私の散歩論

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2023年8月29日火曜日

3D座標が判明した土器破片の型式別数と分布特徴

 Number and distribution characteristics of pottery fragments for which 3D coordinates are known


Among the fragments of pottery unearthed from the shell layer on the northern slope of the Ariyoshi Kita Shell Mound, I observed the number of pottery fragments for which 3D coordinates were known and their distribution characteristics. The number and distribution characteristics are different between Kasori EII middle stage and before.


有吉北貝塚北斜面貝層から出土した土器破片のうち、3D座標が判明した土器破片の型式別数とその分布特徴を観察しました。加曽利EⅡ式中段階以降とそれ以前で数と分布特徴が異なります。

1 3D座標が判明した土器破片の型式別数


3D座標判明土器破片の型式別数(グラフ)


3D座標判明土器破片の型式別数(表)

・このグラフは北斜面貝層の型式別(=時期別)利用強弱を表現していると考えます。早期土器はすくないので何とも言えませんが、前期土器の時代から漁労が行われ、斜面貝層が形成されていたと推察します。これまでの検討で、前期土器とその時代の貝層の存在が資料分析から抽出できそうだという印象を持っています。

・中峠式土器数が加曽利EⅡ式新段階土器数より多いことは注目に値します。中峠式期に北斜面貝層利用が活発であったことを表現しています。

・加曽利EⅡ式中段階土器と中~新段階土器の出土が爆発的に増えています。なぜ爆発的に増えたのか、その理由の検討は大きな学習テーマとなります。

2 土器破片の型式別分布特徴

2-1 型式別平面分布


早期土器・前期土器平面分布図


阿玉台式土器平面分布図


中峠式式土器平面分布図


加曽利EⅠ式土器平面分布図


加曽利EⅡ式古段階土器平面分布図


加曽利EⅡ式中段階土器平面分布図


加曽利EⅡ式中~新段階土器平面分布図


加曽利EⅡ式新段階土器平面分布図

2-2 貝層区分


貝層区分

北斜面貝層ではガリー谷頭から投棄されてガリー流路で運ばれる土器と左岸から斜面に投棄される土器が観察できるので、貝層をガリー谷頭急斜面貝層、ガリー運搬堆積層、斜面貝層に区分して検討しました。ガリー谷頭急斜面貝層とガリー運搬堆積層は連続するものですが、ここでは便宜的に第3断面を境に区分しました。

2-3 土器破片の貝層区分別割合


土器破片の貝層区分別割合(表)


土器破片の斜面貝層出土割合(グラフ)

前期土器から加曽利EⅡ式古段階土器までは斜面貝層出土の割合が大きく、加曽利EⅡ式中段階以降ではその割合が小さいことが判明しました。これは、前期土器から加曽利EⅡ式古段階土器まではガリー谷頭から投棄だけでなく、左岸から斜面に投棄される土器が一定数存在していたのに、加曽利EⅡ式中段階土器以降はほぼガリー谷頭からの投棄に限られるようになったことを表現しています。つまり土器投棄活動の意義が変化した可能性を暗示しています。

土器投棄活動が祭祀活動であったと考えると、前期土器から加曽利EⅡ式古段階土器までは自分の好みの場所で投棄している場合もあり、集落統制力(祭祀統制力)は弱かったと考えます。しかし、加曽利EⅡ式中段階土器以降は投棄場所(祭祀場所)規制が厳しくなり、集落統制力(祭祀統制力)が強化されていたのかもしれません。加曽利EⅡ式新段階土器を最後に集落が消滅に近い衰退を迎えることと関連しているのかもしれません。


2023年8月27日日曜日

崩落層と斜面貝層の推定境界面と加曽利EⅡ式新段階土器との関係3Dモデル

 3D model of the relationship between the estimated interface between the collapsed layer and the sloping shell layer and the Kasori EII new stage pottery


The Kasori EII type new stage is the final stage of pottery dumping in the shell layer on the northern slope of the Ariyoshi Kita Shell Mound. It also reduces the number of discards.


