私の散歩論

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2023年3月17日金曜日

花見川の法的名称は印旛放水路(下流部)

 花見川よもやま話し 第13話


The legal name of the Hanami River is the Inba Discharge Channel (Downstream).


The legal name of Hanami River is "Inba Discharge Channel (Downstream)". Feeling uncomfortable with this difference, I once asked a river administrator a question and received an answer. Since the Inba Discharge Channel (Hanami River) is also written, few people seem to take issue with the sense of incongruity.


花見川の法的名称は「印旛放水路(下流部)」となっています。この違いに違和感をおぼえ、河川管理者に質問して、その回答をもらったことがあります。印旛放水路(花見川)などの併記があるので、違和感を問題にする人は少ないようです。

1 はじめに

国土地理院発行地図では花見川は花見川として記載されています。そもそも花見川区という行政単位があり、花見川という河川名称とそれから派生する地域名称は極当たり前の社会事象です。


国土地理地図

ところが、ひとたび河川行政に足を踏み入れると、花見川は印旛放水路(下流部)という名称に替わってしまいます。それは河川法では花見川が印旛放水路(下流部)という名称になっているためです。


河川整備計画における表示

印旛放水路(下流部)と言われて、それが花見川であると理解できる住民はおそらく5%未満、いや1%未満(河川行政関係者だけ)程度であると想像します。

このような状況(一般社会における河川名通称と河川行政における河川名称の齟齬)に違和感をおぼえ、「こともあろうに」というべきか、「怖いもの知らず」というべきか、「おめでたい」というべきかその形容の言葉が見つかりませんが、2013年に千葉土木事務所に河川名称に関する質問状を提出したことがあります。千葉土木事務所からは丁寧な回答を口頭でいただきましたので、その結果を紹介します。

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2 質問(2013年5月)

●花見川の法的河川名称に関する疑問

花見川は法的に「印旛放水路(下流部)」となっています。

この法的名称は、次のような理由により現代社会とマッチしていないという疑問があります。

法的名称「印旛放水路(下流部)」が現代社会とマッチしていない理由

1 事業者独占名称である

花見川は印旛沼の放水路機能を持っているからといって、自然流域から成り立つ河川を「印旛放水路(下流部)」と名付けることは、この川を治水・利水事業者が独占していることになる。

2 河川法の趣旨に反する名称である

平成9年の河川法改正により、河川の目的に環境が加えられ、治水・利水・環境の3つの河川管理により河川の目的を達成することになった。

自然流域から成り立つ花見川を「印旛放水路(下流部)」と呼ぶことは、この河川法の趣旨と齟齬をきたしている。

3 古代からの名称「花見川」が存在し使われている(注1)

ハナミガワのハナは花島、猪鼻、花輪などのハナと同類で、下総台地の崖に付けられた縄文語由来の一般自然地名ハナである。

古代から受け継がれてきている花見川という名称は人々に親しまれ、行政区の名称にもなっている。

このように由緒ある固有名詞としての花見川を敢えて使わないで「印旛放水路(下流部)」と呼ぶことに、強い違和感が生じている。

4 「印旛放水路(下流部)」は住民に使われていない

殆どの住民が「印旛放水路(下流部)」という名称自体を知らない。聞いたことがあっても、それが花見川だとは理解していない。「印旛放水路(下流部)」は、事実上、行政機関の隠語にしかすぎない。

一方、花見川という名称を理解していない住民はいない。

5 人工施設をイメージさせてしまう

「印旛放水路(下流部)」という名称は、人々に人工施設という誤ったイメージを与える。花見川が自然流域からなる河川という実態を人々の目から覆い隠す役割をしている。

6 「印旛放水路(下流部)」では川づくり・地域づくりの発想がうまれない

放水路という名称は放水機能単体を表現しており、治水利水を思考するには好都合である。しかし、放水路という言葉からその川の流域について発想することは困難である。流域の発想が出来なければ、その自然や歴史についての発想はさらに困難である。

一方花見川という名称ならば、その自然、歴史、流域に関わる発想がだれでも浮かぶ。

「印旛放水路(下流部)」という名称は、花見川において人々の川づくり・地域づくりに関する興味を生じさせない役割を果たしている。


質問その1 法的河川名称に関する上記疑問についての河川管理者のお考えをお聞かせください。

質問その2 花見川の法的名称について再検討する機会を設けることは考えられないか?

