私の散歩論

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2016年5月13日金曜日

検討メモ 純粋小字と関連小字

1 純粋小字と関連小字について

2016.05.11記事「小字ヤツ・サク群の検討でわかったこと」で参考として純粋小字と関連小字について説明しました。

純粋小字と関連小字という表現はこのブログで独自に使っている用語です。

意味は純粋小字とは、小字発生時点でその言葉に特定の概念が貼り付いている小字のことです。

関連小字とは、純粋小字が後の時代にそれに別の言葉が付加して生まれた新たな小字です。

例えば「ナガヤツ」は劣悪条件下の空間であるが長期にわたって収穫を得ることを目指す水田開発地という概念が貼り付いた小字であると考えています。

概念とはつまり、当時の国土開発上の政策用語といってもいいかもしれません。

明瞭な国土政策概念が貼り付いていますから、これを純粋小字というグループに含めて考えます。

一方、「ナガヤツダエ」(永谷台)、「ミナミナガヤツ」(南長谷)、「シモナガヤツ」(下永谷)、「コイケナガヤツ」(小池長谷)・・・など「ナガヤツ」は含まれていますが、それに別の言葉が付加した小字が存在し、それを関連小字というグループに含めて考えます。

関連小字は純粋小字が成立した後、その近くで別の開発が行われた時に生まれる小字であると考えます。

ただし、純粋小字の近くで別の開発が行われて関連小字が生まれたといっても、それが同時代のこととは限りません。

純粋小字が成立してから、時代が全く離れていても、近くで開発があれば、純粋小字の地名を利用して関連小字を作り出し利用したものと考えます。

関連小字は既存の純粋小字を利用して作られた小字ですから、それが出来た時の開発は純粋小字と同じようなものであるか、あるいは一般的な土地開発であると考えます。

明瞭な国土政策概念の下に開発が行われるならば、それに見合う新たな純粋小字を使うはずです。

2 純粋小字と関連小字の分布からわかること

「ナガヤツ」を例に、純粋小字と関連小字の分布からどのようなことがわかるのか、検討します。

純粋小字「ナガヤツ」の分布を次に示します。

小字読み「ナガヤツ」系統の分布

この分布図の検討は2016.05.10記事「小字「ナガヤツ」と「ナガサク」」で行いました。

この図に「ナガヤツ」の関連小字を加えてみると次のようになります。

小字読み「ナガヤツ」系統の分布(関連小字を含む)

関連小字が純粋小字の近くに分布するところがあることは理解できます。

しかし、純粋小字だけが分布して、関連小字が分布しない地域があります。

また、純粋小字は分布しないで、関連小字だけ分布している地域もあります。

「ナガヤツ」に限らず、純粋小字と関連小字の関係パターンはこのように3つになると考えます。

この3パターンを浮き彫りにするために、関連小字に半径4㎞の円を描き、そこに純粋小字が入ってくるかどうかという地図を作ってみました。

関連小字に半径4㎞の円を描いた理由は、関連小字が生まれる場所は概ね純粋小字から4㎞圏内であるという予想が私にあるからです。(その予想は今後の大切な検討対象です。しかし、ここでは検討を省きます。)

小字読み「ナガヤツ」系統の分布(関連小字を含む)2

純粋小字と関連小字の関係パターンが3つに明瞭に分割できました。

その意味を仮説的に検討します。

パターン1 純粋小字と関連小字が4㎞以内に連坦する地域

「ナガヤツ」の開発が行われた後に(「ナガヤツ」小字成立後に)、近隣でさらに開発が行われた地域。

この地域は「ナガヤツ」開発が軸となって、広域的に開発が行われた可能性があります。

「ナガヤツ」開発が誘因となって地域開発が進んだ地域で、「ナガヤツ」開発が成功した地域の可能性があります。

パターン2 純粋小字だけが分布する地域

「ナガヤツ」開発は行われたが、それを軸に近隣でさらに開発が行われるということが無かった地域。

パターン3 関連小字だけが分布する地域

純粋小字がかつて存在していて、さらに関連小字もできたのですから、パターン1と同じように「ナガヤツ」開発が成功した地域であると考えます。

しかし、純粋小字が失われてしまっているということは、全く別の地域開発が「ナガヤツ」開発地をカバーして実施され、別の純粋小字に置き換わってしまったと考えます。

純粋小字と関連小字の関係パターンをこのように分類して、その分布をみると、純粋小字だけの分布からはわからなかった有益情報が得られる可能性があることがわかりました。

純粋小字だけの検討では「ナガヤツ」開発は東京湾岸では行われなかったと考えたのですが、そうではなく、東京湾岸でも行われたことが判りました。

さらに、「ナガヤツ」開発の後の時代に、「ナガヤツ」開発という狭小な開発単位を全部飲み込むような規模の大きな開発単位の開発があり、純粋小字「ナガヤツ」が全て失われたこともわかりました。



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