2017年12月21日木曜日

大膳野南貝塚 廃屋墓の機能不明柱穴の検討 まとめ

大膳野南貝塚 廃屋墓の機能不明柱穴の検討 13

大膳野南貝塚後期集落の廃屋墓の学習を行い、廃屋墓の機能不明柱穴に祭壇柱穴が含まれているのではないかという疑問を10軒の人骨出土竪穴住居について確かめてきました。
この10軒の竪穴住居学習をとりまとめて、自分が得た知識(情報)を整理して今後の検討作業の方向をメモすることにします。

この記事では検討項目の抽出と人骨出土竪穴住居の分類を行います。

1 人骨出土竪穴住居の分類と分布
自分なりに人骨出土竪穴住居を分類してみました。

大膳野南貝塚後期集落 人骨出土竪穴住居の分類

また人骨出土竪穴住居の分布は次のようになります。

大膳野南貝塚後期集落 人骨出土竪穴住居

2 人骨出土竪穴住居に関連する主な検討項目
上記基本情報を踏まえ、次のような項目を検討(復習、整理とりまとめ)します。

ア 人骨出土竪穴住居の分類について
・廃屋墓と住居隣接墓
・犬墓にも見られる廃屋墓と住居隣接墓
・床面タイプと覆土層タイプ
・集骨葬と伸展葬・屈伸葬など
・住居内における人骨の場所
・人骨の方向

イ 集骨葬集団が非貝塚集団であること
・「加曽利E4~称名寺古式期」集団と「称名寺~堀之内1古式期」以降集団の差異

ウ 人骨出土竪穴住居の分布
・貝層付近に廃屋墓が集中したのか、貝層付近だけ人骨が残存したのか?
・貝層付近竪穴住居・遺物出土状況と貝層付近以外竪穴住居・遺物出土状況の差異

エ 人骨齧痕の意味
・モガリとミイラ化について

オ 人骨出土竪穴住居と住居重複関係
・廃屋墓は新たな竪穴住居によって切られることが少ない

カ 祭祀柱穴(祭壇)発見の可能性
・機能不明柱穴に祭祀柱の穴が含まれる可能性の判断 

3 人骨出土竪穴住居の分類について
3-1 廃屋墓と住居隣接墓
竪穴住居内の床面や覆土層から遺体が出土するものを廃屋墓と考えました。
J88、J67、J74、J18、J40、J11。
竪穴住居に遺体が置かれて殯(もがり)が行われ、あるいは別の場所で殯が行われた遺体(ミイラ)が持ち込まれ、その後貝殻や混貝土で埋葬した状況が人骨と土層から確認できる遺構です。
竪穴住居における遺体の存在と同時に居住に使われていたことはあり得ないと考えます。
従って居住していない竪穴住居を埋葬の場として使ったという意味で正真正銘の廃屋墓といえるものです。

一方、壁柱より外側の竪穴住居隣接域で張出部に近いところから幼児、周産期人骨が出土する例があり、住居隣接墓として分類しました。
当初いわゆる「床下墓坑」として考えてきましたが厳密には竪穴住居外存在として観察できることから住居隣接墓としました。
J77、J95。
幼児の遺体を竪穴住居に隣接して埋葬し、竪穴住居生活が幼児遺体存在と一体感をもって行えるようにした工夫であると考えます。
この例は廃屋に埋葬したのではありませんから廃屋墓の範疇には入れられません。

参考 J77竪穴住居の検討

3-2 犬墓にも見られる廃屋墓と住居隣接墓
人墓に廃屋墓と住居隣接墓という区分があることが判明しましたが、それと同じ現象が犬墓にみられます。大変興味深い現象です。
J9は犬の廃屋墓です。人が使った竪穴住居を犬の埋葬のために使っています。
一方次の例(1号犬骨)はJ43竪穴住居に付属する犬の住居隣接墓です。

参考 J9竪穴住居

参考 J43竪穴住居

3-3 床面タイプと覆土層タイプ
廃屋墓でも人骨が床面から出土するものと、覆土層から出土するものがあります。
床面から人骨が出土する竪穴住居 J88、J67、J74、J18、J40、J11
覆土層から人骨が出土する竪穴住居 J74、J79、J9
床面から人骨が出土する状況は、廃屋を最初から墓として利用する状況が見えますから、いわば手順を踏んだ正式の埋葬が行われた例であると考えます。
一方、覆土層から出土する例は竪穴住居廃絶の際に「ついでに」あるいは「急いで」埋葬したおざなりな埋葬であると考えます。

3-4 集骨葬と伸展葬・屈伸葬など
人骨が白骨化した後、骨を集めて一定の形をつくり(集骨)それを埋葬する集骨葬と殯でできるミイラの形をいじらないでそのままの形で埋葬する全く異なる2種の葬送が見られます。
集骨葬 J88
殯でできるミイラの埋葬 J88以外全て
集骨葬と殯でできるミイラの埋葬はその形式が全く異なり、他の条件も考慮するとう集団が異なると考えました。(別途検討予定)

J88竪穴住居出土 集骨された人骨

殯でできるミイラの形状や修飾にはつぎのものが観察できました。
伸展葬
屈伸葬
甕被り葬

3-5 住居内における人骨の場所
住居中央から出土する人骨は手厚く埋葬された可能性が高く、住居端の壁柱付近から出土する人骨は別の場所でミイラ化したものが住居壁の上から持ち込まれた(投げ込まれた)可能性があり、相対的な意味で埋葬方法の丁寧さランクが低いと考えます。

J18竪穴住居の例
中央の甕被り幼児は手厚く扱われ、端の壮年女性は住居壁から持ち込まれた(落とされた)可能性がある。

3-6 人骨の方向
竪穴住居のなかでの人骨の置かれた状況から、人骨の指す方向に意味がある可能性があるものがあります。
例 J40

参考
参考
 

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