縄文石器学習 27
以前から石棒先端に施される装飾の意味が判らず気になっていました。各地展示施設学芸員の方に尋ねても納得のいく答えには出会えませんでした。
ところが、土製耳飾の装着のために耳たぶ穿孔拡大という身体変工が行われていることを知り、さらに世界中の身体変工事例を学習するなかで、石棒先端装飾が身体変工を表現しているものだと直感できましたのでメモしておきます。特段の証明材料はありませんが、自分にとっては蓋然性の高い直観です。
1 石棒先端の装飾例
石棒先端装飾を示す例(これまでに作成した3Dモデル画面)
・尖石縄文考古館出土石棒…中期
・匝瑳市のさか図書館展示石棒…晩期(匝瑳市豊和地区出土)
・加曽利貝塚博物館展示石棒…後期加曽利B3式(112号住居)
加曽利貝塚博物館展示石棒の実測図
貝塚博物館紀要第8号から引用
・清瀬市郷土博物館展示石棒…中期(清瀬市野塩外山遺跡)
いずれの石棒も先端部に輪状の凹みが装飾されています。
2 石棒先端装飾の意味(想像)
石棒先端装飾はペニス亀頭部にリング状のモノを付けて施した変形(身体変工)を表現していると直観します。直接の証明はそのような身体変工を施した遺体が発掘される可能性はほぼゼロであるのでできないと思います。しかし、民族例を詳しく調べればその仮説のより説得的な説明はできると考えます。
ペニス先端を変形させる意味は、それだけの苦痛を克服するという通過儀礼的な意味と、性行為における効果に関連すると想像します。
3 ペニスにかかる身体変工の例
ウシュマル遺跡(メキシコ、マヤ文明)でペニスの竿部分に身体変更を施した石像を観察したことがあります。
ペニス竿部分の多数の傷跡
残念ながら亀頭部は欠けています。
傷のついたペニスを出した石像
案内人の説明では重要な祭祀ではリーダーがペニスから放血し、その血が祭祀に使われたとのことです。そのような傷跡をペニスに持つことがリーダー(=シャーマン)の要件だったようです。
ウシュマル遺跡全景
4 感想
ペニスにかかる身体変工は汎世界的に存在するようですから、縄文時代に存在しないと考える方が疑わしいくらいです。しかし調べようがありません。
石棒祭祀の背景に男性によるペニスの身体変工があると考えます。石棒祭祀の検討にはペニス身体変工の存在について考察することが不可欠です。
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