私の散歩論

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2019年3月18日月曜日

安産直後を描写した顔面付釣手形土器

縄文土器学習 67 顔面付釣手形土器 3

伊那市創造館所蔵顔面付釣手形土器(国重要文化財、伊那市富県御殿場遺跡出土 縄文中期 4700年前竪穴住居跡)の学習をしています。
顔面付釣手形土器の写真をさらに子細に観察した結果をまとめました。

1 顔面付釣手形土器の3Dモデル
展示館における顔面付釣手形土器ショーケースは3方から写真撮影可能であり、36枚の写真を撮りました。

36枚の写真 一部

36枚の写真(トリミング) 一部

大いに期待して3DF Zephyr liteにより3Dモデル化作業しましたが、見事に失敗しました。満足のゆくモデルが作成できませんでした。
ガラスケースの反射が大きな障害となっているようです。ガラスケースに入った土器の3Dモデル作成はガラス面反射がほとんど無いたまたまの条件の時以外は無理のようです。

ただ、36枚の写真を観察すると、数枚程度の写真を観察する場合と較べて比較にならないほどの有益情報を汲みだすことができます。
結果として3Dモデルが出来なくとも、3Dモデル作成用の写真撮影はとてもよい学習習慣になると考えます。

2 顔面付釣手形土器が描写する出産直後の様子

安産直後を描写した顔面付釣手形土器
住居の上から紐で妊婦を吊るして、重力を利用して出産した直後の様子がこの土器に表現されています。
aは天井に紐を掛ける道具であり、それが妊婦の尻付近にあるのですから、掛け具はもう天井に架かっていません。
bはメインの紐です。この紐が妊婦の体重を支えていました。既にこの紐に力はかかっていませんから、縮んでいて妊婦の背中あたりにあります。
cは脇下紐とメイン紐を繋ぐ紐縛り具です。単なる紐の結び目ではなく、妊婦の背中付近で安全に紐を繋ぐ道具が存在していたと考えられます。
dは脇下紐(背中)です。
eは足紐です。足を持ち上げ開いた状態にする機能があったと考えます。青点線で示したように、この紐はa掛け具とd脇下紐(背中)に結ばれています。足(空洞部分)の下でこの紐が飛び出している部分があります。これは紐が足のももに喰い込まないような添え具の存在を表現してるものと想像します。
fは脇下紐(胸)です。土器は出産直後の様子を表現していますから、この脇下紐がだらりと垂れ下がっています。

3 感想
・出産直後つまり安産直後様子を示していますから、顔面は出産女性が喜びのため息をついている様子であると考えます。出産中の苦しみを表現していると考えたことは間違いでした。
・安産直後の女性の喜びのため息と弛緩した吊るし紐が、命誕生の喜び(安産)を表現しています。
・まさにこの土器は安産のイコン(アイコン)です。安産祈願祭具です。
・この土器は縄文中期出産に関わる道具や方法を示している貴重な資料であると考えます。
・縄文人の最大の関心事は生命の誕生、人の死、食料確保の3点であるような気がしてきました。祭祀と呼べるものは恐らくこの3点に収れんするのではないかと空想します。

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