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2017年7月6日木曜日

土坑平面型検討から生まれ出つつある仮説の芽 大膳野南貝塚

2017.07.04記事「大膳野南貝塚 後期土坑の平面型」のつづきです。

1 平面型の時期分布
4つに区分した土坑平面型の時期分布をみると次のようになります。

大膳野南貝塚 後期集落 時期別平面型別 土坑数

帰属時期不詳の土坑数が多いので決定的なことは判りませんが、集落が衰退する堀之内2式期以降は土坑の中に占める楕円形型の割合が増えます。
もし、集落衰退期に楕円形型土坑が増えると考えると、楕円形型という土坑平面形状に意味がある可能性が浮かび上がります。

2 平面型と土坑サイズ平均値
土坑サイズの検討は記事を改めて詳しく行います。
ここでは平面型と土坑サイズ平均値との関係を見てみます。

土坑平面型別平均面積
土坑面積は次の式で簡易的に求めました。
長径×短径×π÷4
円形型の平均平面積が最も小さくなります。

土坑平面型別平均深さ
平均深さは円形型が最も深くなります。
円形型土坑には深い土坑が数多く含まれているということです。

土坑平面型別平均体積
土坑面積×深さで簡易的に土坑体積を求めました。
平均体積も円形型が最も大きくなります。

円形型土坑の平均面積が一番小さいのに、平均深さや平均体積が大きい理由は、物を貯蔵する断面形フラスコ・円筒土坑の平面形が円形型であるからだと考えます。

円形型土坑の場合、楕円形・方形・その他と比べて、土坑容量に対する土坑内表面積の割合が最も小さくなります。つまり土坑内に染み出る地下水の量が最も少なくなります。
同時に土坑が外気と接触する面積(蓋の面積)が円形型が最も小さくなります。
土坑の平面形状を円形型にすれば染み出す地下水からの影響、外気から受ける影響を最も少なくすることができます。
物の品質を損なうことなく長期間保存するためには土坑の形状を円形にすれば有利であることは縄文人の常識であったと考えられます。

3 断面形フラスコ・円筒土坑の平面型
断面形フラスコ・円筒土坑の平面型を見てみました。

フラスコ・円筒土坑の平面型

モノの貯蔵用であると発掘調査報告書で記述しているフラスコ・円筒土坑は圧倒的に円形型となります。

4 貝層土坑の平面形
貝層土坑の平面型を見てみました。

貝層土坑の平面型

貝層土坑が特定の機能の結びつくものかどうかは発掘調査報告書では記述されていません。
しかし、貝層土坑も円形型の割合が平均値より大きく、モノの貯蔵に関わっていたものが多かった可能性を感じます。

5 考察 土坑に関する仮説の芽
モノの貯蔵には平面形が円形であることが有利であることが判り、その事例としてフラスコ・円筒土坑があることが判りました。この分布図を作ってみます。
また、貝層土坑も円形のものが多く、不確かですが漁業という生業に関わるモノの保管・保存装置ととりあえず仮定して、その分布図を作ってみます。
更に、フラスコ・円筒土坑及び貝層・漆喰土坑を除いた土坑分布図を作ってみます。

フラスコ・円筒土坑

貝層・漆喰土坑

フラスコ・円筒土坑、貝層・漆喰土坑を除く土坑

この3枚の分布図から次のような思考が生まれました。
土坑に関する仮説の芽になると考えます。

・フラスコ・円筒土坑は大局的にみて円形に分布する集落の外側と内側の双方に分布していて、分布の規則性を感じることができます。堅果類の貯蔵庫であったと推定します。
・貝層・漆喰土坑は集落の内側に分布していて、その場所は野外漆喰炉があるなど生業活動の場であったと考えられます。従って貝層・漆喰土坑は生業に関わる機能と持っていた可能性を感じます。
・フラスコ・円筒土坑と貝層・漆喰土坑を除く土坑の分布図をみると集落中央部や集落外を含めて分布し、列状になっていることが特徴です。
これらの土坑の平面形に楕円や方形その他が数多く含まれています。
これらの多くが土坑墓であったと考えると、土坑全体像を大局的に把握できるようになります。
発掘調査報告書では土坑墓1、土坑墓の可能性のある土坑4を指摘していますが、楕円形土坑を中心にして、他の平面を含めて3ケタの土坑墓が存在していると想定してみることにします。
土坑墓は列状に作られていったと考えます。
竪穴住居の近く、竪穴住居から離れた集落中央部、円形集落の外側に想定土坑墓が分布するので、その意味の違いなど考察すべき興味が生れる仮説の芽が生まれました。


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