私の散歩論

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2016年2月1日月曜日

墨書土器文字検討メモ 万(マンドコロ)

花見川地峡史-メモ・仮説集->3花見川地峡の利用・開発史> 3.4〔仮説〕律令国家の直線道路、東海道水運支路の検討>3.4.278 墨書土器文字検討メモ 万(マンドコロ)

鳴神山遺跡出土墨書土器文字のうち万の意味について検討していますが、万と千と七が大いに関係している様子が浮かび上がってきたので、最初の見立てをメモしておきます。

「千葉県の歴史 通史編 古代2」の中に墨書文字「万」を「マンドコロ」(政所)として理解している記述があります。この記述を参考に、以前墨書文字「六万」をムツマンドコロを読み、陸奥政所と理解して検討したことがあります。
2015.11.11記事「墨書文字「六万」はムツマンドコロか?」参照

鳴神山遺跡でも墨書文字「万」が多数出土しているので、興味を持って検討してます。

文字「万」をマンドコロと読み政所と理解すると、他の文字の意味も芋づる式に判ってきましたので、メモしておきます。

政所の意味を次の事典のようにとらえておきます。

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まんどころ 政所

①財政や訴訟など日常的政治実務を処理した政庁。政所の語は奈良時代の史料にもみえ,8世紀中期には〈造東大寺司政所牒〉〈筑前国政所牒〉などもみえる。大宰府や国などの政府出先機関や半ば公的性格をもっていた大寺社などは,早くからその財政に関する収納や給田などの実務と,訴訟の受理・裁断,人事の管理,使者の発遣,文書の受理・発給・保管などの日常的政治支配を行う機関として政所を設置し,またその庁舎である政所屋〘まんどころや〙をもときに政所とよんでいた。荘園制が盛行する11世紀以降には,荘園の現地に政所をおき,日常的な徴税や荘民の訴論を処理したところも少なくない。
『平凡社 改訂新版 世界大百科事典』 日立ソリューションズ
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鳴神山遺跡の墨書文字「万」(マンドコロ)出土状況は次の通りです。

鳴神山遺跡 墨書文字「万」(マンドコロ)出土数

中万が11、千万が9、七万が3出土しています。

政所が財政を管理していたことから千万はセンマンドコロと読んで銭政所の意味として捉えます。

千万は銭貨の財政や訴訟等の活動を行う者がその活動を全うしたいという祈願語であったと考えます。

また質(シチ)の運営・管理も政所が行っていたと考えることができますから、七万はシチマンドコロと読んで質政所の意味であると考えます。

物のみならず土地も質の対象になり、それらの物(諸質物)と土地(質券地)の管理や訴訟等の活動を行うものが、その活動について祈願した祈願語であると考えます。

酒屋の運営も政所が行っていたと考えることができますから、酒万はサケマンドコロと読んで、酒屋活動(酒造りとその販売)の祈願語であったと考えます。


次に、2つ以上の「万」関係墨書土器が共伴出土した例を示します。

2つ以上の「万」関係墨書土器が共伴出土した例

この情報から、千万(銭政所)と中万(中政所)と万(政所)が共伴出土している例が多いことがわかります。

千万と中万と万は同じ政所を別表現しているのではないかと考えます。

この結果を踏まえて、中万(ナカマンドコロ)の「中」の意味は中級レベルの財政や訴訟を扱う政所という意味か、あるいは集団の仲間内(集団の中)の財政や訴訟を扱う政所という意味だと解釈します。

従って、上万(ウエマンドコロ)は上級レベルの財政や訴訟、身内集団を超えた財政や訴訟を扱う政所という意味に解釈します。

次に墨書文字「万」(マンドコロ)と共伴出土文字を示します。

墨書文字「万」(マンドコロ)と共伴出土文字

共伴出土文字には「大」集団、「大加」集団、「久弥良」集団、「山本」集団、「依」集団の文字がふくまれます。

鳴神山遺跡の主だった墨書文字集団が全て含まれます。

この現象から、「万」は政所という機能に関わる祈願文字であり、集団の本来生業に関わる祈願文字ではないことが確認できます。

「万」という集団は存在していおらず、例えば「大」集団の中に政所機能を担う者(集団内の官僚)が存在していて、その者が「万」という祈願語を使ったということです。

中万(ナカマンドコロ)が最大出土数であることも、政所機能(財政や訴訟機能)が集団毎に設けられていたことを物語ります。

つづく


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