私の散歩論

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2017年10月8日日曜日

西根遺跡出土「杭」はイナウ 木製品利用の立体検討素図作成

1 「杭」はイナウ
西根遺跡出土「杭」の出土状況写真、「杭」の精細写真を千葉県教育委員会から提供していただき、ブログ掲載を許可していただき、検討を進めてきました。

この木製品は頂部削平、脚部削出があり上下がはっきりしていますが、「杭」であることは枝が1本残されていることから100%否定できます。なお、掃われた枝が大小3箇所ありますので、残された枝は意図して残したことがわかります。

またこの木製品には削りかけ(裏面に集中)、刻印(2箇所)、斜め方向刻み(2箇所)、面取り(2箇所)、小孔(37箇所)という彫刻がされていて、表面と裏面の確認ができ、表面と裏面の意匠パターンがほぼ同じになっています。

さらに小孔には同一工具(石器)跡が多数見られます。

これらの特性はこの製品が生産等の実用品として使われたものではないこと示しています。そのデザインがアイヌイナウと似ているところがあるので、祭祀用具として使われたことを想定することができます。この木製製品はアイヌイナウの祖形である縄文時代後期原始イナウであるとする仮説の蓋然性が高まります。

この製品が原始イナウであるかどうかの最終判定はこれから専門家にお願いしたいと考えます。

この記事と次の記事では、この木製品が原始イナウであると考えた時、どのように利用されたか、立体検討素図を作って空想してみたいと思います。この空想を持って「西根遺跡出土「杭」はイナウ」シリーズをとりあえず終わりにします。

2 立体検討素図作成
2-1 「杭」と丸木
4C09グリッドからは「杭」以外に丸木が出土しているようです。しかし丸木は自然木として廃棄され、出土物としての記載は当然のことながらされなかったようです。

「杭」と丸木出土状況

この丸木も「杭」と同じ木製品であると仮定して以下の検討を行います。

2-2 「杭」と丸木出土位置イメージ
発掘状況写真等から「杭」と丸木の出土位置、「杭」の上下と裏表は次のように特定できます。

「杭」と丸木出土位置イメージ

丸木の上下関係は「杭」と同じように観察できます。裏表は判りませんが、ここでは「杭」と同じであると想定してみます。

2-3 平面図の立体表現
平面図をGoogle earth proにプロットして立体表現しました。

平面図の立体表現 1

平面図の立体表現 2

2-4 木製品利用の立体検討素図作成
平面図の立体表現2に「杭」と丸木がその場に立っている状況を書き込むと、祭壇(イナウ)正面からみた焼骨・土器片堆積の状況を見ること(意識すること)ができます。またそれらと流路との関係も見ること(意識すること)ができます。

祭壇(イナウ)正面からみた焼骨・土器片堆積 祭祀活動考察のための立体検討素図

この立体素図を利用して次の記事で焼骨・土器片・イナウに関わる祭祀活動を空想してみて、このシリーズを区切ります。

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