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3 回答(2013年5月)

この質問にたいして次の趣旨の回答(情報)をいただきました。

「質問その1 法的河川名称に関する上記疑問についての河川管理者のお考えをお聞かせください。」について

回答(情報)(口頭でいただいた話を当方でまとめたものです)

①県が住民とコミュニケーションする際には花見川という言葉を使うこともある。県が関係する団体の出版物には「印旛放水路(下流部)」とともに「花見川」という言葉を追記している場合もある。

②法的河川名称について住民からの意見はこれまでない。

「質問その2 花見川の法的名称について再検討する機会を設けることは考えられないか?」

回答(情報)(口頭でいただいた話を当方でまとめたものです)

①再検討する機会は考えていない。

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4 感想と再質問(2013年5月)

私は次のような感想を持ち、同時に千葉土木事務所に再質問させていただきました。

① 「印旛放水路(下流部)」という河川名称がこれからの川づくりや地域づくりにふさわしくないという意見に県が接したのは、どうも今回が初めてのようです。

住民から意見がないから、名称再検討などの機会を設けることもあり得ないということです。

河川管理者としては、これまで誰も口から発することのなかった疑問に少々驚いた(面食らった)ようです。

私も、そのような河川管理者の様子を感じて、そういう無風環境が存在していることに驚き、面食らいました。

河川管理者というよりも、住民とか自治体(千葉市には「花見川区」まである)が花見川についてどれだけ愛着をもっているのだろうか、どれだけ「自分事」として花見川について考えているのだろうかということが心配になりました。

千葉市が花見川の名称についてどのように考えているのか、いつか聞いてみたいと思います。

また、何かの機会があれば、花見川の河川名称問題について地域で情報発信していきたいと思います。

② 土木事務所の回答は私の疑問に対する回答(情報)ではないので、次のような再質問をさせていただき、後日回答をいただけることになりました。

再質問

「仮に「印旛放水路(下流部)」という名称を止めて、「花見川」とか「○○川」に名称変更すると、河川行政上何かの不都合が発生するか?」

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5 再質問に対する回答と感想(2013年9月)

回答

「印旛放水路(下流部)という名称を別の名称に変更しても河川行政上の支障はない。」

「印旛放水路(下流部)」という名称を止めて、花見川と公式に呼ぶことにやぶさかでないという回答です。

ありがたい有額回答と言ってもいいものです。

沿川住民や千葉市の気持ちの持ち方と活動しだいによっては、花見川という名称が公式に使われる可能性があるということです。

この回答が活きて、実際に「印旛放水路(下流部)」が花見川に正式にチェンジするかどうかは、今後の活動次第だと思います。

私も住民自治組織や千葉市に対して、「印旛放水路(下流部)」から花見川に名称変更する意義、必要性について情報提供したいと思っています。

千葉県が「印旛放水路(下流部)」から花見川に名称変更すれば、右へならえで千葉市も名称変更することになります。そうすれば、行政がつくる計画・諸文書、地図類やパンフレット、現場の看板・各種表示が全て花見川で統一されることになります。

名称変更を機に、花見川に対する関心と愛着が増し、花見川がよい川になっていくきっかけになるとおもいます。

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6 感想(2023年3月)

まず、団体組織・グループとなんらかかわらない純粋1市民(個人)の質問状に丁寧に答えていただいた千葉県千葉土木事務所にあらためて感謝申し上げます。

次の写真は本日(2023.03.17)撮影した柏井橋架替工事関連河川工事(千葉市発注工事)の看板ですが、ここでは花見川が使われています。


工事写真

弁天橋の河川名は花見川になっています。


弁天橋

また千葉県の河川海岸図では花見川が追記されています。


千葉県の河川海岸図(一部)

このように、社会生活の現場では「印旛放水路(下流部)」という名称が使われることは少ないので、使われても花見川が追記されるので、河川名称に関する社会的軋轢や損失の実体は顕在化していないように感じます。

しかし、将来、花見川と周辺住民のかかわりを濃密にした社会がつくられる過程で、「印旛放水路(下流部)」から「花見川」に法的名称を変更することが必要になる時が必ず来ると考えます。

なお、2013年当時はその意義について深く理解できていませんでしたが、「印旛放水路」という名称は江戸時代の印旛沼堀割普請や明治期印旛沼開発(印旛沼開鑿)などの系譜を引き継ぐ用語であり、歴史的、土木的意義のある語法です。「印旛放水路(下流部)」が唐突に生まれた用語でないことの意義も理解しておく必要があります。

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注1 花見川の語源

私は、2013年には花見川の語源を縄文語由来の一般自然地名ハナ由来であると考えていました。現在では花見川の語源は「検見川(ケミガワ)」の吉祥表現「花見川(読みはケミガワ)」が転じて「花見川(読みはハナミガワ)」になったと考え、その時期は幕末から明治はじめ頃と推定しています。

2023.02.21記事「花見川(ハナミガワ)は検見川(ケミガワ)



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