私の散歩論

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2025年5月23日金曜日

北斜面貝層の姿

 Appearance of the shell layer on the northern slope


We looked at the appearance of the shell layer on the northern slope of the Ariyoshi Kita Shell Mound from the database information we constructed. The database revealed that the natural terrain is a gully erosion terrain. The shell layer fills the terrain. The 60,000 or so excavated artifacts are not distributed evenly throughout, but are unevenly distributed, divided into dense and non-dense areas.


有吉北貝塚北斜面貝層の姿を構築したデータベース情報から見てみました。データベースから地山地形がガリー浸食地形であることが新たに判明しました。貝層がその地形を埋めつくしています。6万余の出土遺物は満遍なく均等に分布するのではなく、密集域と非密集域に分かれて偏在的に分布します。

1 データベースから見た北斜面貝層の姿

1-1 地山地形


急斜面と顕著な段差地形


地山地形3Dモデル

データベースで作成した地山地形3Dモデルを観察すると、この地形は、急な谷壁や段差の発達という顕著な特徴から典型的なガリー浸食地形であることが判明しました。発掘調査報告書では地山地形(谷地形)が何であるか不明でした。ガリー浸食地形は地下水位より上で発生し、常時水流はなく、大雨の時だけ急流が流れ、面的浸食が急速に進みます。一般に植生の乏しい乾燥気候地域で見られるものです。下総地域では放置された開発裸地以外では見られません。北斜面貝層が納まるこのガリー浸食地形の形成要因に人為的影響(縄文人活動による土地の裸地化など)が関わっているのかどうか、興味のある検討課題です。

1-2 貝層


貝層分布

谷地形(ガリー浸食地形)が貝層で完全に埋め立てられています。興味深いことに、貝層による埋め立てが完了した時点(加曽利EⅡ式新段階)と有吉北貝塚集落終了時点が一致します。(ただし、後期初頭貝層が極小範囲に確認されています。)

1-3 遺物


遺物種別出土件数

北斜面貝層から約64000 件の遺物が出土しています。骨・歯が全体の58.2%、土器・土製品が31.7%、石器・石が3.8%などの内訳になっています。


グリッド別遺物出土件数

遺物が特に密に出土する場所が北斜面貝層の上流部と下流部に分かれて偏在的分布しています。


土器密集出土状況

上流部には土器(主に加曽利EⅡ式中段階、中~新段階土器)が特段に密集して出土する場所が存在します。


骨角歯牙製品・貝製品

また北斜面貝層のいろいろな場所からイモガイ製腰飾り、磨貝、骨角製釣針・刺突具などが多数出土していています。

2 感想

遺物全体の分布が偏在的である理由にはいろいろな要因が絡んでいると考えられます。その要因の大小を分布図だけから突き止めることは困難です。しかし、縄文人の投棄活動の特性が大いに反映していることは確実であると考えます。遺物の精細な3D分布を検討すれば、縄文人の投棄活動特性をあぶり出すことが可能であると考えます。

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