私の散歩論

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2016年12月29日木曜日

千葉県墨書土器データベースの活用可能性

1月から私家版千葉県歴史・地名GISデータベースの構築と活用学習をスタートさせます。

この記事ではデータベースの一翼を構成する千葉県墨書土器データベースの活用検討例を示して、その活用可能性の「威力」の大きさを確認しておきます。

1 例 墨書土器全情報分布

千葉県における墨書土器全情報の出土分布と銙帯出土分布を比べると、略一致することが見て取れます。


千葉県墨書土器出土分布図

千葉県の遺跡別銙帯出土数
(注…資料作成時期が古いので、例えば上谷遺跡から出土している多数の銙帯はこの分布図に表現されていません。)

銙帯は官人着用の権威の象徴であり、行政権力が常駐していたことを物語っていると考えることができます。

このことから、墨書土器出土遺跡の大半は奈良平安時代の開発集落であることが推察できます。

土器に文字を墨書する行為は集団的組織的に行われた祈願行為であると考えられますから、墨書土器から国家が主導した東国開発における集落住民の生活や心理面の情報を得ることができると考えます。

2 例 漆関連情報

墨書土器データベースから例えば漆関連文字「七」「知」「益」の分布をつくることができます。

墨書文字「七」「知」「益」出土遺跡の分布

「七」はシチであり乾漆の意味、「知」はシルであり漆の汁の意味、「益」はエキであり漆の液の意味です。

2016.04.06記事「参考 千葉県における漆関連墨書文字分布」等参照

この分布図は奈良平安時代房総開発集落の漆産業分布の様子を投影していると考えることができます。

次の分布図は現在伝わる小字「ウルシ」の分布の様子です。


小字「ウルシ」(漆、ウルシ)の分布

2枚の分布図を比べると墨書文字「七」「知」「益」が出土する遺跡と小字「ウルシ」が一致(略一致)する場所が存在します。

そのような場所は奈良平安時代開発集落にその始源を有する漆産業発展を、墨書文字と小字という2つの文字史料で確認できたことになります。

墨書土器はその文字解読を進めることによって、その多数性、多様性から超1級文字史料として活用することができると考えます。

3 例 文字「寺」出土状況

文字「寺」を含む墨書土器出土状況を示します。

文字「寺」を含む墨書土器出土状況

墨書文字「寺」は奈良平安時代開発集落内に実在した寺院と関わりのあるものがほとんどであると考えられますから、この文字史料から当時の仏教流布の様子の一端を知ることができます。

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