私の散歩論

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2020年1月27日月曜日

「加曽利EⅠ式土器らしさ」の評価

縄文土器学習 324

加曽利貝塚博物館企画展「あれもE これもE -加曽利E式土器(千葉市内編)-」(平成30年度)と「同(印旛地域編)」(令和元年度 開催中)の展示土器(深鉢等)のうち加曽利EⅠ式土器8点を同じ視点で観察しましたが、この記事では8土器を一括して評価し、「加曽利EⅠ式土器らしさ」を導いてみました。加曽利E式土器観察に自分の目を慣らすための一種の知的遊戯です。

1 「加曽利EⅠ式土器らしさ」を導く評価項目
「加曽利EⅠ式土器らしさ」を導く評価項目としてキャリパー形、胴部ふくらみ、把手有無、段構成、口縁部刺突文、懸垂文、口縁部渦巻文の7項目を設定しました。

2 評価項目に与える評点
各項目について「加曽利EⅠ式土器らしさ」の観点から評価区分し、小さいもの1点、中間のもの1.5点、大きいもの2点を与えました。
「加曽利EⅠ式土器らしさ」小さいものとは加曽利EⅠ式土器より前の土器形式の姿を残しているものです。大きいものとは加曽利EⅠ式土器の特徴とされているものや加曽利EⅡ式土器の特徴とされているものです。中間ののもとは小さいものと大きいものの中間的性格であると考えるものです。
具体的評価区分と評点は次の通りです。
1 キャリパー形
ラッパ形   1点
口縁部内傾形 1.5点
キャリパー形 2点
2 胴部ふくらみ
ふくらみほとんど無し 1点
ふくらみ極小     1.5点
ふくらみ小      2点
3 把手有無
把手あり    1点
小立体装飾あり 1.5点
把手なし    2点
4 段構成
2段構成 1点
3段構成 2点
5 口縁部刺突文
口縁部刺突文あり 1点
口縁部刺突文なし 2点
6 懸垂文
懸垂文なし 1点
懸垂文あり 2点
7 口縁部渦巻文
渦巻文なし    1点
「渦巻文」様あり 1.5点
渦巻文あり    2点

3 評価方法
7つの評価項目の評点を土器毎に集計して、合計評点の大きいものが「加曽利EⅠ式土器らしさ」が大きいとしました。

4 項目別評価結果

1 キャリパー形

2 胴部ふくらみ

3 把手有無

4 段構成

5 口縁部刺突文

6 懸垂文

7 口縁部渦巻文

5 「加曽利EⅠ式土器らしさ」総合評価

「加曽利EⅠ式土器らしさ」総合評価

「加曽利EⅠ式土器らしさ」総合評価表

6 感想
知的遊戯にすぎませんが、このような作業をしてみるとつぎのようなことがわかりました。
ア 加曽利EⅠ式土器であるという判別はそれより以前の土器形式と加曽利EⅡ式土器の特徴と比較して行っているように感じられます。したがって加曽利EⅠ式土器の判別をするためには前後区分の特徴を詳しく知っている必要があります。(今は加曽利EⅠ式土器前の型式の特徴を詳しく知りません。)
イ 評価項目毎に土器の分布はある程度ばらけることから、その土器を「加曽利EⅠ式土器」として判別するのはあくまでも総合評価(名人芸)のようです。
ウ 評価項目のなかにも軽重があり、キャリパー形、懸垂文、口縁部渦巻文などは決定権を持つような重要性があるようです。
エ 加曽利EⅡ式土器の最大の特徴が磨消縄文登場であることを考えると、加曽利EⅠ式土器での懸垂文登場の意義が極めて重大であると考えます。懸垂文登場の背景には加曽利EⅠ式期社会の重要動向が存在している(対応している)と考えます。
オ 懸垂文登場は表現すべき文様を口縁部に集約するという意思表示であると考えます。

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