有吉北貝塚北斜面貝層における土器投棄の終期が加曽利EⅡ式新段階期となります。投棄数も減少します。

1 崩落層と斜面貝層の推定境界面と加曽利EⅡ式新段階土器との関係3Dモデル

崩落層と斜面貝層の推定境界面と加曽利EⅡ式新段階土器との関係3Dモデル

崩落層と斜面貝層の推定境界面:カラーグラデーション等高縞模様表現

貝層断面図:4番断面、7番断面、11番断面

加曽利EⅡ式中~新段階土器:赤CUBE(52)


崩落層と斜面貝層の推定境界面と加曽利EⅡ式新段階土器との関係3Dモデル画像


崩落層と斜面貝層の推定境界面と加曽利EⅡ式新段階土器との関係3Dモデル動画

2 観察


観察結果

土器破片はガリー谷頭急斜面とガリー運搬堆積層にのみ分布します。斜面貝層からの出土はありません。土器はガリー谷頭から投棄され、その破片が下流のガリー流路まで運搬され堆積したものと考えます。


2023年8月25日金曜日

有吉北貝塚北斜面貝層 加曽利EⅡ式中~新段階294番土器の破片3D分布モデル

 North Slope Shell Layer of Ariyoshi Kita Shell Mound


3D distribution model of fragments of Kasori EII type middle to new stage No. 294 pottery


I made a 3D model of the fragments of the Kasori EII type middle to new stage No. 294 pottery excavated from the north slope shell layer of the Ariyoshi Kita Shell Mound. This pottery is the largest pottery in the Ariyoshi Kita Shell Mound, and at the same time, fragments are distributed from the gully valley head to the most downstream. It is considered as a typical example of pottery fragment distribution.


有吉北貝塚北斜面貝層の加曽利EⅡ式中~新段階294番土器の破片3Dモデルを作成しました。この土器は有吉北貝塚最大級土器で、同時にガリー谷頭から最下流まで破片が分布します。土器破片分布の典型的事例と考えます。

1 有吉北貝塚北斜面貝層 加曽利EⅡ式中~新段階294番土器の破片3D分布モデル 1

有吉北貝塚北斜面貝層 加曽利EⅡ式中~新段階294番土器の破片3D分布モデル1

崩落層と斜面貝層の推定境界面:カラーグラデーション等高縞模様表現

貝層断面図:4番断面、7番断面、11番断面

加曽利EⅡ式中~段階294番土器:赤UBE(19)


加曽利EⅡ式中~段階294番土器(2023.04.12撮影、於千葉県教育庁森宮分室)


有吉北貝塚北斜面貝層 加曽利EⅡ式中~新段階294番土器の破片3D分布モデル1画像


有吉北貝塚北斜面貝層 加曽利EⅡ式中~新段階294番土器の破片3D分布モデル1動画

2 有吉北貝塚北斜面貝層 加曽利EⅡ式中~新段階294番土器の破片3D分布モデル 2

有吉北貝塚北斜面貝層 加曽利EⅡ式中~新段階294番土器の破片3D分布モデル 2

ガリー侵食地形:カラーグラデーション等高縞模様表現

崩落層と斜面貝層の推定境界面:カラーグラデーション等高縞模様表現

貝層断面図:4番断面、7番断面、11番断面

加曽利EⅡ式中~段階294番土器:赤UBE(19)


有吉北貝塚北斜面貝層 加曽利EⅡ式中~新段階294番土器の破片3D分布モデル2画像

3 観察


正面オルソ投影断面図


観察結果1


観察結果2

294番土器の投棄破壊とその後の流下状況を正面オルソ投影断面図で推察すると観察結果1のようになると考えます。294番土器は谷頭上から投棄され、その破片群は谷頭直下の狭窄部で集中堆積し、時間が継続する中で徐々に下流に運搬されたと考えます。時間継続の中でガリー下流流路の堆積が進行したたため、下流では時間が経過するたびに294番土器破片が標高の高い場所に埋もれたと考えられます。

