私の散歩論

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2018年4月25日水曜日

貯蔵土坑規模限界要因の想定

大膳野南貝塚後期集落 土坑の再検討 30

1 貯蔵土坑の深さ-平均直径グラフ
貯蔵土坑であると推定した63基を対象に深さ-平均直径グラフを作成してみました。

貯蔵土坑(推定)の深さと平均直径
このグラフを作成する前は深さが浅くなるに従って深さに対する平均直径の比率が大きくなる(浅い土坑は平べったい筒状になる)というイメージを抱いていたのですが、そのイメージはまんざら間違いでないことが確かめられました。
次の図に示す通り、深さ1m前後を境にしてそれより浅い土坑は平べったいものがほとんどであり、1m前後以上の土坑は細長い筒状のものがほとんどになります。

深さ1m前後を境に土坑形状が変化する説明図
深さ1m前後を境に土坑形状が変化するだけはなく、散布状況も異なります。1m前後以上は疎ら、1m前後以下は密集します。
このグラフから貯蔵土坑が2種類に分類でき、その分類に有意義な意味がありそうだと直観しますので、追って詳細検討することにします。

2 貯蔵土坑規模の限界要因想定
次に、深さ-平均直径グラフから土坑規模の限界要因の想定ができますのでメモします。

貯蔵土坑の限界要因想定
●効果的貯蔵機能確保限界
貯蔵土坑として推定したものの深さは最も浅いもので0.31mのものがありますが、グラフからは0.4m程度付近が限界のように感じます。この深さ下限限界はモノを地下貯蔵するときに期待する腐敗防止・カビ防止・変質防止・熟成・発酵等の機能に関わる限界深であると仮説します。この仮説の検証が興味深い活動になります。
0.4mとか0.3mより浅い土坑にモノを貯蔵しても露地でモノを貯蔵するのさして変わらない効果しか得られないと想像します。

●効率的搬出入作業限界
貯蔵土坑で最深のものは2.66mです。この深さの土坑は容量も大きく貯蔵のためにモノを出し入れするのは困難が伴います。梯子も必要となり1回に搬出入できる量も少なくなります。そのような作業効率の悪さから縄文人がそれ以上深く掘るのを止めた限界が2.66mだったのだと仮説します。この仮説の検証も興味深い活動になります。
深い土坑は梯子を使って苦労してモノを搬出入するのですから、夏や秋に収穫した食物を搬入して春に搬出するという季節的利用ではないと想像します。食物が余った年に貯蔵し足りなくなった危機の年にはじめてそれを取り出すという非常時利用の土坑であると想像することが合理的です。
逆に考えると深い土坑が作られたということはすでに食糧不足危機を経験しているということです。

●人作業空間限界
貯蔵土坑にモノを搬出入するためには、土坑の中に人が入る最低限のスペースが必要です。その最低限のスペースを確保するために必要な平均直径が0.62m程度であると仮説します。この仮説の検証も興味深い活動となります。

●実用蓋築造限界
貯蔵土坑には雨・雪・風・直射日光を除けるとともに庫内空気と外気を遮断するための蓋が必須です。この蓋の築造には大きさの技術限界があり、その最大規模が平均直径1.72m程度であったと仮説します。それ以上の蓋は工作技術・土木設置技術・維持管理技術などから無理だったと考えます。この仮説の検証も興味深い活動となります。

以上の4つの限界により大膳野南貝塚後期集落では土坑規模が限定された範囲に収まったと考えます。

3 貯蔵土坑と送り場土坑の規模の比較
貯蔵土坑と送り場土坑の規模を比較するとつぎのようになります。

貯蔵土坑と送り場土坑の深さと平均直径
送り場土坑はモノを貯蔵しなので貯蔵土坑より浅いものが多くなっています。
また人がその中に入る必須性がないので平均直径が小さいものも含まれます。
さらに送り場土坑は蓋をする必要がないので平均直径が大きなもの(最大3.02m)も含まれます。
このグラフから貯蔵土坑規模を相対化でき、その特性をより明確に把握できます。

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