私の散歩論

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2022年6月6日月曜日

出産文土器4点の観察記録3Dモデル(同スケール)

 Observation record of 4 pottery with birth pattern 3D model (same scale)


In order to deepen my thoughts on the four pieces of pottery with a birth pattern, I created a 3D model arranged on the same scale. Looking at the 3D model, I wondered what I was interested in and what I had doubts about. As a result, a wealth of thoughts were born, so I made a note of it.


出産文土器4点について思考を深めるために、同スケールで並べた3Dモデルを作成しました。何に興味を持つのか、何に疑問があるか、豊かな思考が生まれましたのでメモしました。

1 出産文土器4点 観察記録3Dモデル

出産文土器4点 観察記録3Dモデル

左から

1 出産文土器(北杜市海道前C遺跡)

https://skfb.ly/ouVDB

2 顔面把手付大深鉢(伊那市月見松遺跡)

https://skfb.ly/ouWWu

3 出産文土器(北杜市酒呑場遺跡)

https://skfb.ly/ouWoZ

4 出産文土器複製(北杜市津金御所前遺跡)

https://skfb.ly/ouUGS

いずれも時代は縄文中期中葉

●撮影諸元 1、3、4

撮影場所:山梨県立考古博物館令和4年度春季企画展「心を描く縄文人 -人面・土偶装飾付土器の世界-」

撮影月日:2022.06.01

ガラスショーケース越し撮影

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v6.505 processing 317 images

●撮影諸元 2

撮影場所:伊那市創造館

撮影月日:2021.11.08

展示の様子

ガラス面越し撮影

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v6.010 processing 187 images

4 points of pottery with birth pattern    Observation record 3D model

From the left

1 Birth pattern pottery (Kaidoumae C site,Hokuto City) Observation record 3D model

https://skfb.ly/ouVDB

2 Deep bowl with face handle (Tsukimimatsu Ruins, Ina City) Observation record 3D model

https://skfb.ly/ouWWu

3 Birth pattern pottery (Sakenomiba site,Hokuto City) Observation record 3D model

https://skfb.ly/ouWoZ

4 Birth pattern pottery reproduction (Tugane Goshomae site,Hokuto City) Observation record 3D model

https://skfb.ly/ouUGS


3DF Zephyr Lite画像


3DF Zephyr Lite画像(オルソ投影)


3Dモデルの動画

2 メモ

2-1 「出産文土器4点 観察記録3Dモデル」の順番

山梨県立考古博物館のページでは4つの出産文土器を並べて、出産文土器の変遷を論じています。「出産文土器4点 観察記録3Dモデル」はこれと同じ順番で4つの土器を並べて、思考をしやすくしました。


出産文土器の変遷

山梨県立考古博物館のページ「おうちde土器のものがたり10「出産文土器とその意味」」から引用


2-2 感想メモ

「出産文土器4点 観察記録3Dモデル」をじっくり観察して、次のような興味や疑問が湧いてきました。今後順次詳しく検討していくことにします。なお、次のように土器を略称します。

1 出産文土器(北杜市海道前C遺跡)→土器1

2 顔面把手付大深鉢(伊那市月見松遺跡)→土器2

3 出産文土器(北杜市酒呑場遺跡)→土器3

4 出産文土器複製(北杜市津金御所前遺跡)→土器4

2-2-1 山梨県「変遷」について

2-1の山梨県「変遷」について次のような興味と疑問が湧きました。

ア 興味

「出産文土器は土器の製作者が描いた瞬間の違いで、胎児の状態が異なります。海道前C遺跡は生まれる前、酒呑場遺跡のものはちょうど顔が見えたところでしょうか。津金御所前遺跡のものもは酒呑場遺跡のものより、更に場面が進んでいます。」という説明に強い興味をおぼえます。

私は、縄文人は霊界から新生児が母体を媒介にして現実界にやってくると考えていると想像しています。そのように考える縄文人にとって出産とは霊界と現実界がつながる瞬間であり、普段は体験できない貴重で感動的な瞬間であったと考えます。そのような感動的な出産に関わる儀式で使われたのが出産文土器であったと考えます。

そのような出産におけるプロセス(分娩プロセス)を縄文人は熟知していたことは間違いありません。出産文土器4点を並べるとその分娩プロセスを図解するように見えるという山梨県「変遷」はとても興味深い仮説です。

