上谷遺跡に漆工房群と漆栽培関連土坑を想定していますが、その近隣に不思議な形状の掘立柱建物がありますので検討します。
B050掘立柱建物
●遺構
柱穴数8基の円形か不整形となる掘立柱建物跡であり、円形とすると直径3.68m~3.70mの遺構である。
柱穴の深さgは0.24~0.27mと均一であるが、P6・P7が0.68m~0.72mと深いものであった。
●所見
平面形態が不明であり、中世以降か円形の竪穴住居跡の柱穴とも想定したが、判断に迷う遺構であるため、奈良・平安時代の掘立柱建物跡として扱うことにした。
類例の増加をまって、検討したい遺構である。
B050
「千葉県八千代市上谷遺跡 (仮称)八千代市カルチャータウン開発事業関連埋蔵文化財調査報告書Ⅱ -第3分冊-」(2004、大成建設株式会社・八千代市遺跡調査会)から引用
この不思議な掘立柱建物のすぐそばに漆工房群と漆栽培用の特殊土坑4基(分根あるいは実生保存発芽用と想定する土坑1基、漆苗床用と想定する土坑3基)が存在します。
その想定とこの不思議な掘立柱建物が近接していることを手掛かりにして、この掘立柱建物が漆工芸過程における乾燥施設であると想定します。
漆工芸の工程では繰り返し漆を塗りますが、その乾燥が大変重要です。
温度を24度~28度、湿度を70%~80%にして空気が動かないようしなければなりません。
「漆の乾燥には漆風呂(箱)が必要で,その内部は水拭きされ適当な湿度が保たれる。」(『平凡社 改訂新版 世界大百科事典』 日立ソリューションズから引用)ことが大切です。
この掘立柱建物は大きな漆風呂であったと想定します。
この掘立柱建物が漆風呂だとしたら、上谷遺跡では漆工芸が大変盛んであり、多人数の職人により同時に多数の漆器が作られていたことが忍ばれます。
この掘立柱建物が大きな漆風呂であったとしたら、近隣遺跡で漆を生業としていたところでも類似の遺構が出るでしょうから、意識して探せば、ほどなく検証できると考えます。
この記事までに想定した漆関連遺構を次にまとめました。
漆関連と想定した竪穴住居群・関連土坑・掘立柱建物
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