2018年2月25日日曜日

獣骨数統計の再集計

大膳野南貝塚後期集落の出土物による竪穴住居検討 30

これまでの直近2記事で、「後世の削平」影響を加味して竪穴住居出土中テン箱数と石器数の再集計して、覆土層有竪穴住居を対象とすると、漆喰貝層有竪穴住居(漁民家族)の数値と漆喰貝層無竪穴住居(非漁民家族)の数値の差が縮まることなどから、漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居の見かけの数値に拘泥しないで、その2者の間に有意な差はないかもしれないと考察してきました。
この記事ではいささか機械的ですが上記と同じ作業を獣骨出土数に関して行い、獣骨出土数の特性を検討します。
なお、2018.01.09記事「獣骨出土数と漆喰貝層有無別竪穴住居との関係」で最初の検討を行っています。

1 「後世の削平」影響を加味しないこれまでの獣骨数統計

漆喰貝層有無別獣骨数(全竪穴住居対象)
漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居では獣骨数が約380倍になります。
獣骨は土器や石器と異なり通常は土層中で消失するものですが、貝層に覆われれば残存する可能性が生まれるという特性がありますのでこのような結果になったと考えることができます。
「後世の削平」云々の前に覆土層に貝層が含まれているか否かが獣骨数出土の決定的要因であると直観できます。

漆喰貝層有無別竪穴住居分布(全竪穴住居対象)

2 「後世の削平」影響を加味した獣骨数統計(再集計)

漆喰貝層有無別獣骨数(覆土層有竪穴住居対象)
漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居では獣骨数が約550倍となり、1とくらべてその差が大幅に拡大します。

漆喰貝層有無別竪穴住居分布(覆土層有竪穴住居対象)

3 考察
「後世の削平」の影響を取り除くと獣骨数は漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居の間で開きが大幅に拡大します。
つまり、「後世の削平」がなければ獣骨数は実際の出土状況よりも漆喰貝層有竪穴住居でより大きくなることを意味します。
貝層が存在しなくても遺構に残る土器数(中テン箱数を関連指標とする)、石器数とは真逆の結果となりました。
この結果から、「後世の削平」以前の本来の遺跡では漆喰貝層有竪穴住居にもっと沢山の獣骨が含まれ、漆喰貝層無竪穴住居には最初からほとんど獣骨が含まれなかったという想定の蓋然性が極めて高いと考えることができます。

なお、この考察は漆喰貝層無竪穴住居が廃絶した当初に住居内に獣骨がほとんど残されなかったことを意味しません。漆喰貝層無竪穴住居でもその廃絶祭祀や廃屋墓利用が行われ、獣骨が多量に(漆喰貝層有竪穴住居と同じくらいに多量に)持ち込まれたことを否定できる情報はありません。
土器や石器出土状況から類推すると漆喰貝層無竪穴住居にも漆喰貝層有竪穴住居とおなじくらい獣骨が持ち込まれたと想定することが、見かけの統計とはかけ離れますが、合理的であると考えます。

漆喰貝層有竪穴住居で獣骨数が特段に多い竪穴住居の多くは廃屋墓(発掘調査報告書では廃屋墓と認定していないが、ヒト骨が出土するものを含む)であったことが既に判っています。
2018.01.12記事「獣骨多量出土竪穴住居は廃屋墓」参照
この検討から、漆喰貝層無竪穴住居でも同様の状況があったと想定しますが、その直接証拠はほとんど消えてしまったと想像します。

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