イ 疑問

一方、次のような疑問も湧きます。

土器1の産道部には縦に太い隆帯が貼り付き出口を塞いでいます。まだお産が始まっていない状況です。出産を寿ぐ儀式に使う土器で、産道出口を塞ぐ意味が理解できません。土器1の産道部の解釈は別に存在する可能性があるのではないだろうかと疑問が生まれます。

土器2の産道出口の小さな半球は産道から出だした新生児の頭という具象的なものではなく、記号的に〇〇を表現していると考えます。〇〇とは新生児頭部であると考えます。記号として新生児頭部(産道から出た首から上)を表現していると考えることもできます。そのように考えると、土器2は土器3や土器4と同じ分娩段階を表現していると見ることも可能です。

土器3の新生児顔は目が線で描かれ、口が曲がり、そうした状況から産道から顔を出しはじめている様子を描いているようにも見えます。しかし、現実の分娩では産道が開いて頭から生まれてきますから、このような画面は現実にはありません。(出産事故の一つとして顔を先頭に生まれることもあるそうです。)

土器4の新生児も産道から顔を先頭に生まれてきていますから、現実にはあり得ない状況です。

しかし、頭から生まれる新生児の首から上全部が出た時、顔が見えることになります。出産を手伝う人々は首を出した新生児を見る時、必ず新生児の顔を見ます。その時母体との位置関係などあまり意識することなく、新生児の顔だけに意識を集中するのではないだろうかと想像します。つまり、実際の分娩で新生児は顔から生まれるのではなく、頭から生まれるのですが、分娩の様子を体験する人々がまず見るのは新生児の顔です。ですから出産の様子を土器3や土器4として表現することは極自然であると考えます。縄文人が表現したかったのは出産の真実ではなく、出産で受けた印象であったと考えることが妥当と思います。そのように考えると、土器3と土器4は出産プロセスの時間差ではなく、単なる平面表現か、立体表現かという違いになると考えます。

以上をまとめると、出産プロセスという点では土器2、土器3、土器4は同じであるという考えもありると思います。

2-2-2 人面は人か神か

4つの土器に合計6つの具象的人面が描かれています。それらの人面が人間なのか神なのか仮説を持つことは必須の学習要件になります。私は人面は神を描いていると考えます。専門家はどのように考えているのでしょうか。

2-2-3 6つの人面の特徴が一致する理由

6つの人面特徴はつり目、上向いた鼻孔、丸い口、カモメ状の眉など一致します。そのような同じ特徴をなぜ母(母神)と子(子神)で描くのか疑問が生まれます。この表現は人ではなく神を描いているから母神も子神も区別しないのか。

2-2-4 人面特徴の意味

つり目、上向いた鼻孔、丸い口、カモメ状の眉という特徴の意味を知りたくなります。つり目と上向いた鼻孔の意味が判りません。丸い口は歌を歌ってると解釈します。カモメ状の眉は縄文人の実際の顔形特徴を表現していると理解します。

2-2-5 産道の上の双環

4つの土器ともに産道の上に双環があります。土器1、土器2、土器3には人面把手裏側の同じ位置に双環があります。双環は人面の一種であると山梨県立考古博物館企画展「心を描く縄文人 -人面・土偶装飾付土器の世界-」で説明されています。そうだとすると、この双環(つまり人面)は出産当事者の母(母神)や子(子神)とどのような関係にある人(神)なのでしょうか。

2-2-6 人面把手裏側の文様の意味

土器1、土器2、土器4の人面把手裏側の文様の意味は同じ趣旨なのでしょうか。出産との関わりはどのように解釈できるのでしょうか。

2-2-7 出産文土器の本来の利用目的

出産文土器の本来の利用目的はどのようなものであったのでしょうか。安産祈願や出産を祝う祭祀で使う料理のための調理道具でしょうか。産湯を沸かしていたのでしょうか。

展示説明では、土器1は出土状況から棺として使われたとのことです。もし最初から棺として使うためにこの土器がつくられたと理解すると、文様解釈が出産文ではなく、死産文となり、死産を弔うための土器になります。

2-2-8 胴部文様の意味は

4つの土器の胴部文様は似ているようにも感じます。それぞれの土器文様の意味はどのようなものになるのでしょうか。

2-2-9 出土状況

4つの土器の出土状況を発掘調査報告書から調べることにします。

2-2-10 出土遺跡の状況

4つの土器が出土した遺跡の状況を発掘調査報告書から調べることにします。


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