294番土器が谷頭から投棄された場所は観察結果2に図示する場所であると想定できます。


2023年8月19日土曜日

崩落層と斜面貝層の推定境界面と加曽利EⅡ式中~新段階土器との関係3Dモデル

 A 3D model of the relationship between the estimated interface between the collapsed layer and the sloping shell layer and Kasori EII medium-to-new stage pottery


From the mid-stage of Kasori EII type, the situation of rapid increase in pottery dumping will continue. As in the middle stage of the Kasori EII type, the pottery was dumped on the steep slope of the gully valley at this stage, and most of it was deposited in the gully transport sediment layer.


加曽利EⅡ式中段階から引き続き、土器投棄急増の状況が継続します。加曽利EⅡ式中段階と同様に中~新段階でも土器はガリー谷頭急斜面で投棄され、ガリー運搬堆積層に堆積するものがほとんです。

1 崩落層と斜面貝層の推定境界面と加曽利EⅡ式中~新段階土器との関係3Dモデル

崩落層と斜面貝層の推定境界面と加曽利EⅡ式中~新段階土器との関係3Dモデル

崩落層と斜面貝層の推定境界面:カラーグラデーション等高縞模様表現

貝層断面図:4番断面、7番断面、11番断面

加曽利EⅡ式中~新段階土器:赤CUBE(216)


崩落層と斜面貝層の推定境界面と加曽利EⅡ式中~新段階土器との関係3Dモデル画像1


崩落層と斜面貝層の推定境界面と加曽利EⅡ式中~新段階土器との関係3Dモデル画像2


崩落層と斜面貝層の推定境界面と加曽利EⅡ式中~新段階土器との関係3Dモデル動画

2 観察


観察結果1


観察結果2

加曽利EⅡ式中段階から引き続き、土器投棄急増の状況が継続します。加曽利EⅡ式中段階と同様に中~新段階でも土器はガリー谷頭急斜面で投棄され、ガリー運搬堆積層に堆積するものがほとんです。

土器はガリー谷頭から投棄され、ガリー谷頭急斜面に「引っかかって」堆積するものもあれば、その直下のガリー流路に堆積するものもあれば、さらに下流に運搬されたものもあるように観察できます。



有吉北貝塚北斜面貝層 加曽利EⅡ式中段階201番土器の破片3D分布モデル

 Ariyoshi Kita Shell Mound North Slope Shell Layer

Kasori EII Middle Stage No. 201 Pottery Fragment 3D Distribution Model


I created a 3D model of the Kasori EII middle stage No. 201 pottery fragment from the Ariyoshi Kita Shell Mound North Slope Shell Layer. This pottery was dumped from two places: the gully valley head and another slope. I imagine that this is a special case where the same pottery was used in two pottery throwing rituals.


有吉北貝塚北斜面貝層の加曽利EⅡ式中段階201番土器の破片3Dモデルを作成しました。この土器はガリー谷頭とそれとは別斜面の2ヶ所から投棄されています。同一土器が2回の土器投棄祭祀で使われた特例と想像します。

1 有吉北貝塚北斜面貝層 加曽利EⅡ式中段階201番土器の破片3D分布モデル

有吉北貝塚北斜面貝層 加曽利EⅡ式中段階201番土器の破片3D分布モデル

崩落層と斜面貝層の推定境界面:カラーグラデーション等高縞模様表現

貝層断面図:4番断面、7番断面、11番断面

加曽利EⅡ式中段階201番土器:赤CUBE(5)


加曽利EⅡ式中段階201番土器(発掘調査報告書から引用)

曽利式系の模様となっています。


有吉北貝塚北斜面貝層 加曽利EⅡ式中段階201番土器の破片3D分布モデル画像


有吉北貝塚北斜面貝層 加曽利EⅡ式中段階201番土器の破片3D分布モデル動画

2 観察


観察結果

この土器はガリー谷頭とガリー左岸斜面の2つの場所から投棄されている特例とも言える土器です。

前期土器のうち3点は南斜面貝層と北斜面貝層の2つの貝層から出土して接合されているものがありますから、201番土器はその前期土器と共通した性格を帯びていると想定します。

