私の散歩論

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2018年8月20日月曜日

縄文後期イナウ似木製品に関する考察

縄文後期イナウ似木製品の観察と解釈例 7

2018.08.19記事「縄文後期イナウ似木製品は鳥の造形物」でイナウ似木製品は鳥を造形していると解釈しましたが、その意味を考察します。

縄文後期イナウ似木製品が鳥の造形であるとする解釈

イナウ似木製品の出土状況は次の写真の通りで、破壊された多量の土器、枝の燃え殻、多量の焼骨と一緒に出土します。これらの出土物が意味するものととイナウ似木製品が鳥の造形であることを関連付けて分析することが大切であると考えます。

イナウ似木製品の出土状況
これまでの検討で多量の破壊土器は堅果類アク抜き用土器の廃用土器をこの場で破壊した土器送りであり、それは堅果類収穫の感謝や増収祈願の祭祀であったことを想定しました。
焚火の跡と多量の焼骨は飾り弓出土とも関連して獣送りの跡であり、イオマンテ類似活動が行われ獣を食し、焼骨をつくった祭祀の跡であることを想定しています。
これからの祭祀のうち鳥を造形したイナウ似木製品は堅果類収穫祭祀と関連するのではないかと考えました。狩猟祭祀ではイノシシやシカの骨が焼骨となっていて鳥は明らかに狩猟のメイン対象ではないので、鳥造形と狩猟祭祀を結びつけるのは困難です。
鳥造形と堅果類収穫祭祀は鳥が堅果類をもたらす使者であると縄文人が考えていたとすると密接に結びつきます。
鳥が夏にやってきて堅果類の実を木々にもたらし、その結果秋に豊かな堅果類収穫があるという物語をイナウ似木製品は表現していると考えられます。
B面は夏に鳥がやってきて木々に堅果類の実をもたらしている様子を、A面はやってきた鳥が梢にとまりさえずり、堅果類が育っていく様子を見守っている様子を表現していると考えることができます。
夏にやってくる鳥は縄文人がだれでもその来訪を知ることができるホトトギスであると考えます。初夏に来訪したホトトギスが昼夜を分かたず飛びながら、あるいは梢でけたたましい声で鳴く様子からそれと堅果類が木々で育っていく様子を重ね合わせたのだと考えます。
イナウ似木製品は堅果類収穫感謝あるいは堅果類増収祈願の祭具であり、それにふさわしい鳥の造形をほどこしたのだと思います。
イナウ似木製品は祭壇を構成するような祭具(祈願具)として使われたのではないかと考えます。
このような考えで西根遺跡の収穫祭祀全体をまとめると次のようになります。

西根遺跡における収穫祭祀全体像(想定)

なお、発掘調査報告書では多量の生活用土器が出土しているのに祭祀用土器がただの1点も出土しないことが特記されています。その意味は野外における収穫関連祭祀では「祭祀用土器」が使われないで、祭具としてイナウ似木製品や飾り弓が使われたと考えると合点がゆきます。「祭祀用土器」は住居内における「生と死」「出産、育児」「もがり、葬送」「病気と健康」「祖先との交流」など生業と離れた分野の祭祀専用であったのかもしれないと考え、学習を深めることにします。

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