鳴神山遺跡の墨書文字「久弥良」は大物主神を、「大」は大国主神と推定できるという結論に至って、自分自身が強い刺激を受けています。
白幡前遺跡をメインとする萱田遺跡群の墨書文字の意味検討結果とはその趣が大いに異なる結果となっているからです。
鳴神山遺跡では大国玉(大国主神)という神名が祈願語となっていて、それが祈願語としては最も卓越する言葉となっています。
一方、白幡前遺跡をはじめとする萱田遺跡群でのメインの言葉は「生」であり、意味は「白兵戦に生き残る」と推定しました。祈願内容そのものを祈願語に使っています。
2015.06.14記事「墨書土器代表文字の意味」参照
萱田遺跡群では祈願語の多くは祈願内容であると考えました。
このように、遺跡間で祈願語の在り方に相違があるようなので、その相違をより正確に意識するために、墨書文字の意味がどのような項目を意味しているか、自分なりに一般化して把握することにします。
そのツールとして次の墨書・刻書文字の意味解読パターン 素案を作成しました。
墨書・刻書文字の意味解読パターン 素案
多文字墨書土器の意味解読パターンは「千葉県の歴史 通史編 古代2」(千葉県発行)で検討されていて、それは2015.05.07記事「八千代市白幡前遺跡 墨書土器の文字の意味」で紹介しました。
上記「墨書・刻書文字の意味解読パターン 素案」は多文字墨書土器の例を参考にして、1文字あるいは2~3文字程度の墨書文字を対称にして作成したものです。
多文字のものとの最大の違いは、祈願内容を項目として含んでいることです。
多文字墨書土器と一般の単独文字をメインとする圧倒的多数の墨書土器とはその意義が全く異なると考えています。
2015.10.11記事「墨書土器の2大分類と鳴神山遺跡出土文字「丈」の分布」参照
このパターンをツールに自分なりに、当面は鳴神山遺跡の、その後は再び萱田遺跡群の、墨書文字の意味がどの項目に該当するのか検討していくことにします。
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感想
墨書文字の項目が遺跡間で大きく違うことがわかってきたので、その違いに着目して、遺跡の特性の違いをあぶり出すことができると考えます。
蝦夷戦争遂行という律令国家のベクトルを基準にすると、萱田遺跡群の方が大衆のこころざしが高く(使命実現を直接祈願語で表現している)、鳴神山遺跡の大衆は気持ちが内向きになっている(自分の使命を言葉で表現していない)ように感じます。
大衆を指導する者のこころざしの高低が、その者が発する言葉(祈願語)となって大衆の墨書土器文字として普及していったのだと思います。
鳴神山遺跡で大衆の気持ちが内向きになっていることと、この遺跡での銙帯出土が少ないという事実が相関すると考えます。
律令国家における官人の役割・指導力は大きなものがあったと考えます。
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