鳴神山遺跡墨書土器の文字分析に着手しました。
データは千葉県出土墨書・刻書土器データベース(明治大学日本古代学研究所)を使います。
データベースが整備されているので、データを分析して遺跡の特性を把握できるならば、他の遺跡も全て遺跡特性を知ることができます。
一つ一つの遺跡の発掘調査報告書を図書館で(帯出できないものを含めて)閲覧して読解することは膨大なエネルギーを要します。(半日もあれば1冊の報告書の概要を知ることはできますが、情報をパソコンに入れるまでに膨大な時間がかかります。)
しかし、墨書土器に関するデータベースから遺跡の特性を知ることができれば、比較的に容易に古代社会のイメージを最小限のエネルギーで、自分のペースで知ることができます。
そういった意味で、「電子データがあり、パソコンで利用できる」という特殊的に有利な条件を最大限生かしたいと思い、墨書土器検討の自分なりのパターンをつくろうとしています。
検討すべきことはいろいろあるので、それぞれ鳴神山遺跡で試行してみたいと思っています。
この記事では単独出土文字の状況を整理してみました。
墨書土器文字は8割方が1文字で出土します。
その文字の出現頻度を調べてみました。
次の表は文字別に、1文字で出土する出現土器数と多文字の中に含まれるものも含めてその文字が出現する総土器数を調べたものです。
鳴神山遺跡 墨書・刻書土器文字 出土状況 1
鳴神山遺跡 墨書・刻書土器文字 出土状況 2
「ヵ」と注釈された史料は集計に含めています。
釈文できない史料及び2つの釈文案が出ている史料は集計から除いてあります。
この表を散布図にしてみました。
鳴神山遺跡 墨書・刻書土器の文字別出土状況
大という文字が単独出土数も総出土数も他を圧倒しています。
大という文字を共有する集団が鳴神山遺跡のメイン集団であったと考えます。
単独出土数の順位は、×、依、冨、♯(井を含める)、工、万と続きます。
×と♯(井を含める)は魔除け記号です。この記号が特定集団と結びついていたものか、それとも一般的なものであったのか、今のところ知識がありません。
しかし、他の漢字はそれぞれ意味があり、その意味は集団の使命(生業)と関連していると仮想していますから、記号も特定集団と結びついている可能性が高いと考えています。
より現場活動的集団(例 狩猟集団など)が記号を共有していた可能性を想像します。
単独出土数が5以上の文字はその文字がある程度の範囲で人々に共有されていたことが確認できますから、その文字を共有した集団の特性をあぶり出せる可能性があります。
その文字の出土遺構の状況や出土遺物、共伴する他の文字などを分析すれば、その集団の特性を知ることができる可能性があります。
漢字の奈良時代の意味は現代でも推定可能ですから、漢字そのものからだけでもその集団の特性の臭いを嗅ぐことができると考えます。
更に検討を進めます。
つづく
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