私の散歩論

ページ

2022年11月23日水曜日

有吉北貝塚北斜面貝層 全期土器集成3D分布図作成と考察

 North Slope Shell Layer of Ariyoshi Kita Shell Mound   3D Distribution Map Creation and Discussion


I created a 3D distribution map of all-stage pottery from the North Slope Shell Layer of the Ariyoshi Kita Shell Mound, compared it by period, and considered the distribution pattern (pottery disposal pattern). After the Kasori EII period, the percentage of pottery discarded at the bottom of the valley increased sharply compared to before that.


有吉北貝塚北斜面貝層の全期土器を集成した3D分布図を作成し、期別比較などを行い、分布パターン(土器投棄パターン)について考察しました。加曽利EⅡ式期以降の土器はそれ以前と比べると谷底部投棄の割合が急増します。

1 貝層-土層境界面の把握

貝層が登場する貝層断面図は11枚ありますが、その全ての断面図で貝層と土層の間に垂直方向の境界面があります。


貝層-土層境界面

この貝層-土層境界面は次のように生成したと考えられます。

・西岸側(左岸側)斜面上から貝が投棄され、斜面貝層が形成する。

・雨が降ると斜面貝層最下部では貝層が水流で下流方向(北方向)に移動する。

・一方東岸側(右岸側)斜面では、雨が降ると土が水流で斜面を下り、斜面最下部では下流方向(北方向)に流れる。

・西岸側の貝層流下と東岸側の土流下が接触すると、その双方ともに虚弱な運動であるため、つまり上流からパワーのある水流が流れてくるような状況ではないため、貝層と土層は混じることは無かった。(上流からパワーのある水流が流れてくれば、貝層と土層は混交し、貝層の間に土層のレンズが、逆に土層の間に貝層のレンズが各所にみられるはずです。)

つまり、貝層-土層境界面の存在は下流方向への流れが大変弱かったことを示しています。

貝層-土層境界面は次のように分布します。


貝層断面図と貝層-土層境界面


貝層-土層境界面

2 土器破片3D分布

2-1 阿玉台式~加曽利EⅠ式 土器破片3D分布


阿玉台式~加曽利EⅠ式 土器破片3D分布

第2群~第8群土器破片119点

土器は全て斜面上から投棄されたように観察できます。貝層-土層境界面近くまで移動した土器破片はあまり多くありません。貝層-土層境界面を越えた土器破片はほとんどありません。

2-2 加曽利EⅡ式~加曽利EⅢ式 土器破片3D分布


加曽利EⅡ式~加曽利EⅢ式 土器破片3D分布

第9群~第12群土器破片581点

注目すべき事象として、谷底に土器破片が集中し、その分布が貝層-土層境界面をまたいでいることです。虚弱とはいえ上流から下流へ向かう水流により貝層や土層が移動しているのですが、その移動経路とは別に集中堆積土器破片が分布しています。この事象から、集中堆積土器破片は水流の力で分布したのではなく、人為的投棄で分布したものと考えます。

また、「阿玉台式~加曽利EⅠ式 土器破片3D分布」における土器破片の斜面部と斜面脚部(谷底)の割合が、斜面上部から土器を投げ捨てた場合の割合を示していると考えると、加曽利EⅡ式~加曽利EⅢ式土器破片3D分布の斜面脚部の割合は異常に大きく、その面からも集中堆積土器破片は斜面投棄由来ではないことが支持できます。

なお、この図でいままで気が付かなかった東岸(右岸)からの斜面投棄も確認できます。

3 メモ

3-1 集中堆積土器の由来

北斜面貝層の土器分布は大局的にみるとS字状をなし、これまで水流の経路に関わるという印象を漫然ともっていました。しかし、貝層-土層境界面と集中堆積土器分布が交差することから、つまり貝層分布(地層分布)と土器分布が交差することから、土器分布は人為的なものであり、水流による影響は弱いことがわかりました。

集中堆積している土器は上流で投棄されて、流れて来て堆積したものはすくなく、ほとんどのものはその場で投棄されたことが想定できます。

3-2 294土器の分布原理

3D分布情報が整備されるにつれて、同一土器破片(例294土器)の分布原理に関して、自分の考えが次のようにダイナミックに変転しています。情報整備の大切さを痛感するとともに、一歩ずつ学習が進んでいる(認識が深まっている)ことは学習冥利につきます。

北斜面貝層の土器分布原理の見立て(作業仮説)

●縄文人が各所に撒いて歩いた。→●谷頭急斜面から投棄した。→●谷頭急斜面および下流斜面の2ヶ所からの投棄した。→●複数斜面からの投棄と複数谷底での投棄が組み合わされた。(結局、最初の「縄文人が各所にばら撒いて歩いた。」と同じです。)


294土器の3D分布

4 参考 有吉北貝塚北斜面貝層 全期土器破片3D分布モデル

有吉北貝塚北斜面貝層 全期土器破片3D分布モデル

阿玉台式~加曽利EⅢ式土器破片700点

土器破片1つを30㎝×30㎝×30㎝の立方体で表現

曲面は貝層-土層境界面

断面線は2mピッチ

水平:垂直=1:1

North Slope Shell Layer of Ariyoshi Kita Shell Mound  3D Distribution Model of Full-Stage Pottery Fragments

Otamadai-style to Kasori EIII-style pottery fragments 700 pieces

Express one piece of pottery in a 30cm x 30cm x 30cm cube

The curved surface is the interface between the shell layer and the soil layer.

Cross-section line is 2m pitch

horizontal: vertical = 1:1



0 件のコメント:

コメントを投稿