想像の域を出ませんが、201番土器は異なる2回の土器投棄祭祀で使われたのだと考えます。通常は廃用土器による土器投棄祭祀はガリー谷頭から1回のみ行われるところ、201番土器だけ、通常土器投棄祭祀のほか、別趣旨の祭祀も場所を変えて行われたと空想しておきます。土器模様が曽利式系であることと何か関係するのでしょうか?今後の検討を楽しみたいと思います。


2023年8月17日木曜日

仮想デスクトップ活用とBlenderワークススペース分離

 Virtual Desktop Utilization and Blender Workspace Separation


Over the past month or so, I have noticed the significance of Windows 11 virtual desktops and have been working on their utilization. Virtual desktop 3 uses 4 monitors exclusively for Blender, making Blender work super efficient.


この1ヵ月程、Windows11仮想デスクトップの意義に気が付き、その活用に取組んでいます。仮想デスクトップ3ではモニター4画面をBlender専用で使い、Blender作業が超効率化しました。

1 Windows11の仮想デスクトップ機能

いまさらですが、Windows11の仮想デスクトップ機能に目覚めました。遅すぎる目覚めです。

数年前からモニター4枚(4画面)でパソコン作業をしていて、とても効率的作業環境にあります。しかし、最近、モニター8枚(8画面)を使っている方の写真や使い勝手の記事を見て、現状4画面で満足していなくてもよいことに気が付きました。もっと画面を増やしてさらなる学習作業の効率化を目指したいと考えます。

そんな時、仮想デスクトップ機能により疑似的に画面増設出来ることを知り、試してみました。とても素晴らしい結果が生まれました。


メインデスクトップ1


仮想デスクトップ2


仮想デスクトップ3

・仮想デスクトップは幾つでも作ることができます。

・仮想デスクトップの背景画像を異なる画像にすることにより識別しやすくなります。

・仮想デスクトップの移動はCtrl+Win+矢印で手際よく移動できます。

・エクスプローラーやブラウザやソフトウインドウ(画面)はデスクトップ間を移動したり、全てのデスクトップで表示したりできます。

2 Blenderのワースペース分離と4画面専用利用

現在の自分の学習では毎日Blenderを使っていますが、多数のワークスペースを使うために、なにか手狭感があります。そこで、仮想デスクトップ3を活用して、Blenderの使い勝手をよくするために、各ワークスペースを分離して3画面に配置しました。また右端縦長画面にはBlender関連フォルダー(エクスプローラー)画面を配置しました。これによりそれぞれのワークスペースにおける作業空間が拡がり、手狭感が和らぎ、イキイキと作業出来るようになりました。新しいワークスペースを増設するにしても余裕があります。4画面をBlender関連で専用するという発想は仮想デスクトップ機能が無ければ到底生まれません。


Blenderを3画面に配置した仮想デスクトップ3


実際のモニターの様子

3 Photoshop、Illustratorの4画面専用利用

仮想デスクトップ2ではPhotoshop及びIllustratorについて、機能ウインドウ多数とメインウインドウの画面を分けて表示し、使い勝手を向上させています。

近々新たな仮想デスクトップを設け、Premiere proやQGISについてもそれぞれ機能ウインドウとメインウインドウの画面をわけて表示して、使い勝手を向上させる予定です。


2023年8月15日火曜日

有吉北貝塚北斜面貝層 加曽利EⅡ式中段階218番土器の破片3D分布モデル

 Ariyoshi Kita Shell Mound North Slope Shell Layer Kasori EII Middle Stage No. 218 Pottery Fragment 3D Distribution Model


We created a 3D distribution model of fragments of Kasori EII medium stage No. 218 pottery on the northern slope shell layer of Ariyoshi Kita Shell Mound. It is distributed in the gully-transported sedimentary layer from the steep slope of the gully valley head to the downstream, and it can be inferred that it was transported by several gully water flows.


