私の散歩論

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2011年9月1日木曜日

谷津開発のタイプ

花見川流域のイメージと感想13 谷津開発のタイプ

花見川流域の谷津開発の姿を水(湧水、河川、水路)との関係で、現状について類型区分してみました。谷津の水を生かした地域づくりとはどのようなものであるのか、考えるために使う基礎資料づくりです。

河川法で河川に位置付けられている花見川と勝田川を除いて、農業用水路や雨水排水・下水路として管理されている河川・水路を持つ谷津を考察対象としました。

谷津の土地利用と水から考えると、次のように現状を類型区分できることがわかりました。

花見川の谷津開発タイプ
1 未開発タイプ
2 水田耕作タイプ
3 盛土タイプ
4 市街地タイプ

1 未開発タイプ
土地利用:耕作や構造物構築がない状態
水:未利用
例:高津川、北高津川の陸上自衛隊習志野演習場敷地

耕作や構造物構築がなく、明治・大正時代の未開発の谷津の姿を偲ばせる土地が残っていることは、谷津について考える上で、今となっては貴重な資産が残っていると考えます。陸軍演習場であった長い期間に小規模な地形改変は繰り返されたと想像しますが、明治・大正年間の地形図と現在の地形図を比べると顕著な地形改変の跡はあまり見られません。その証拠に、演習場内の一部に小金牧の野場土手が連続して残っている場所があります。
繰り返しになりますが、花見川流域にこのような場所があることは、自然地理上特筆すべきことであると考えます。

未開発タイプのイメージ

2 水田耕作タイプ
土地利用:水田耕作
水:地下水汲み上げ、柵渠、地下水路
例:小深川、東小深川、横戸川、長作川、犢橋川、畑川、浪花川(一部)

谷津頭から、あるいはその場で地下水を揚水して河川・水路を活用して水田耕作を行っている谷津。市街地化が進んでいる流域の中で、水田耕作されている谷津の存在は、里山的環境を地域にもたらしており、自然生態系保全価値、風景向上価値、水環境保全的価値などがあると考えられます。
なお、例にあげた河川のうち、畑川だけが全水路区間に蓋かけしていて、谷津の生態的、風景的価値が減じているように感じます。

水田耕作タイプのイメージ

3 盛土タイプ
土地利用:畑地化、資材置き場等
水:柵渠、地下水路
例:北高津川、芦太川(一部)、宇那谷川

これまで水田耕作タイプの谷津でしたが、盛土して畑地にしたり、空き地、資材置き場などとして利用されている谷津があります。多くの場合、畑や資材置き場としての利用はあくまでも便宜的一時的なもので、土地を宅地化するための布石であると考えられます。

盛土タイプのイメージ

4 市街地タイプ
土地利用:住宅地、業務団地等
水:地下水路、柵渠
例:高津川、北高津川、芦太川、宇那谷川(上流)、小深川(上流)、東小深川(上流)、犢橋川(一部)、浪花川

例にあげた河川の源流部谷津では、谷底を完全に埋立て宅地化し、住宅や工業・業務施設が立地し、その地形が完全に失われた場所が多くあります。
谷津の源流部を除くと、高津川筋ではほとんど開渠、柵渠として残っており、金網柵で囲われています。勝田川筋では地下水路化した部分が多い状況です。双方とも、谷津を市街地化するにあたって、「谷津の『湧水・河川・水路』はその存在自体に不都合を感じるので、できれば『無かったこと』にしたい、その代わりに『安全・快適・利便』の都市空間はつくりたい」という発想しか、私には感じられまでんでした。
散歩しながら、無意識的に探した「『湧水・河川・水路』を生かした街づくり(地域づくり)」の現場は、私レベルでは、結局見つけることはできませんでした。
敢えて言えば、こてはし台調整池の環境整備は谷津の持っている素質を開花させる可能性を示しているので、こういう例が花見川流域にあってよかったと思います。しかし、この例は、あくまでも園地(公園)整備にすぎません。

市街地タイプのイメージ

こてはし台調整池の環境整備

【考察】
・散歩人の私から見ると、水田耕作タイプの谷津の果たしている環境上の役割は大きいものがあるにも関わらず、社会としてはその保全に無関心であるように、感じられます。市街化(開発)を進めるにあたり、水田耕作タイプの谷津を活用するなど、自然を同伴して地域づくりを進めるという発想の痕跡を、残念ながら、見つけることができませんでした。
・水田耕作タイプの谷津の保全と整備のあり方、盛土タイプの谷津における河川・水路空間整備のあり方、市街地タイプの谷津における河川・水路空間復活整備のあり方について、流域内に手本となる事例が見つからないので、創造的に考える必要があると思いました。

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