旧石器時代の遺物集中地点を文化層別(=時代別)に分析すると、第1文化層~第3文化層の時期では遺物集中地点数が少なく、かつ規模の小さな遺物集中地点が存在していないことがわかりました。一方第4文化層~第7文化層では遺物集中地点の数が増えるとともに、石器を作成した証拠が見つかる規模の大きな遺物集中地点(臨時キャンプ)とそれと異なる分布を示す小さな遺物集中地点(狩施設・獲物加工処理施設)のセットが見られるようになりました。
このような出土情報から、第1文化層~第3文化層の時期は人口がすくなく、狩の方法等はこれまでこのブログで検討してきたような組織的なものではないことが想定されることになりました。
同時に第4文化層~第7文化層の時期は人口が増え、組織的かつ計画的な狩が行われたことが出土情報から想定され、このブログで検討してきたことがますますその確からしさを増してきています。(2014.11.15記事「旧石器時代遺跡の文化層別分析 その1」参照
この記事では出土礫を文化層別に分析して、遺物集中地点の文化層別分析との関係を見てみます。
なお、出土礫の分析は2014.11.14記事「出土礫の分析」ですでに行っています。その分析で出土礫は少数出土の場合は礫が道具(ハンマー代わりなど)として使われ、多数出土の場合は毛皮の最終加工における天日干しの重しで使われたのではないだろうかと推定しています。
次のグラフは文化層別礫出土遺物集中地点数です。
文化層別礫出土地点数
第1文化層~第3文化層では遺物集中地点自体が少ないので礫出土地点が少ないことは当然です。
第4文化層~第7文化層でも遺物集中地点数にほぼ比例します。
次にこのグラフを礫出土数規模別に展開してみると次のようになります。
文化層別規模別礫出土地点数
第2文化層と第3文化層の礫出土規模は礫数1桁の規模Eです。
第4文化層、第5文化層でも礫出土規模は最低ランクの規模Eがほとんどです。
以上の情報から、第2文化層~第5文化層の時代(第1文化層は礫は出土していない)までは、礫が出土するにしても極わずかであり、礫が多機能な道具として使われていたと想定できるということです。
ところが、第6文化層の時代になると、規模B(礫数平均376.5)、規模C(礫数平均56.3)の遺物集中地点が生れます。第7文化層になると規模A(礫数924)の遺物集中地点が生れます。
この情報から第6文化層の時代に、毛皮の最終加工工程(皮なめし)における天日干しに礫を使うようになったと考えることができます。礫は基本的には重しとして使われたと考えますが、天日干しで皮が地面に直接触れないようにするための敷台とか、肉や脂肪を削る際の台座、スモーク工程における炉形成などにも使われた可能性もあります。
皮なめしはそれ以前からずっと行われてきたはずですから、第6文化層の時代になってはじめて多量礫が持ち込まれたということは、その時代に皮なめしにおける礫を使った技術革新があったからと考えます。礫を使った皮なめし技術革新により一種の毛皮生産ラインが存在したのだと考えます。
この場所が毛皮を生み出す旧石器時代の工場であったというイメージを持ちます。
肌触りのよい毛皮製品がこの場所で第6文化層以降の時代に多量に作られていたと考えます。
次に各文化層における礫出土規模別の礫出土地点分布を示します。
第2文化層、第3文化層の礫出土地点分布
第4文化層、第5文化層の礫出土地点分布
第6文化層、第7文化層の礫出土地点分布
つづく
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