私の散歩論

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2023年7月1日土曜日

有吉北貝塚北斜面貝層 縄文土器分布平面図・立面図の精度の検討

 North Slope Shell Layer of Ariyoshi Kita Shell Mound

Examination of accuracy of Jomon pottery distribution plan and elevation


I examined the accuracy of when the pottery distribution plan and elevation were created, using two pieces of actual pottery information as a reference. It seems that about 80% of the 3D coordinates obtained from the excavation are expressed in the graph published in the excavation report.

土器3D座標を土器分布平面図・立面図から読み取りましたが、土器分布平面図・立面図がつくられたときの精度を2土器現物情報から参考として検討しました。発掘で得た3D座標の8割程度が発掘調査報告書掲載グラフに表現されているようです。

1 土器分布平面図・立面図の精度の検討

これまでの作業で、発掘調査報告書に掲載されている土器分布平面図・立面図(「北斜面貝層土器出土状況(1)~(4)」)から3D座標を読み取り、土器の3D分布を把握し、3D分析に着手できる基礎ができました。これから3D分析を進める上で、そもそもこの土器分布平面図・立面図がどの程度精度であるのか理解しておくことは必須であると考えます。そこで、2つの土器の現物情報から参考として精度を検討しました。


土器分布平面図・立面図(「北斜面貝層土器出土状況(1)~(4)」)の一部

1-1 精度検討方法

精度検討は、2つの土器現物(サンプル)について破片注記を全部観察記録して、どのメッシュから、幾つの数の遺物番号として出土しているのか調べました。

一方、発掘調査報告書掲載グラフから作成した土器破片3Dモデルについて、どのメッシュから、幾つの数の遺物番号していて出土しているのか調べた。

その双方の値は原理として一致するはずですが、実際に比較することによって、出土現物データがグラフにどの程度正確に反映されているのか、その精度を評価しました。

1-2 294番土器

1-2-1 294番土器の様子


294番土器

加曽利EⅡ式中~新段階深鉢

参考 3Dモデル

https://skfb.ly/oFZPH

1-2-2 土器現物破片注記読み取り結果


土器現物破片注記読み取り結果 画像


土器現物破片注記読み取り結果 Excel一覧表


土器現物情報による294番土器のメッシュ別平面分布図

12メッシュの広がりの中で23遺物番号(土器破片群)を確認できました。

1-2-3 縄文土器分布平面図・立面図から作成した3Dモデル


294番土器破片分布3Dモデル(Blender画面)


3Dモデルと土器現物情報によるメッシュ別平面分布図との対応

10メッシュの広がりの中で19遺構番号(土器破片群)を確認できました。

1-2-4 294番土器に関する精度評価

出土現物の情報がどの程度土器分布平面図・立面図に表現されているかという観点からその精度を見ると、約8割の情報(19/23)が土器分布平面図・立面図に掲載されてることが判りました。

約2割の情報はグラフ作成作業の中で欠落したのですが、その理由は手作業でグラフを作成するときの「単純な記載漏れ」であるように感得できます。具体的例として、土器現物からの情報では遺物番号が存在している2つのメッシュで、グラフからの情報では遺物番号がありません。この部分の遺物番号は立面図には出ているのですが、平面図にはでていないため3D座標を得ることができませんでした。

1-3 392番土器

1-3-1 392番土器の様子


392番土器

加曽利EⅡ式新段階鉢形土器

参考 3Dモデル

https://skfb.ly/oGBoM

1-3-2 土器現物破片注記読み取り結果


土器現物破片注記読み取り結果 画像


土器現物破片注記読み取り結果 Excel一覧表


土器現物情報による294番土器のメッシュ別平面分布図

5メッシュの拡がりの中で6遺構番号(土器破片群)を確認できました。

1-3-3 縄文土器分布平面図・立面図から作成した3Dモデル


392番土器破片分布3Dモデル(Blender画面)


3Dモデルと土器現物情報によるメッシュ別平面分布図との対応

4メッシュの広がりの中で5遺構番号(土器破片群)を確認できました。

1-3-4 392番土器に関する精度評価

出土現物の情報がどの程度土器分布平面図・立面図に表現されているかという観点からその精度を見ると、約8割の情報(5/6)が土器分布平面図・立面図に掲載されてることが判りました。6点あるべき情報の1点が欠落したのですが、その欠落実態は294土器と同じく、立面図には情報があるのですが、平面図に対応する情報がないため3D座標としては1点欠落となりました。図面が込み入っているため、表現出来ない場合は省略しているため、情報欠落が生じています。

1-4 土器分布平面図・立面図精度に関する感想

1-4-1 精度感想

2つの土器現物情報からみると、土器分布平面図・立面図精度は、本来収集された3D座標情報のうち約2割程度が欠落していると言えます。平面図には表現されているけれども立面図には表現されていない、あるいはその反対という事例がかなりありますので、本来情報の2割程度が欠落したという感覚はその通りだと思います。

40年前から25年前まで実施された発掘調査報告書作成作業では、紙媒体に手作業で濃密な情報を土器番号を判るように埋め込む作業です。その作業の困難さを考えると、情報が8割残ったということを素晴らしいこととして評価すべきかもしれません。

なお、情報の8割程度が残ったというのは、土器分布平面図・立面図に掲載された土器についての話しです。土器分布平面図・立面図に掲載されていない土器は発掘調査報告書掲載土器のうち約55%あります。

1-4-2 土器量の表現は抑制されている

土器分布平面図・立面図では同一土器破片が大量に出土した場合それを1つの遺物番号として、1つの記号で表示しています。しかし小さなかけらが独立して出土た場合でも1つの遺物番号が与えられ、1つの記号で表示されます。従って記号が密集する場所は確かに土器出土が多いのですが、その場所では同一土器多量土器片出土や大型土器片出土が多く、記号の密集状況イメージよりはるかに大量の土器破片が出土しています。発掘時に同一同時出土土器は多量でも1つの遺物番号とするという基準を踏まえると、土器分布平面図・立面図における土器密集域の土器量イメージはかなり抑制されて表現されていると言えます。

1-4-3 土器現物の注記観察に基づく土器3D座標取得

発掘調査報告書に掲載されている中期全土器(398)は保管されていて閲覧が可能です。この土器を全部閲覧して土器破片の注記(メッシュ番号、遺物番号)を読み取り、その情報をもとに遺物分布図と遺物台帳から遺物番号のついた土器破片(群)の3D座標を取得することが可能です。学習分析活動でその必要性が生まれたときにはこの活動に取り組むことにします。

【参考】

ほとんどの土器(復元土器)の注記読み取り(撮影→後日判読)は問題が少ないと想定します。しかし294土器のような大型土器では注記読み取りが困難です。294土器での実際の読み取りはカメラ解像度不足と自分の老齢による視力不足で不可能であり、千葉県教育委員会管理者のT担当官が見るに見かねてサポートしていただきました。T様がライトと拡大鏡を使って土器内部に身を乗り出して衰えていない眼力で注記を読み取り、私がそれを記録するという、ほとんど作業を代替していただくという特別なサポートをいただきました。T様に感謝申し上げます。

また、294土器3DのGigaMesh Software Framework展開で内面展開図ができていたので上記のT様サポート作業はスムーズに進みました。内面展開図がなければ、作業難渋は目に見えています。



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