私の散歩論

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2013年6月12日水曜日

花見川流域地誌のイメージ

趣味活動の分析 4

2013.06.09記事「趣味活動としての「流域散歩と地誌作成」について」で述べたように、「花見川流域の多様な事柄に興味を持ってきて、記事の蓄積が進んだために、気がついたら、花見川流域の地誌をまとめることができるのではないかと、欲張りの気持ちが生れました。」
その花見川流域地誌のイメージについて検討するために、地誌そのものについて考え、感じることをメモしておきます。

1 目的の明確な地誌の例
兵要地誌という言葉があり、WEBで検索すると軍の作戦や占領地の統治のために必要な情報を、地理情報を軸にまとめたものとなっています。

次のような項目から成り立っているものが多いようです。
・総説(用兵的観察)
・地形及び地質
・交通及び道路
・通信
・航空
・気象
・衛生
・宿営及び給養(人馬生存のための物資供給)
・住民地及び住民(教育、宗教、風俗等)
・主要都市
・度量衡
・産業 など
出典:源昌久 わが国の兵要地誌に関する一研究
http://www.lit.osaka-cu.ac.jp/geo/pdf/space05/03minamoto.pdf

兵要地誌自体に特段の興味を持っているわけではありませんが、兵要地誌はその作成目的が明確です。
兵要地誌の価値は、その情報が用兵・作戦や占領地統治に活用できるかどうかという点にあります。

地誌とは本来目的が明確に存在していて、その目的のために作成されるものであるという例を示したくて、兵要地誌の例を紹介しました。

2 目的の明確でない地誌の例
・千葉県史全51巻のうち、「千葉県の歴史 別編 地誌1(総論)」、「千葉県の歴史 別編 地誌2(地域誌)」、「千葉県の歴史 別編 地誌3(地図集)」を図書館から借り出して、参考になるか、読んでみました。

………………………………………………
参考 千葉県の歴史 別編 地誌2(地域誌)の目次(一部)
1章 千葉県の地理的性格
1位置・面積・人口
2歴史的背景
3自然環境の特性
4土地利用と産業の動向
5都市と農村の変化
6県民生活と社会環境
7地域区分
2章 湾岸地域
1節 湾岸地域の性格
1地域の概要
2埋立地の土地利用
3京葉工業地帯の形成
4既存市街の変容
5在来農山村地域の変容
2節 湾岸地域の各市
1千葉市
2浦安市
3章 東葛地域
4章 下総・利根地域
5章 九十九里地域
6章 南房総地域
………………………………………………
目次構成は体系的であり、情報量も多く、期待感が湧いてきます。

しかし実際に読んでみると、面白くない、響くものがない、ピントがずれているというのが率直な感想です。

同じシリーズの「千葉県の自然誌」は既に記事(2013.04.08記事「千葉県の自然誌紹介」)にしたように、読んでみてときめきました。購入意欲も生じ、実際に「千葉県の大地」は既に購入して趣味活動に活用しています。
同じシリーズなのに、大違いです。

これら「地誌」3冊は正統専門家の手によるオーソドックス「地誌」です。これら3冊をつくるのに注入された専門家のエネルギーは莫大なものであったことはよくわかります。高度な知的生産物であることに間違いはありません。

それにも関わらず、私が「面白くない、響くものがない、ピントがずれている」と感じた理由は、この「地誌」の目的が明確でないからだと思います。

この「地誌」3冊は、いわゆる「地誌体系」風に執筆者好みの情報を貼り付けたものに過ぎないという印象を持ってしまいます。
「体系的目次を備えた地誌と称する大冊」をつくることを最大の目的として、この地誌をつくったという印象を受けてしまいます。

例えば「千葉県のこれからの地域づくりを考えるために重要な情報を地誌としてまとめる」という明確な目的(指向性)を持って編集執筆陣を構成したならば、このような「地誌体系」風で大冊であるばかりの図書にはならなかったと思います。

結局、この「地誌」3冊は、ここに掲載された情報を「学習」してもらい、千葉県について(無指向的に)沢山の情報を知ってもらおうという図書であると、私は感じてしまいました。
学校教育や学習活動の教材としては役立つこともあるかと思います。

しかし、地域づくりを指向する人々にはあまり役立つことはないと思いました。

3 私の目指す花見川流域地誌
私の目指す花見川流域地誌は、それを読むと、流域の地域づくりについて様々なアイディアが湧いてくるような、知的好奇心を刺激する図書にしたいと思います。
知識のための知識、情報のための情報をまとめたようなものにはしたくありません。目的を明確にして流域地誌作成に取り組みたいと思います。

花見川流域地誌の目的を次のように考えています。

ア 花見川流域地誌を通じて花見川流域に興味を持ってもらう
花見川流域地誌のコンテンツには流域にある地域資産を満載したいと思います。
これまで見慣れて何の興味もわかなかった地物が、実は興味深く、価値のある地域資産であるということに気が付くことが出来るようにしたいと思います。
地域資産とは、法的に定められた文化財とともに、そうではない希少価値・学術価値等のある地形・地質・地学現象、考古学的あるいは歴史的遺跡・遺物、土木遺構や産業遺跡・戦争遺跡等、地名や言い伝え・民俗行事などの無形文化財、優れた自然や風景などです。
花見川流域地誌を読んでいただいた方に、これだけたくさんの地域資産が気づかれずに存在していたということに驚いていただき、それをきっかけに、花見川流域に興味をいだいていただけるようにしたいと思います。
これまで誰からも注目されることなく、埋もれていた沢山の地域資産の存在を知っていただくことにより、一般住民のみならず、担当行政、各分野の専門家の方にも花見川流域の再認識をしていただけるものと思います。

イ 花見川流域地誌を通じて、地域資産を大事にしたい、もっと見つけたいという気持ちを醸成する
花見川流域地誌に記載されている地域資産に興味を持っていただければ、当然のことですが、それらの地域資産を大事にしたいとか、あるいはもっと見つけたいという気持ちになります。
そういう気持ちになっていただくために、地域資産の保護・保全や探究に関する話題も花見川流域地誌に含めたいと思います。

ウ 花見川流域地誌を通じて、地域資産により地域づくりを進めたいという気持ちを醸成する
花見川流域地誌に記載されている地域資産を活用して次のような地域づくりが考えられます。
1 地域資産の自然的、風景的、文化的価値を居住環境に意識的に取り込む
2 地域資産とのふれあい・体験あるいは学習・教育・研究等がしやすい地域環境をつくる。一種のフィールミュージアムの形成。
このような話題についても、花見川流域地誌でふれたいと思います。
花見川流域地誌を通じて、地域資産により地域づくりを進めたいという気持ちが多くの人々に醸成されることを願います。



つづく

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