有吉北貝塚北斜面貝層の加曽利EⅡ式中段階218番土器の破片3D分布モデルを作成しました。ガリー谷頭部急斜面から下流までのガリー運搬堆積層に分布していて、何回かのガリー水流で運ばれた様子が推察できます。

1 有吉北貝塚北斜面貝層 加曽利EⅡ式中段階218番土器の破片3D分布モデル

有吉北貝塚北斜面貝層 加曽利EⅡ式中段階218番土器の破片3D分布モデル

崩落層と斜面貝層の推定境界面:カラーグラデーション等高縞模様表現

貝層断面図:4番断面、7番断面、11番断面

加曽利EⅡ式中段階218番土器:赤CUBE(19)


加曽利EⅡ式中段階218番土器(発掘調査報告書から引用)


有吉北貝塚北斜面貝層 加曽利EⅡ式中段階218番土器の破片3D分布モデル画像1


有吉北貝塚北斜面貝層 加曽利EⅡ式中段階218番土器の破片3D分布モデル画像2


有吉北貝塚北斜面貝層 加曽利EⅡ式中段階218番土器の破片3D分布モデル動画

2 観察


観察結果1


観察結果2

218番土器はガリー谷頭急斜面に投棄されてから、当初は少なくても時期の異なる2回のガリー水流(年に数回発生する洪水流)で運搬されたことが判ります。それは4番断面付近で貝層の上下異なる層位に同じ218番土器破片が出土することから確認できます。218番土器はその後も時期の異なる数回以上のガリー水流で徐々に下流に運ばれ、順次出土場所に堆積していったと推測できます。

この事象により、同型式土器破片が同じ断面の上下層位から出土する理由を一般的な意味で解釈することができることになります。



崩落層と斜面貝層の推定境界面と加曽利EⅡ式中段階土器との関係3Dモデル

 3D model of the relationship between the estimated interface between the collapsed layer and the sloping shell layer and the Kasori EII middle stage pottery


In the Ariyoshi Kita Shell Mound North Slope Shell Layer, the amount of pottery discarded increases sharply in the middle stage of the Kasori EII type. Most of them are distributed continuously from the gully valley steep slope to the gully transport sedimentary layer. The distribution principle of the shell layer and the pottery is different.


有吉北貝塚北斜面貝層では加曽利EⅡ式中段階になると土器投棄が一挙に急増します。ほとんどがガリー谷頭急斜面からガリー運搬堆積層に連続して分布します。貝層と土器の分布原理が異なります。

1 崩落層と斜面貝層の推定境界面と加曽利EⅡ式中段階土器との関係3Dモデル

有吉北貝塚北斜面貝層 崩落層と斜面貝層の推定境界面と加曽利EⅡ式中段階土器との関係3Dモデル

崩落層と斜面貝層の推定境界面:カラーグラデーション等高縞模様表現

貝層断面図:4番断面、7番断面、11番断面

加曽利EⅡ式中段階土器:赤CUBE(243)


崩落層と斜面貝層の推定境界面と加曽利EⅡ式中段階土器との関係3Dモデル画像1


崩落層と斜面貝層の推定境界面と加曽利EⅡ式中段階土器との関係3Dモデル画像2


有吉北貝塚北斜面貝層 崩落層と斜面貝層の推定境界面と加曽利EⅡ式中段階土器との関係3Dモデル動画

2 観察


観察結果1


観察結果2

加曽利EⅡ式中段階になると土器投棄が一挙に急増します。ほとんどがガリー谷頭急斜面からガリー運搬堆積層に連続して分布します。EⅡ式古段階までのようにガリー谷頭急斜面とガリー運搬堆積層の分布を区分することはできません。この分布様子は、縄文人が土器をガリー谷頭から谷底に向かって投棄し、土器破片がガリー水流(年に数回発生を想定)で下流に運搬された様子が表現されていると想定できます。

