縄文土器学習 546
縄文土器学習に土器容量の検討は欠かせませんが、3Dモデルを利用した土器容量の計測法を知りませんので、その実用的計測方法の原理を検討してみました。
1 展示縄文土器の3Dモデルに実寸法を付与する
展示縄文土器の3Dモデルを作成し、それに実寸法を付与する方法は自分レベルでは既にその方法が確立しました。一言でいえばショーケース外側そばにファイバー製折尺を置いて、それとショーケース内土器を含めた3Dモデルを作成します。それで3Dモデルには実寸法が付与されます。
なお、展示土器の説明名札の特定特徴が同一規格なら、それをスケール代わりにできます。つまりある展示土器の名札の寸法がわかれば、それをスケール代用品として利用できますから、他の土器撮影でいちいち折尺を利用することはありません。
2012.02.10記事「縄文土器群理解の指標としての大きさ(容量)」
実寸法により計測された土器 正面から
実寸法により計測された土器 上から
2 展示土器3Dモデルの計測用疑似モデル作成による体積測定(開発中)
展示土器3Dモデルは背後からの情報、内面情報が欠落しますので、それから土器容量を求めることは出来ません。そこで、展示土器3Dモデルに近似した計測用回転体3Dモデルをつくり、その体積を求めることにします。土器に入る液体の量、つまり容量の計測の前のステップとして土器全体の体積(土器体体積+液体が入る量)を求めることにします。加曽利EⅠ式深鉢(No.37)(野田市東亀山遺跡)を例にします。
ア Photoshopによる計測用回転体3Dモデルの作成
実寸法を付与した展示土器3Dモデルのオルソ投影断面(正面から)から断面線をトレースしました。
断面線トレースの様子
断面線トレース結果(左縦線は対照用10㎝線)
断面線をPhotoshopに投入して回転体3Dモデルを作成しました。
Photoshop3Dモデル機能による回転体3Dモデル
この計測用回転体3DモデルをWavefront(.obj)ファイルに書き出します。
イ Blenderによる計測用回転体3Dモデルの計測(開発中)
そのWavefront(.obj)ファイルをBlenderに読み込み、Blenderの体積求積機能(アドオン Mesh:3D Print Toolbox)で体積を求めました。
Blenderで体積を求めた様子
しかし、しかし・・・、体積の値が天文学的数値になっていて、単なる桁間違いや桁設定ミスではななさそうなので、現在暗礁に乗り上げている状況です。Blenderの体積求積は正確に機能しているので、Photoshop作成の計測用回転体3Dモデルに何か問題がありそうです。感覚的には、もう少し試行錯誤を重ねれば、この方法で求積できるに違いないと楽観しています。
3 パップス-ギュルダンの定理による体積測定
パップス-ギュルダンの定理によれば、回転体体積は次の公式で測定できます。
(回転体の体積 V) = (図形 F の重心 G が回転により描く軌跡の長さ) × (図形 F の面積 S)
この方法で縄文土器体積を求積しました。
ア 重心位置計測用3Dモデル作成
Photoshop3Dモデル機能を利用して重心位置計測用3Dモデル(押出)を作成しました。
Photoshopによる重心位置計測用3Dモデルの様子
イ 重心位置と回転軸との距離
この3DモデルをBlenderに投入して重心位置を表示し、その画像から重心位置と回転軸までの距離を求めました。
Blenderによる重心と回転軸との距離計測
重心と回転軸との距離=4.22㎝
これから、重心が回転により描く軌跡の長さ=2×π×4.22㎝となります。
ウ 回転体図形の面積測定
Photoshopに次の図形を投入して計測ログ機能により土器断面図(半裁)の面積を計測しました。
Photoshopにおける土器断面図(半裁)面積測定の様子(左四角形は対照用10㎝×10㎝矩形)
土器断面図(半裁)の面積=237.21㎝2
エ パップス-ギュルダンの定理による体積測定
縄文土器体積(計測用回転体3Dモデル)=2×π×4.22×237.21=6286.44㎝3≒6.29リットル
4 感想
実寸法を付与した展示土器3Dモデルから計測用回転体3Dモデルを作成し、それをBlenderに投入して体積を測定できるようになれば、手間が省け作業が効率化します。
計測用回転体から土器体の厚さ(器壁の厚さ、底の厚さ)を差し引いた回転体をつくれば、土器容器に入れることのできる液体容量を計測することができます。
土器容量の変化が型式によってどのように変化するのか知ることができれば、それを手がかりの一つとして社会の様子をよりクリアに推察することができます。
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