私の散歩論

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2024年6月23日日曜日

「儀礼行為とコンテクスト」の学習

 谷口康浩著「土偶と石棒 儀礼と社会ドメスティケーション」学習 7


Learning about “Ritual Actions and Contexts”


Study 7 “DOGU & SEKIBOU: Rituals and the Domestication of Society in Prehistoric Jomon” by Yasuhiro Taniguchi


I am deepening my understanding of the term “context” in “DOGU & SEKIBOU” which is the central concept of Yasuhiro Taniguchi's book. Context is explained as the physical circumstances of a ritual act. However, to understand a ritual act from its physical circumstances, advanced knowledge of rituals and interpretations (hypotheses) are required.


谷口康浩著「土偶と石棒」の中心概念ともいえる「行為とコンテクスト」の用語コンテクストの理解を深めています。コンテクストとは儀礼行為の物的状況と説明されています。しかし、物的状況から儀礼行為を喝破するには高度な儀礼知識と解釈(仮説)が必要です。

序章 儀礼考古学の現代的意義

2 儀礼考古学の研究法一モノ・行為・コンテクストー

(3)儀礼行為とコンテクスト

・この小節では儀礼考古学の4つの方法の中で著者が最も重視する「モノ・行為・コンテクストによる方法」のうち「行為とコンテクスト」について説明しています。

・著者は儀礼行為の再現性・反復性は考古学研究の重要な手がかりになるとして、石棒と石皿を対にした性交穏喩表現の儀礼行為などのパターンや形式を捉えて、同一石棒文化を共有する社会・集団を識別して、その時間的・空間的広がりを明らかにできると述べています。

「遺構・遺物に形跡をとどめる行為的側面についても、研究手続きを検討する方法論の深化が必要である。儀礼祭祀の一般的特徴として、形式を整えておこなう反復性と再現性をもった行為や所作がある。儀礼行為の再現性・反復性は、考古学研究においても重要な手がかりとなる。

再び石棒を例にいうと、石棒に残る人為的痕跡の観察、ならびに遺跡での出土状況やコンテクストの検討から、多くの事例に共通する現象上のパターンを抽出することができる(谷口2012b・2015)。石棒と石皿を対にして用いる性交の隠喩表現とみられる儀礼行為や、住居内で石棒を火にかけ破砕する行為などが確認されている。石棒が最終的に放棄されるまでの行為の流れや遺跡形成過程を検討し、儀礼行為のパターンや形式を捉えることにより、同一の石棒文化と儀礼祭祀を共有する社会・集団を識別し、時間的・空間的な広がりを明らかにすることが可能である。行為に着目したこうした研究手続きは、石棒の研究にかぎらず儀礼祭祀の考古学の基本的な研究法となり得る。」(谷口康浩著「土偶と石棒」から抜粋引用)

・次いで、著者は「「コンテクスト」とは、遺跡の中に残された儀礼行為の物的状況を指すが、それはある儀礼の場面が瞬間的に埋没した状況を必ずしも意味しない。」として、「コンテクストの解釈よりも前に、まずタフォノミーの研究をおこなう必要がある。」と述べて、タフォノミー研究の重要性に触れています。タフォノミー研究は、自分が現在作業している有吉北貝塚北斜面貝層の遺物3D分布見える化にも大いに関連するので、改めて検討することにします。

・さらに著者は儀礼行為と身体との関係も重要な研究視角になると述べて、その重要性と、それが儀礼研究の一つのアプローチになることを述べています。儀礼行為と身体との関係はイレズミなどの学習を過去に行ったことがあり、とても興味があるので、改めて検討することにします。

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【用語「コンテクスト」に関する感想】

1 用語「コンテクスト」が使われる異なる文脈

・この小節では「「コンテクスト」とは、遺跡の中に残された儀礼行為の物的状況を指す」と定義されています。また「遺跡での出土状況やコンテクストの検討から、多くの事例に共通する現象上のパターンを抽出することができる」ともかかれています。コンテクストという方法概念(ツール)を使えば現象研究が進むという文脈のようの感じます。

・一方、8ページでは研究手順として、コンテクスト解釈が目的のように書かれています。

「本書でもっとも重視するのはこのうちエ)の方法である。宗教や信仰には、意識的側面・行為的側面・物質的側面がある。先史時代の人々の意識的側面を考古資料から直接復元することは困難だが、考古資料の分析から行為的側面と物質的側面を把握することは可能である。

①多くの事例に共通する現象上のパターンから、

②儀礼的行為の型と認定できるものを捉え、

③その行為の背景にあつた観念形態を読み取り、

④遺跡に残されたコンテクストを解釈していく、

という研究手順が、筆者の基本的な接近法である。」(谷口康浩著「土偶と石棒」から抜粋引用)

・この二つのコンテクスト用語法が異なるように感じます。

・「コンテクスト」という用語(概念)が指す対象に、通常能力で扱えるものから、解釈能力(仮説設定能力)が必要なものまで、階層性があるのかもしれません。学習をさらに進めることにします。

2 コンテクスト解釈の困難さと魅力

・本書55ページには「コンテクスト」のより詳しい定義がかかれています。

「「コンテクスト」とは一般に出土状況を指すが、それは遺物・遺構の表面的な分布ではなく、遺跡に残るモノ・行為・空間の関係であり、ある行為の状況をとどめる資料群全体の機能的関係・脈絡として理解すべきである。」(谷口康浩著「土偶と石棒」から抜粋引用)

・石棒の形態的分析だけでは大いに限界があり、儀礼行為を知るためには「コンテクスト」検討が必須であるという著者の言い分はよく理解でき、大切です。

・「ある行為の状況をとどめる資料群全体の機能的関係・脈絡として理解する」とさらりと書かれた活動は、物的状況から儀礼行為を喝破するという活動であり、それには高度な儀礼知識と解釈(仮説)が必要です。とても困難な活動であり、それだけに魅力的活動であるのだと思います。


石棒展示(千葉県立中央博物館令和2年度企画展「ちばの縄文」2020.10)

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