私の散歩論

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2021年10月21日木曜日

原田昌幸「土偶の多様性」学習

 縄文時代土偶及び関連事項について専門的図書・論文を学習してある程度体系的で新しい知識を身につけることにしました。趣味として土偶を楽しむにしても最低限の基礎知識がなければより深く楽しむことが出来ないからです。

次の図書に掲載されている諸論文は興味深いものが多いので、逐次学習することにしました。

「縄文時代の考古学11 心と信仰 宗教的観念と社会秩序」同成社 2007

目次

1 総論 

縄文文化の宗教的観念と社会秩序〔小杉康〕

2 まつりの道具 

土偶の多様性〔原田昌幸〕

土偶の社会的意味機能―縄文終末から弥生前半における象徴的歴史観―〔阿部友寿〕

遮光器土偶〔金子昭彦〕

岩偶(晩期)〔稲野裕介〕

省略形土偶〔伊藤正人〕

仮面―遺跡における組成論―〔磯前順一〕

石棒〔鈴木素行〕

刀剣形石製品〔後藤信祐〕

石冠とその類品〔西脇対名夫〕

後期岩版類〔長田友也〕

3 モニュメント 

環状列石の造営〔宮尾亨〕

環状列石(東北・北海道地方)〔小林克〕

環状列石(関東・中部地方)〔石坂茂〕

環状木柱列〔西野秀和〕

大規模記念物と二至二分〔太田原(川口)潤〕

4 宗教的観念 

他界観念〔丹羽佑一〕

祖先祭祀〔谷口康浩〕

宗教的観念の発達過程(比較文化論)〔松本直子〕

屋内祭祀の性格〔山本暉久〕

物語性文様―縄文中期の人獣土器論―〔小杉康〕

5 文化移行期の祭祀 

縄文―弥生移行期における祭祀と変化〔小林青樹〕

縄文―弥生移行期における祭祀と変化(九州)〔大坪志子〕

縄文―弥生移行期の大型石棒祭祀〔中村豊〕

原田昌幸「土偶の多様性」(「心と信仰」同成社、2007)を学習しましたのでメモします。土偶型式の分類系統について要約的に情報を入手できたと思います。以下自分が興味をもった事項と感想をメモします。


「縄文時代の考古学11 心と信仰 宗教的観念と社会秩序」同成社2007の箱

この記事では原田昌幸「土偶の多様性」学習結果をメモします。

1 要旨メモ

ア 発生期・出現期土偶

・トルソー、 顔がない、四肢がない、意図的に壊していない。

・撚糸文土偶様式は地域偏在する。 房総中心、土器は広域に分布するのに。土偶受容に地域差。

イ 前期土偶

・前期土偶に顔表現の指向、立像への移行形態

ウ 中期土偶

・平面的顔表現、カッパ形

・縄文のビーナスの急速な完成…縄文社会の上昇的発展が反映されている。

・立像土偶の爆発的盛行、豊かな顔面表現…豊穣のシンボルの役割獲得

・最初の土偶盛行ピーク

・土偶多出遺跡とそうでない遺跡の峻別傾向

エ ポーズ土偶

・子どもの出産・養育・育児…家族レベルの祭祀

・仮面舞踏…集落単位以上の集団祭祀

オ 中期後半

・加曽利E式、曽利式土器様式になるとポーズ土偶が消滅、連弧文系土器様式の地域に限って素朴な先祖帰りした橋本土偶型式が分布する。土偶の手抜き…土偶役割期待の低下

・加曽利E式の東関東ではほぼ完全に消滅

・橋本土偶型式も加曽利EⅢ式期を最後に消滅

・加曽利EⅣ式期から後期初頭称名寺式土器様式の時期には、東北地方の一部を除き、ほぼ全国から土偶は消える。

・縄文世界における最初の「土偶存続の危機」

カ 後期前半

・堀之内土器様式期にハート形土偶 見事な「土偶の復活劇」

・仮面の女神 「カミ」の表象として豊穣の女神としてのトルソーが意識され始めた。体部表現に性表象を取り入れた結果。

キ 後期後葉

・加曽利B式土器様式期 山形土偶…板状化、「ひとがた」への抽象化の意識が顕著 性表象はわずかに読み取れる。椎塚土偶型式

・ひとがた像の変貌はカミの姿がつねに細かく変化しつづけていたから かもしれない。

ク 後期安行式土器様式期

・ミミヅク土偶 滝・馬室土偶型式 顔面がより具象から離れる 「ひとがた」像の極度の抽象化 豊穣のトルソーを離れてカミの姿へ昇華 性的表象が捨象 →後期後葉になってはじめて「性を超越した造形物・カミの姿。これ以前は土偶=女性像の潜在意識が働いていた。

・遮光器土偶 亀ヶ岡土偶型式 他の土器様式圏まで広く影響 最も効力がある土偶造形が模倣された。


自分専用学習図解メモ

2 感想メモ

・一般向け概説書ではない専門書としての土偶型式分類系統説明を初めて学習しました。余分な情報がないので土偶全体像をコンパクトに一気に理解できました。頭の中が整理できました。

・土偶の役割が大きくなる時期(土偶が盛行する時期)があるとともに土偶がほとんど消滅する時期があります。その理由はなぜか知りたくなります。現象的には土偶祭祀の効果がなくなったので土偶を捨てたということだと思いますが、土偶祭祀の効力がなくるような社会状況とはどのようなものか?

・加曽利EⅣ式~称名寺式期には土偶は東北の一部を除き全国からほとんど姿を消しています。この時期に関東では鳥頭突起付土器が出土します。土偶祭祀の代替として鳥信仰があった可能性があるのかどうか興味が深まります。

・この論文では家族レベル利用と集団レベル利用の区分など土偶利用について触れられていすが、もう少しリアルに祭祀体系(神話・呪文・儀礼・式)を知りたくなります。本書の別論文にそのような記述があるのか今後の学習が楽しみです。

・これまで自分が作った土偶観察記録3Dモデルは丁度50あります。この土偶3Dモデルをこの論文で学習した型式・様式で再整理したいとおもいます。

これまでに作成した土偶観察記録3Dモデル 


Sketchfab「土偶 arakiminoru」検索結果

なお、以前作成した土偶観察記録3Dモデル20選には時期が間違っているものがあり、本書情報をもとに修正することにします。


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