2018年4月10日火曜日

「縄文トイレの可能性のある土坑」の属性 予察検討

大膳野南貝塚後期集落 土坑の再検討 22

2018.04.06記事「縄文トイレの可能性のある土坑 kj法分析途中経過メモ」で、土坑断面図kj法分析において「縄文トイレの可能性のある土坑」を作業仮説的に仮に抽出してみたことをメモしました。
kj法分析自体がまだ途中ですから「縄文トイレの可能性のある土坑」といってもまだまだあやふやなものであることは自分が一番良く分かっています。
しかし、kj法をいかに精緻にすすめても、それは(虚弱な考古知識に基づく)自分の分類に関する思考をデータに投影したものですから、満足できる土坑分類に到達できる保証はありません。
むしろ、「縄文トイレの可能性のある土坑」というデータから自分に届けられたように感じる分類結果をある程度吟味して、その問題点を把握し、これから進めるkj法分析に活かすことが重要であると考えます。
そこで、「縄文トイレの可能性のある土坑」という抽出結果(分類結果)がどのような問題があるのか、どの程度蓋然性があるのか、検討してみました。あやふやさがどの程度なのか、自分自身で確認評価してみたということです。

1 「縄文トイレの可能性のある土坑」抽出結果(再掲)

「縄文トイレの可能性のある土坑」抽出結果 ピンク塗色したもの 264基中の38基

2 「縄文トイレの可能性のある土坑」の時期

「縄文トイレの可能性のある土坑」の時期
詳細な時期が読み取れる土器が出土する土坑は38基中6基であり、その割合は約16%にすぎません。その割合の少なさは後期全体の割合約38%の半分以下です。
「縄文トイレの可能性のある土坑」は時期が判明するほどの大きさのある土器片がほとんど出土しないことからこのようになります。それは土坑が送り場として利用されたり、あるいはその土坑自体の廃絶祭祀がほとんど行われていないからだと考えられます。
「縄文トイレの可能性のある土坑」の時期がほとんど判明しないことが縄文トイレの可能性があることの蓋然性を高めていると考えます。

●参考 「縄文トイレの可能性のある土坑」の出土物
・出土物なし…15
・土器細片微量出土…18
・土器細片微量出土+獣骨出土…1
・土器細片微量出土+石器出土…3
・石器のみ出土…1

参考 後期全土坑の時期

3 「縄文トイレの可能性のある土坑」の覆土層
38基土坑の覆土層は全て褐色~暗褐色~黒褐色土です。
このうち2基の土層に破砕貝が含まれています。土層に破砕貝が含まれる土坑は、その土坑が送り場として利用されたり、土坑廃絶時に祭祀が行われたことを物語りますから、破砕貝土層のある土坑が約5%であるという事実は「縄文トイレの可能性のある土坑」が送り場や廃絶祭祀のあった土坑ではないこと表現していて、トイレ利用という想定と整合的です。

4 「縄文トイレの可能性のある土坑」の体積
土坑をその体積で特大、大、中、小という4区分すると、「縄文トイレの可能性のある土坑」は3基が中土坑、35基が小土坑となります。
「縄文トイレの可能性のある土坑」はトイレとして利用できる大きさの範疇に入っています。

参考 土坑体積の類型区分

5 「縄文トイレの可能性のある土坑」とその他指標との関連
「縄文トイレの可能性のある土坑」にはフラスコ形土坑、円筒形土坑、周辺小ピット土坑は含まれていません。

6 「縄文トイレの可能性のある土坑」の空間分布

「縄文トイレの可能性のある土坑」の空間分布 赤丸が「縄文トイレの可能性のある土坑」
直観的には、竪穴住居の密集域に立地する「縄文トイレの可能性のある土坑」は例外的であり、ほとんどが竪穴住居から離れた場所に立地しているように観察できます。大局的には赤丸のように縄文トイレが存在していたと考えても不都合は生まれません。
なお、「縄文トイレの可能性のある土坑」数/竪穴住居軒数=38/93=0.4となり、計算上は竪穴住居2~3軒につきトイレが1つあったことになります。

7 考察
7-1 「縄文トイレの可能性のある土坑」の大局的蓋然性の確認
「縄文トイレの可能性のある土坑」として抽出したものの中に相当数の縄文トイレが含まれていると確信を深めることができました。
逆に表現すると、「縄文トイレの可能性のある土坑」として抽出したものの中に縄文トイレではないものがある可能性と、抽出しなかった残りの土坑の中に縄文トイレが含まれている可能性があるということです。

7-2 kj法で扱う因子を再検討して確定し、再度最初からkj法をやりなおす必要がある
現在行っているkj法で扱っている因子は主に断面形状ですが、純粋にそれだけではなく断面図上で表現されている貝層や規模なども半ば無意識的に因子に含めています。
kj法で扱う因子があやふやである側面があるために、上記検討で示したように「縄文トイレの可能性のある土坑」に貝層出土土坑や石器出土土坑が出てきているのかもしれません。
そこで、これから継続するkj法では断面形状、規模、貝層・漆喰有無、出土物有無を因子に入れて行うこととします。実作業的にはkj法をやりなおすことになります。

なお、kj法はその作業のなかからヒントを汲みだすために実施している活動ですから、自分の認識が進めば何回も同じような作業を反復することになると思います。またその結果(kj法画面)は「成果」にするようなものではないと考えます。「成果」はkj法で浮かび上がった多数因子を利用して将来行う多変量統計分析結果であるとイメージしています。

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