2018年3月27日火曜日

フラスコ形土坑からヒト骨が出土した意義

大膳野南貝塚後期集落 土坑の再検討 14

ヒト骨出土土坑が存在しますのでその意義について検討します。

2018.03.20記事「私家版土坑データベースの作成 大膳野南貝塚」でたまたま382土坑を例として表現レイアウトを説明しました。この時この土坑にヒト骨出土記述があることに気が付きました。
調べると264基全土坑のうちヒト骨出土記述はこの土坑だけです。
以下、この土坑からヒト骨が出土した意義を検討します。

1 発掘調査報告書の382土坑記載

記述

土層及び平面断面 追記塗色
貝層は最下部の土層を含めて下部層と最上部を含めて上部層に分かれて分布します。
獣骨は最上層付近から出土します。
ヒト骨は獣骨とともに出土したと考えられますから、土坑内部覆土層の最上部付近から出土したと考えられます。

出土物

2 382土坑の位置

382土坑の位置
382土坑は直近の屋外漆喰炉から8mの距離にあります。

3 ヒト骨出土の意義
382土坑はフラスコ形特大土坑であり、堀之内1式期集落の主要な食物貯蔵庫の1つであったと考えられます。
食物貯蔵庫として機能していた時期には屋外漆喰炉機能と連動していた可能性が濃厚であると考えます。
食物貯蔵庫としての機能が終焉してから土坑廃絶祭祀が行われ貝層が投げ込まれる、あるいは送り場となり貝層が投げ込まれたと考えます。
土坑が完全に埋まる直前には獣肉食祭祀があり獣骨が堆積する、あるいは狩猟獣の送り場として利用され獣骨が堆積したと考えます。
このような状況の下でヒト骨が埋まった理由は次の2つのうち1つであると考えます。
1 覆土層への埋葬
竪穴住居でも床面に人体を置いて埋葬するだけでなく、覆土層中に埋葬する例があります。(J9、J79竪穴住居)
J79竪穴住居の例では住居縁近くから人骨が出土していて竪穴の上から竪穴に落とされた(置かれた)ような印象を受け、埋葬としての丁寧さはあまり感じられません。
竪穴住居や土坑などは廃絶すると送り場として利用されることが多いので、簡易的な埋葬の場としても利用されたと考えます。
なお、竪穴住居床面に埋葬された人骨のほとんどに齧歯痕があり、殯期間に人体がミイラ化するときにネズミに齧られたと考えられます。
382土坑からネズミ骨6点が出土していますが、このネズミは覆土層の上に置かれた人体がすぐに土で埋められるのではなく、殯(もがり)が行われ、ミイラ化する時間があり、その時ネズミが沢山集まり、土で埋葬するときに一緒に埋められたのかもしれません。
埋葬のために土坑を新規に掘るという正規土坑墓の他に、廃用食料貯蔵用土坑を埋葬の場としても活用するということは十分に考えられることです。

2 人肉食の可能性
人肉食の風習があり、食べかすのヒト骨を獣骨と一緒に土坑に投げた(送った)可能性を否定できる証拠がありません。
近代北海道アイヌの一部には冬季食糧不足時期に人肉食をした事例が伝わっていますから、そうした風習が縄文人由来である可能性も考えられます。

0 件のコメント:

コメントを投稿