斜面貝層分布が4点、崩落層分布が3点あります。崩落層分布は崩落層の最上部ですから、資料精度を考えると斜面貝層出土と考えてもよいかもしれません。

右岸土層分布が5点あります。

異常データが1点あります。手元データでは確認出来ませんが、恐らく発掘調査報告書グラフ作成ミスだと考えます。

土器破片数は、ガリー谷頭急斜面~ガリー運搬堆積層分布が230点、それ以外の斜面貝層等分布が13点あり、その比は約18:1になり、ガリー谷頭急斜面~ガリー運搬堆積層分布が圧倒します。つまり、土器はほとんどがガリー谷頭から投棄されたということになります。一方貝殻投棄は斜面に投棄され、斜面貝層として面的に堆積していますから、貝殻投棄と土器投棄が全く別の原理で実施されたことが判ります。この原理の違いは北斜面貝層の構造を解く上で重要なポイントになるに違いありません。

さらに、他の遺物の分布原理がどのようなものであるのか、気になります。


2023年8月13日日曜日

崩落層と斜面貝層の推定境界面と加曽利EⅡ式古段階土器との関係3Dモデル

 3D model of the relationship between the estimated interface between the collapsed layer and the sloping shell layer and the Kasori EII type old stage pottery


Kasori EII style old-stage pottery has been unearthed little since EI. The same pottery fragments were unearthed from the steep valley slope and the downstream sedimentary layer 28m away.


加曽利EⅡ式古段階土器はEⅠから引き続いて出土は少ないです。同一土器破片が谷頭急斜面と28m離れた下流堆積層から出土しています。

1 参考 加曽利EⅡ式土器の区分と3D座標データ数


有吉北貝塚北斜面貝層 加曽利EⅡ式土器の区分と3D座標データ数

加曽利EⅡ式土器の分類は発掘調査報告書によるものではなく、千葉市埋蔵文化財調査センター所長西野雅人様提供資料によるものです。

加曽利EⅡ式中段階土器と中~新段階土器が多量に集中投棄されているのが特徴です。この記事では古段階を扱いますが、古段階の土器投棄は加曽利EⅠ式と同じように低調です。

2 崩落層と斜面貝層の推定境界面と加曽利EⅡ式古段階土器との関係3Dモデル

有吉北貝塚北斜面貝層 崩落層と斜面貝層の推定境界面と加曽利EⅡ式古段階土器との関係3Dモデル

崩落層と斜面貝層の推定境界面:カラーグラデーション等高縞模様表現

貝層断面図:4番断面、7番断面、11番断面

加曽利EⅡ式古段階土器:赤CUBE(19)


崩落層と斜面貝層の推定境界面と加曽利EⅡ式古段階土器との関係3Dモデル画像


有吉北貝塚北斜面貝層 崩落層と斜面貝層の推定境界面と加曽利EⅡ式古段階土器との関係3Dモデル動画

3 観察


観察結果

崩落層からの出土はありません。加曽利EⅡ式古段階頃までには崩落層はすべて斜面貝層に覆われ、投棄土器が崩落層に紛れ込むような環境は既に存在しなかったと推定します。

ガリー谷頭急斜面から3点、斜面貝層から3点、ガリー運搬堆積層から13点の土器が出土します。

4 加曽利EⅡ式古段階187番土器の分布


加曽利EⅡ式古段階187番土器

発掘調査報告書から引用


加曽利EⅡ式古段階187番土器の分布

加曽利EⅡ式古段階187番土器の破片2点はガリー谷頭急斜面とかなり離れたガリー運搬堆積層から出土しています。2点の直線距離は28.6m、比高は6.8mとなります。187番土器は台地平坦面近くからガリ谷頭急斜面に向かって投げ込まれ、その破片の1つが急斜面に引っかかって残り、破片の1つは年に数回発生するガリー水流の繰り返しで下流に運ばれ、出土地点で堆積したと考えられます。


2023年8月11日金曜日

崩落層と斜面貝層の推定境界面と加曽利EⅠ式土器との関係3Dモデル

 3D model of the relationship between the estimated interface between the collapsed layer and the sloping shell layer and the Kasori EI pottery


For some reason, it seems that the northern slope shell layer is not used much during the Kasori EI period, which is the peak of the Ariyoshi Kita Shell Mound. From the same 3D distribution of pottery fragments, we could imagine how the pottery was thrown into the gully from the valley slope.


