この記事では、ひびができた理由をもう少し深く分析して、土器片が廃絶祭祀のお供えであることの思考を深めます。
1 土器片ひび割れの詳細観察
3号炉穴と1号炉穴について出土土器のひび割れ状況について、出土状況写真と現物復元写真を対照して詳細観察しました。
3号炉穴出土土器片の詳細観察
土器片は踏みつけにより多数のピースに分割し(ひびを入れて分割し)たものであることが観察できました。
ひびのでき方(蜘蛛の巣状のひび)から投げ入れたものではないことが判明しました。
土器片を炉穴に置き、わざわざ踏みつけて多数のピースに分割し、なおかつ土器片の姿はそのままであるという意識的操作の結果が出土状況になります。
1号炉穴でも、土器片は踏みつけにより多数のピースに分割し(ひびを入れて分割し)たものであることが確認できました。
さらに、多数のピースの一部をバラバラにしないで残りの部分の上に置くという手の込んだ意識的操作を行っています。
2 ひび割れ土器片(多数ピースに分割しなおかつもともとの概形を崩さない土器片)の意義
ひび割れ土器片の意義を次のように仮説しておき、今後検証していきたいと思います。
仮説 ひび割れ土器片の意義=炉穴廃絶祭祀のお供え物
炉穴を廃絶する時、炉穴機能発揮において一体不可分の道具である土器も一緒に廃絶(破壊)したものと考えます。
炉穴を廃絶するのですから、炉穴の神様の怒りを治める必要があり、そのために土器をいわば生贄としてささげたのだと思います。現代風に言えばお供え物です。
土器を踏みつけて多数のピースに分割してしまえば、使えなくなります。土器の命を絶って、その命を炉穴の神様にささげたということだと思います。
この祭祀は使える土器ではなく、土器片で代用していますから、炉穴廃絶祭祀というものが、大変身近なものであったことを物語っています。
同時に祭祀が縄文時代早期後半にはすでに十分に形式化していたといえます。
当然の推論になりますが、炉穴廃絶祭祀では炉穴を埋めたと考えます。
少なくともひびを入れた土器片が埋まる程度までは埋めたと考えます。
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