私の散歩論

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2013年6月21日金曜日

「戸(と、ど)」地名検討の状況報告

花見川地峡の自然史と交通の記憶 12

花見川流域-花見川地峡-印旛沼流域に分布する「戸(と、ど)」地名に注目し、それらが地名形成時点では「みなと」の意味をもっていたと仮説し、地名の検討を深めれば、花見川地峡の古代の交通に関する情報を得られるのではないかと考えています。
(詳しくはこのシリーズの過去記事をまとめたサイト「花見川地峡の自然史と交通の記憶」参照)

現在次のような作業を展開していますが、作業が完結するまでにはかなりの時間がかかることが予想されますので、また、作業途中で興味深い感想を数多く持っていますので、途中状況報告をしてみます。

1 町丁目レベルの戸地名分布図作成
対象地域…千葉市、八千代市、印西市(旧印西町、旧印旛村、旧本埜村)、佐倉市、酒々井町、栄町、成田市、四街道市

次のような戸地名分布図ができました。

町丁目レベル戸地名分布
対象地域…千葉市、八千代市、印西市、佐倉市、酒々井町、栄町、成田市、四街道市

これらの戸地名が、極端にいうと古代のある時代の舟運ネットワークを示しているのではないだろうかという仮説を、出発点でもったのです。

これだけでは論を進めることができないので、小字レベルでの検討を現在しています。

2 小字レベルの戸地名分布図作成と検討
2-1 戸地名のリストアップ
小字レベルの戸地名は「角川日本地名大辞典12千葉県」の巻末小字一覧から収集しています。
検討視野を広げることが大切であると感じ、狭義の花見川流域と印旛沼流域に対象を絞るのではなく、対象市町の行政域全体についてリストアップし、検討しています。
戸地名の概数は次の通りです。

リストアップした小字レベル戸地名概数

自治体
小字レベル戸地名概数
千葉市
129
八千代市
25
印西市
49
佐倉市
63
酒々井町
14
栄町
6
成田市
36
四街道市
19
合計
341
将来は習志野市、船橋市なども検討範囲に含めたいと考えています。さらにもっと将来は利根川を挟んで茨城県についても検討範囲に含めたいと妄想しています。(いかに作業が膨大であろうとも、それだけの検討価値がありそうだと予感しています。)

2-2 戸地名分布図の作成
千葉市の場合、次のような方法でGIS(地図太郎PLUS)上に戸地名をプロットしています。

ア グーグルマップで町丁目位置を知る
グーグルマップの画面で当該小字がある町丁目を検索して、グーグルマップ上で当該小字のある町丁目を表示する。

イ GISで町丁目位置を表示する
グーグルマップ位置を参考に、GIS上で当該概略位置を表示する。

ウ 情報源(書籍)から当該小字の詳細位置を知る
書籍「絵にみる図でよむ千葉市図誌」上巻及び下巻の2冊から当該町丁目のページを開き、その中の情報から当該小字地名の詳細場所を知る

エ 当該小字をGIS上にプロットする
当該小字地名の詳細場所をGIS上にプロットする。

3枚のパソコン画面をフル動員して、かつ机上には片手で持つことが困難なほどの大冊書籍を2冊用意して行う作業であり、強い気力が求められます。しかし、作業を進めると、新たな情報が次々にわかってきますので、何とか根気を継続できます。

作業中の小字レベル戸地名分布図(千葉市域の一部)

厳しい作業の根気を継続させている、新たな興味ある情報の例を次に列挙します。(まだ検討していない予感的情報です。)

1 戸地名といっても色々な時代に別の意味で付けられたものがある。従って、海の民や水上生活者が最初に植民した時の戸がつく地名と、後世の戸が付く地名を区分する必要がある。(例 出戸が沢山でてくる。多くは台地上に分布していて農耕時代に発出した地名であると考える。)

2 縄文丸木舟や大賀ハスが出土した検見川の谷津合流部が木戸と呼ばれていたことが判明した。また縄文時代から古墳時代まで祭祀跡等の遺跡のある子和清水が木戸と呼ばれていたことも判明した。木戸は要塞的な戸であると考えている。遺跡面の情報と地名情報が初めて結びついたことになり、学術的にも画期的であると思う。
さらに木戸の分布を追い、それと遺跡(物的証拠)との関係を分析すると、それだけでも(花見川地峡の交通との関係が検出できるかどうかはまだ不明であるが)大成果になるような気がする。

3 語尾に「津」がつく地名がほとんどゼロである。(高津が2つある)。戸と津の関係を考える際、近隣地域(北浦など海夫注文の地域)や全国の戸と津の関係と、この地域の戸と津の関係を考察すると、古代から中世にかけての舟運の状況やそれをになった人の属性がわかるかも知れない。

4 検討主題と離れるが、戸地名の小字をリストアップする際、膨大な数の小字をすべて見たが、次のような地名が多出し、興味をそそられる。
ハナ地名…このブログで花見川のハナの検討をしたが、ハナワなどの地名が多出しており、それらをプロットし地形との関係を分析すればいろいろな新たな情報が得られると思う。
ヒョウ・ビョウ…峠地名のヒョウ・ビョウ地名が多出する。特に千葉市域で多出する。この地名はどこかで戸地名分布と関連すると予感している。
カナクソ…金属に関わる地名が散見する。それだけをリストアップするだけでも面白いだろう。いつか取り組みたい。
ハクチョウ…散見する。白鳥を捕るという意味だと思う。
トドロキ・ドウメキ…かなり散見する。滝(泉)があったことを証する地名。

つづく

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