有吉北貝塚の盛期である加曽利EⅠ式期は、なぜか北斜面貝層をあまり利用していないようです。同一土器破片3D分布から、土器が谷津斜面からガリーに投げ込まれた様子を想像することができました。

1 崩落層と斜面貝層の推定境界面と加曽利EⅠ式土器との関係3Dモデル

有吉北貝塚北斜面貝層 崩落層と斜面貝層の推定境界面と加曽利EⅠ式土器との関係3Dモデル

崩落層と斜面貝層の推定境界面:カラーグラデーション等高縞模様表現

貝層断面図:4番断面、7番断面、11番断面

加曽利EⅠ式土器:赤CUBE(19)


崩落層と斜面貝層の推定境界面と加曽利EⅠ式土器との関係3Dモデル画像1


崩落層と斜面貝層の推定境界面と加曽利EⅠ式土器との関係3Dモデル画像2


有吉北貝塚北斜面貝層 崩落層と斜面貝層の推定境界面と加曽利EⅠ式土器との関係3Dモデル動画

2 観察


観察結果1


観察結果2

・斜面貝層出土土器5点、崩落層出土土器2点あります。

・ガリー谷頭急斜面出土土器1点、ガリー運搬堆積層出土土器11点あります。

・土器出土と対応する層位は中峠式土器と似ています。

・加曽利EⅠ式土器で3D座標を取得できたものは全部で19点であり中峠式69点の約1/3と少なくなっています。北斜面貝層ではほぼこの割合で中峠式土器と加曽利EⅠ式土器が出土してます。またこの傾向は南斜面貝層でも同様です。

・加曽利EⅠ式期には北斜面貝層があまり利用されていなかったことは確実です。

・一方、発掘調査報告書の竪穴住居軒数をみると、加曽利EⅠ式期の軒数が最も多く、EⅠが集落最盛期のようです。斜面貝層から出土する加曽利EⅠ式土器の数と竪穴住居軒数の間の平仄が合わないので、重要な学習テーマとして、今後興味をもって検討を深めることにします。

3 加曽利EⅠ式153番土器の投棄場所(破壊地点)

2-1 参考 加曽利EⅠ式153番土器に関する発掘調査報告書の記載


加曽利EⅠ式153番土器

「153は井戸尻Ⅲ式と思われる資料である。内湾する口縁部は無文で、RL単節縄文を地文に3条の平行沈線による懸垂文が垂下する胴部文様帯とは1条の横走隆線によって画されている。器形的にはキャリパー形を呈する。」図版、記述ともに発掘調査報告書から引用。

2-2 加曽利EⅠ式153番土器の投棄場所(破壊地点)


加曽利EⅠ式153番土器の投棄場所(破壊地点)推定

加曽利EⅠ式153番土器の3破片を斜面(崩落層と斜面貝層の推定境界面)の等高縞模様を参考に最大傾斜方向に遡ると、斜面頂部付近で合流します。この合流場所が3破片が生まれた場所(153土器が破壊された場所)であると推定できます。つまりこの合流場所で土器が破壊され、3破片は長い年月を経て出土場所まで重力、流水の力、貝殻投棄など人為撹乱によって移動(転がり落ちた)と考えることができます。


加曽利EⅠ式153番土器の投棄方法の想像

加曽利EⅠ式153番土器は斜面(崩落層と斜面貝層の推定境界面)の頂部付近で投棄で破壊されたと推定できますが、その破壊方法は谷津斜面から投げ込んだと想像するのが合理的だと考えます。斜面(崩落層と斜面貝層の推定境界面)頂部にたどり着くのはエネルギーを要するので、その場所まで土器を持ってきて破壊したとは考え難いです。