ア 宇那谷川の検討ポイント
これまでに花見川東岸の横戸1谷津~横戸6谷津、宇那谷1谷津~宇那谷3谷津の縦断形を詳細に検討してきて、地殻変動による谷津地形の変形について詳しい事情が判ってきました。
こうした情報の総とりまとめを宇那谷川の検討で行うことになると思います。
宇那谷川について検討を深めることにより、花見川流域の地殻変動に関わる地形特性が浮き彫りになります。
そうすることにより、昨年来の懸案事項である花見川河川争奪成因分析について、その一角に深く食い込める見通しが少しずつ立ってきています。
宇那谷川の検討は次の事項について行う予定です。(順不同)
宇那谷川の検討事項
●宇那谷川の縦断
●宇那谷川と小崖2(東西性河川・河川争奪)
●宇那谷川と小崖1(長沼の発生、宇那谷川以東の小崖1)
●宇那谷川と小崖3(仮称「小崖3」命名、長沼の拡大)
●宇那谷川の南方延伸捜索
●歴史時代の長沼の盛衰(古文書、古地図情報吟味)
●長沼の利用
イ 宇那谷川の縦断
1 宇那谷川の谷筋確認
次の図は旧版1万分の1地形図で宇那谷川の谷筋を示しています。
宇那谷川筋の位置(旧版1万分の1地形図谷筋線図)
旧版1万分の1地形図は大正6年測量
宇那谷川は下流で小深川と合流し勝田川となります。(*)
宇那谷川には小崖2、小崖1、新たに見つけた小崖(小崖3の仮称付与予定)が関わり、谷津地形の変形や湖沼形成という特異な歴史を持っています。
そしてそれらが東京湾側水系の浸食作用をあまり受けないで、大半が残ったため、地域の地形の変遷を考えるうえで貴重な情報を提供しています。
図でA地点は宇那谷川の上流部かもしれないと考える地点です。
A地点とC地点の中間部までは宇那谷川の谷津を確認できます。
B地点は地殻変動によって形成された古長沼を東京湾側水系が谷頭浸食しているところです。
図には古文書から復元した長沼池の姿を参考に記入しました。(2011.5.22記事「長沼池の成因」、2011.5.23記事「長沼池と縄文遺跡」参照)
2 宇那谷川筋の現代地図投影
次の図は現代地図(DMデータ)に上記谷筋線を投影したものです。
宇那谷川筋の位置(DMデータ)
DMデータは千葉市・四街道市提供
現在長沼池は存在しません。
長沼池跡より下流の宇那谷川筋は四街道市と千葉市の行政界となっています。
3 宇那谷川筋の3D表現
次の図は宇那谷川筋を0.5m間隔標高区分図に投影し3D表現したものです。
宇那谷川筋の0.5m間隔標高区分図の3D表現
地図太郎PLUS+カシミール3D+5mメッシュ
この3D図から、地史的にみて、古文書より復元した長沼池より、より広い湖沼が存在したことの示唆を受けます。
4 宇那谷川筋の縦断面図作成
上記3のデータから、川筋の現代地形における縦断面図を作成しました。
縦断面図には1で得た旧版1万分の1地形図の等高線交点情報による大正6年地形の縦断線も記入しました。
宇那谷川筋の縦断面図
現代地形はカシミール3D+5mメッシュによる
宇那谷川筋縦断面図から、横戸1谷津~横戸6谷津、宇那谷1谷津~宇那谷3谷津と異なり、地殻変動に伴う小崖1の成立に際してその南の地形面が相対沈下したり、南に傾斜したことを確認できません。
湖沼が形成されて、湖沼堆積物により本来の地形が覆われたため、同じ地殻変動の影響を受けたにも関わらず、確認できないと考えます。
AとCの中間からCまでの縦断は、小崖1や新たに見つけた小崖のよる地殻変動の影響をあまり受けない、原初の宇那谷川の勾配を表現しているかもしれません。
BとCの縦断から、復元長沼池よりもっと広い古長沼が存在していたことの示唆を受けます。
*現在の河川行政では小深川筋を勝田川と呼び本流視していますが、自然地理的に見ると宇那谷川筋が勝田川流域における本流筋です。地名的には、宇那谷川に合流する河川は小深川と呼ばれていました。(旧版1万分の1地形図「三角原」図幅)
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