸(左岸)を比べると西岸の方が水辺祭祀の濃密さがきわめて高くなっています。西岸と東岸の祭祀母地域(母集落群)が異なると考えられるので、母地域(母集落群)の活力の程度が西岸と東岸に反映していると考えます。(西岸は印旛沼右岸集落、東岸は印旛沼左岸集落が対応していると想像しています。)

・第1集中地点と第2集中地点では西岸と東岸に水辺祭祀跡が対になって存在しているので、西岸と東岸の祭祀母地域(母集落群)が当初共同していた様子が浮かび上がります。

・集中地点の空間移動(戸神川上流→下流)は縄文海進クライマックス期以後の継続的印旛沼水面低下に起因した戸神川ミナトの移動に対応していると推察しています。

0 件のコメント:

コメントを投稿