私の散歩論

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2015年8月17日月曜日

小字DB活用効果の展望 2(例 白幡)

小字地名データベース作成活用プロジェクト 27

この記事では、作業途中の千葉県小字データベース2万件を使って、小字「白幡」を例に、データベース活用効果の可能性について考えます。

データベースで白幡・白旗・白畑・(読みシラハタ、シロハタ)等をキーワードに検索すると次の36件がヒットしました。

小字「白幡」のヒット(21市町の範囲)

14市町から白幡(以下白幡・白旗等を白幡で扱います)がヒットしています。

これらすべての白幡を地図に示すと次のようになります。

千葉県21市町における小字「白幡」の分布
Google earth proによる
白網は21市町域
位置情報はアドレスマッチングにより作成(小字が属する大字の中心位置にプロット)。

小字白幡はこれまで興味の対象として折に触れて記事を書いてきました。
記事例
2015.02.08記事「古墳時代の鍛冶遺跡-妙見信仰-秦氏
2015.04.21記事「八千代市白幡前遺跡 古代寺院関連地名
2015.05.09記事「四街道市小字地名データベース完成
2015.06.27記事「古代遺跡名称に多く現れる「白幡」

白幡は新羅系渡来人の秦氏の居所を意味すると想定し、古墳時代における鍛冶遺跡や交通拠点と関わりがありそうだと考えています。

つまり古墳時代の渡来人による技術的・文化的拠点と、小字白幡がきわめて密接な関係にあるのではないかと考えています。

さらに奈良時代になると、小字白幡が示す技術的・文化的拠点がさらに発展し、漢字の使用拠点(墨書土器多出地点)や軍事氏族拠点(蝦夷戦争で陸奥国へ出征する集団の拠点)になったのではないだろうかと想像しています。古代寺院との関連も濃厚です。

下総で多い奈良時代丈部氏族は古墳時代の小字白幡住民である渡来人秦氏の流れではないかと空想しています。

このような想像・空想は例えば上田正昭著「渡来の古代史」(角川選書)などの書物から得た知識に刺激されて考えているものです。

小字データベースにより白幡の分布が明らかになると、それらの白幡と関連地名や発掘情報との関連を検討できるようになります。

例えば、古代の殺牛祭神を地名にとどめたと考えることができる「牛喰」「牛殺し」などの地名分布と白幡の分布は密接な関係にあります。

小字「牛喰い」「牛殺し」関連地名の分布
八千代市萱田に牛喰と牛喰下が、四街道市栗山に牛喰山が鹿渡に牛コロ作が分布しています。

八千代市の小字の分布は次図に示すように白幡前と牛喰が隣接していて、牛喰の場所が白幡そのものである可能性が濃厚です。

八千代市の小字白幡前と牛喰の位置
「八千代市小字図」(「八千代市の歴史 資料編 近代・現代Ⅲ 石造文化財」(八千代市発行)別添附録)から引用

一方四街道市の白旗と牛喰山は小谷津を挟んで数百メートルの近距離にあり、関連がうかがわれます。牛コロ作(牛殺し作の略と考える)の位置は白旗から2km程離れていますが鹿島川の同じ支谷津の流域にあり、ある程度の関連がある可能性を排除できません。

八千代市の小字白旗と牛喰山、牛コロ作の位置
小字中心位置は資料「土地宝典」によるもので正確です。
基図は旧版1/25000地形図(千葉県東部、佐倉、各大正14年測量)

これらの検討から小字の情報だけからでも、古代の出来事に強い関心を持つことができます。

さらに、これらの情報と発掘情報を重ねると説得力ある検討ができると思います。

八千代市の白幡については白幡前遺跡が、四街道市の白旗については呼戸遺跡や鐘塚遺跡が対応すると考えます。

小字データベースが完成して、白幡の分布がより広域的に判明した段階で、白幡をキーワードにした検討を総合的に行いたいと考えています。

広域を対象とした小字分布の検討はこれまで事実上不可能でしたが、小字データベースが完成すれば解禁となります。

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参考 白幡分布図

千葉県21市町における小字「白幡」の分布
Google earth proによる


千葉県21市町における小字「白幡」の分布
Google earth proによる
地理院地図色別標高図を表示

参考 ブログ「花見川流域を歩く番外編」に2015.08.17記事「四街道市における小字位置情報の取得」を掲載しました。

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