花見川流域の小崖地形 その21
1 花島小崖(断層崖)の分布
千葉市都市図(1960年測量)、旧版1万分の1地形図、米軍空中写真等の開発前の状況がわかる資料に基づいて、花島小崖(花島断層の断層崖)の分布図を作成しました。
花島小崖の分布図
基図は千葉市都市図(1960年測量、千葉市立郷土博物館提供)
この図には印旛沼水系谷津(台地上の浅い谷)と東京湾水系谷津(いづれも開発前の地形を復元)も記入してあります。
花島小崖が直線的、平行的に分布するため、江戸時代からその地形方向に沿って道が発達してきていますが、戦後の開発で碁盤の目状の道路網ができましたが、この道路網の方向も花島小崖の方向を基準としてつくられています。
2 断面線の設定
次の図に示すように、花島小崖の直角に交わる約270mの断面線を、この付近で50m間隔で全部で18本設定しました。
断面線の設定
基図は標準地図と地形段彩図のオーバーレイ
3 断面図の作成と花島小崖(断層崖)の比高
GISソフト地図太郎PLUSの地形断面図作成機能を利用して、地形断面図を作成して次に示しました。
断面図作成に用いているデータは基盤地図情報5mメッシュ(標高)です。標高の標高の単位は10㎝であり、断面図も10㎝単位の標示となっていて、小崖地形の細部まで検討することができます。
(地図太郎PLUSに地形断面図作成機能が搭載される前は、カシミール3Dの地形断面図作成機能を使っていましたが、カシミール3Dの場合図化最少単位が1mであり、微地形の詳細検討が困難でした。)
小崖の地形断面図(1~9)
地形断面図から計測した花島小崖に関する数値
番号
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頂部標高(m)
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底部標高(m)
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比高(m)
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摘要
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1
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28.9
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27.1
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1.8
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底部前面に人工掘削あり。
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2
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28.6
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26.8
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1.8
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3
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28.4
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25.7
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2.7
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4
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27.4
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25.9
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1.5
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5
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27.4
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25.7
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1.7
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6
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28.4
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25.4
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3.0
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7
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26.8
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24.6
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2.2
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8
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26.6
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25.0
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1.6
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谷津谷底面を切る小崖。
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9
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26.8
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25.6
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1.2
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平均
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27.7
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25.8
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1.9
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結果は比高が1.2m~3.0mとなり、平均は1.9mでした。
D地区では模式地花島付近の小崖比高と比べて平均で1.1m比高が低いのですが、その主な理由は2つあると考えています。
●D地区の小崖比高が花島地区(C地区)と比べて小さい理由
ア D地区は市街地化が進み、小崖下の土地が繰り返して盛土されているため、見かけ上、崖の比高が小さくなってきています。
イ 下総上位面の台地面ではなく、台地面を切る谷津の部分を断面線が通過していて、谷津が花島断層によって切られたところの断面を示している断面線が含まれている可能性があります。
番号8の外、7、9なども谷津谷底が花島断層によって切られている場所である可能性が濃厚です。その場合、次のような理由から、断層崖の比高は台地面より小さくなります。
………………………………………………
台地面より谷津谷底の方が断層崖比高が小さくなると考える理由
1断層発生前
2断層発生
3水量の多い谷津では、断層活動が活発でなければ、断層崖を下方侵蝕してそのまま流下する。谷津は維持される。
4断層活動が活発になると水量の多い谷津でも断層崖を下方侵蝕できなくなる。
結果として、水量の多い谷津を切る断層崖の比高は小さく、水量の少ない谷津や台地面を切る断層崖の比高は大きくなる
………………………………………………
断面番号8の小崖比高1.6mは、上記のような成因により、本来比高3mの崖が出来るべきところ、比高1.4m分はその谷津が下方侵蝕で削ってしまったと考えられるかもしれません。
小崖地形についてさらに検討を続けます。
つづく
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