私の散歩論

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2015年11月6日金曜日

墨書土器「圓」「上」「入」の閲覧

八千代市立郷土博物館で「圓」「上」「入」文字の墨書土器を閲覧させていただきました。

「圓」 白幡前遺跡出土

圓の意味は過去に次のように考えました。
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●圓の意味

まる【丸・円】
(「まろ」の変化した語)
1 〖名〗
③ 金銭、特に貨幣をさしていう。
※歌舞伎・隅田川続俤(法界坊)(1784)口明「イヤモウ〇になることならなんなりと相談に来ることさ」
『精選版 日本国語大辞典』 小学館

「圓」(マロ、マル)と読んで、貨幣を扱う官人つまり基地の会計係集団が会計業務の帳尻が合うことを祈願した言葉であると考えます。
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2015.05.19記事「墨書土器文字の解読




「上」 白幡前遺跡出土

上の意味は過去の次のように考えました。
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●上の意味
ア 上(アガリ)と読み、官人が身分や位が上にあがることを祈願した。
イ この場所が中央貴族接待施設や寺院があり上(ウエ)の場所(貴い人がいる所)であり、その上(ウエ)に住む私が、○○○について祈願する。
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2015.05.13記事「八千代市白幡前遺跡 墨書土器の文字検討 その3

上という漢字の多義性は大きなものであると感じますので、もっといろいろと想像してみることが必要だと感じます。





「入」 白幡前遺跡出土

入の意味について過去に次のような検討を行ています。
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2 「入」の意味
これまでの検討と異なる点が1つあります。
「入」(井戸向遺跡Ⅲゾーン、白幡前遺跡2Eゾーン)は次のように解釈してきました。
「入(ニュウ)は納入の入の意味で、おさめる、献ずるという意味になります。提、奉と同義です。」(2015.05.11記事「八千代市白幡前遺跡 墨書土器の文字検討 その1」参照)

この記事では「入」を軍隊入隊(官の軍事組織入隊)祈願として捉えてみました。

そのように捉えると、井戸向遺跡Ⅲゾーンを新兵候補の訓練施設、白幡前遺跡2Eゾーンが軍隊従軍文官候補の訓練施設として捉えることができます。

白幡前遺跡2Eゾーンでは「圓」(財務管理の成功の祈願)、「文」(正しい文書を作成する祈願)が出土し、会計係とか書記官の活動が想定されます。

同時に、「遺構は竪穴住居・掘立柱建物とも集中して建てられ、建物の軸方向もよく揃えられている。2群DグループからFグループは同じような規模の建物群が並んでおり、この中では最も整った建物配置を採っている。」(「八千代市白幡前遺跡 -萱田地区埋蔵文化財調査報告書Ⅴ- 本文編」(1991、住宅・都市整備公団首都圏都市開発本部・財団法人千葉県文化財センター))としています。

このような情報から、白幡前遺跡2Eゾーンは軍事基地における事務ゾーンであり、その事務ゾーンで官人の下で下働きや小間使いなどで働く者が軍事組織の事務部門に正式に「入」(ハイル)(官として採用される)ことを祈願したと考えました。

井戸向遺跡Ⅲゾーンでは「入」(ハイル)と「生」(イキル)が一緒に代表文字になっていますから、軍事部門のゾーンで、かつ兵として正式登用されていない人間が多いと考え、そのゾーンが新兵訓練地みたいなところと、仮説してみました。
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2015.06.14記事「墨書土器代表文字の意味




1文字の墨書の意味(その文字を書いた古代人が祈願した内容)を考える上で次のような情報を参考にしています。

1 文字の古代における意味、用法や漢字の成り立ち
2 出土遺跡の特性(一般集落なのか、軍事兵站基地であるかどうかなど)
3 一緒に出土する文字
4 一緒に随伴出土する遺物
5 出土文字の遺跡内分布、それと遺跡内ゾーンとの対応
6 出土状況
7 その文字の他遺跡での解釈例
8 その文字の千葉県内や全国における分布
9 その文字が含まれる熟語とその分布

これらの情報を勘案すると文字の意味がおぼろげに浮かび上がってくると思いますが、決定的証拠をもって説明できることはすくないと考えます。
想像力で大きく補わないと、文字の意味を説明できません。

墨書土器の1文字とか2-3文字の検討はこのような特性、つまり想像力の割合が多いので、学術世界ではリスクが大きくなり専門家の方は手を出さない、つまり豊かな想像や鋭い直観的考察があっても文章にしないのだと思います。

このブログは趣味の世界に存在しますので、恥掻きは必要経費と割り切って、墨書土器文字の意味について考察を続けています。

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