2017年7月12日水曜日

西根遺跡の土器壊れ方観察

西根遺跡では完形に近い機能喪失土器(加曽利B式土器)を持ち込み、祭祀の一環として壊したと想定しています。
6月28日に千葉県教育委員会所蔵縄文時代西根遺跡出土土器10点を閲覧することができました。
この記事ではそのうちの5点について壊れ方を観察してみます。

1 第36図64番土器
・第1集中地点
・深鉢A2b
・口径49.0㎝、底径13.2㎝、器高55.2㎝、重量9.14㎏、容量46.2l
・残存度90%
・被熱

第36図64番土器外観
千葉県教育委員会所蔵

第36図64番土器内面
千葉県教育委員会所蔵

●観察結果
残存度90%にもかかわらず、破片は小さく土器形状を想起させるほどの大きさのものは存在しません。
完形に近い機能喪失土器を人為的に壊したと考えることが最も合理的な出土状況です。

2 第125図377番土器
・第4集中地点
・深鉢G3
・口径29.0㎝、底径10.4㎝、器高29.0㎝、容量3.9l
・残存度70%
・被熱、補修孔

第125図377番土器外観
千葉県教育委員会所蔵

第125図377番土器内面
千葉県教育委員会所蔵

●観察結果
残存度70%ですが、破片は小さく土器形状を想起させるほどの大きさのものは存在しません。
土器形状がほとんど残っている機能喪失土器を人為的に壊して土器形状を失念させたと考えることができます。

3 第128図412番土器
・第4集中地点
・鉢I2
・口径27.4㎝、底径8.4㎝、器高14.1㎝、容量6.3l
・残存度80%

第128図412番土器外観
千葉県教育委員会所蔵

第128図412番土器内面
千葉県教育委員会所蔵

●観察結果
残存度80%ですが、破片は小さく土器形状を想起させるほどの大きさのものは存在しません。
土器形状がほとんど残っている機能喪失土器を人為的に壊して土器形状を失念させたと考えることができます。

4 第135図446番土器
・第4集中地点
・鉢L
・口径[21.1㎝]、底径6.8㎝、器高24.8㎝、容量6.2l
・残存度75%
・被熱

第135図446番土器外観
千葉県教育委員会所蔵

第135図446番土器内面
千葉県教育委員会所蔵

●観察結果
残存度75%で、底面付近の破片が小さく、土器を底から落として壊したように観察できます。
土器形状がほとんど残っている機能喪失土器を人為的に壊したものと考えることができます。

5 第147図504番土器
・第4集中地点
・深鉢B2a
・口径24.6㎝、底径9.2㎝、器高36.3㎝、重量2.65㎏、容量8.2l
・残存度90%
・被熱

第147図504番土器外観
千葉県教育委員会所蔵

第147図504番土器内面
千葉県教育委員会所蔵

●観察結果
残存度90%にもかかわらず、破片は小さく土器形状を想起させるほどの大きさのものは存在しません。
完形に近い機能喪失土器を人為的に壊したと考えることが最も合理的な出土状況です。

6 考察
5点の土器は残存度の割りに土器破片が小さく、土器破片に元の姿を想起させるような大判のものがありません。
この壊れ方から、全てほぼ完形に近い土器を人為的に破壊して元の形が思い出せないようにしたものであると考えます。
元の姿に決して戻れないレベルまで壊すことによって、土器送りを行ったものと考えます。
西根遺跡の土器は全てほぼ完形に近い姿で持ち込まれ、祭祀の場で人為的に徹底して壊されたと考えます。

・西根遺跡の土器は残存度の高いものが多いことから、完形に近い姿で持ち込まれたと考えます。
・西根遺跡の土器の壊れ方が進んでいること(細片になっていること)と破片出土状況(破片が散逸していない状況)から自然的要因(流水や地象)による破壊は考える必要がないと考えます。

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