2017年12月18日月曜日

犬用廃屋墓

大膳野南貝塚 廃屋墓の機能不明柱穴の検討 10

大膳野南貝塚堀之内1式期廃屋墓の機能不明柱穴の検討を竪穴住居毎に順次しています。

10 堀之内1式期 J9竪穴住居
10-1 特徴
J9竪穴住居から周産期人骨が出土しています。貝層のフルイ作業により乳歯片、右下顎骨、左右大腿骨などが出土しています。
一方貝層直下から埋葬された犬骨(2号犬骨)が出土しています。

J9竪穴住居の位置

J9竪穴住居 柱穴分布

2号犬骨出土状況

10-2 検討
10-2-1 J9竪穴住居は犬用廃屋墓(犬墓)
人骨と犬骨の土層断面上の位置関係は次のようになります。

J9竪穴住居 人骨と犬骨の土層断面模式位置
J9竪穴住居床面で犬の埋葬が行われ、その上を貝層で覆いましたが、その途中で周産期遺体を埋葬したという順序が明白です。
J9竪穴住居は犬の埋葬のために使われたものであることが明白な例です。犬埋葬後、その場所に周産期の人遺体も追加して埋葬しました。
空家といっても人が住んだ1軒の住居をまるまる犬の墓にするのですから、その犬がいかにかわいがられていたか伝わってきます。発掘調査報告書では生後半年程度の成長途中の犬であると分析しています。
追加埋葬された周産期人の扱いは犬と比べてはるかに粗末に扱われています。この違いから、犬を埋葬した家族と周産期人を埋葬した家族は異なり、かつその家族の間に相当の社会的身分差(埋葬に関わる権力差)があったことが忍ばれます。犬を埋葬した家族は集落の中で特別上等の身分だったのかもしれません。

追記(2017.12.19)
埋葬された犬は成犬ではない幼犬であるので、つまりまだ猟犬になっていない命であるので、それは命そのものに近いので、竪穴住居に埋葬することに抵抗感が少なかったのかもしれません。
また生まれて間もなく死んだ子ども(周産期死亡の子ども)の命も人になる前の命そのものであるという思考が縄文人にあったのかもしれません。
猟犬や人になりきる前の未分化な命そのものであるので、幼犬を竪穴住居に埋葬したり、そこに周産期死亡人を一緒に埋葬したりすることに抵抗感が少なかったのだと想像します。
つまりJ9廃屋墓は犬用廃屋墓と言い切るのではなく、犬や人になりきる前の未分化命の廃屋墓、命そのものの廃屋墓と捉える方が正確な認識かもしれません。

10-2-2 機能不明柱穴の検討
4本の機能不明柱穴が竪穴住居の屋根を支える補助柱であるか、祭祀性をもつ柱であるか、今後より多数事例を集めて検討することにします。機能不明柱穴の分布が東西方向であることが、北方向を拝む祭壇のように見えますので気になっています。

10-2-3 参考 1号犬骨
大膳野南貝塚では2匹の犬が埋葬されていて、J9竪穴住居埋葬犬(2号)ではない1号犬骨は北貝層から出土しています。
1号犬骨は竪穴住居に含まれない場所から出土しています。発掘調査報告書では10歳未満の成犬であると分析しています。

1号犬骨

1号犬骨出土場所

1号犬骨、2号犬骨出土位置


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