このブログでは千葉県小字データベースを完成させたので、その試用として鏡味完二の地名型について千葉県小字を検索して予察的検討をしています。
この記事では地名型「~屋敷」を検討します。
1 鏡味完二の検討 地名型「~屋敷」
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~yasikiの地名
この地名も豪族屋敷に由来し,荘園時代以後の名田開墾が盛行した鎌倉時代の地名である。
この地名の分布では,広大な充実地域が,広島から静岡までの間に拡がり,奥州や九州にもこの地名が多い。
〔地図篇,Fig.312〕
(Fig.22No.13)
概念図説明
開墾地名では,分布の粗密によって3つの地域に区分することができる。
開墾地名のこの区分された地域を,次のように命名することができる。
文化の中心から縁辺へと順次,(1)充実地域(Completed Region),(2)開拓地域(Pioneer R.),(3)開拓縁辺地域(Pionee Fringe)。
また分布のあるものには(1)と(2)との間に,前充実地域(Incompleted R.)を入れて,4地域とすることのできるものもある。
充実地域というのは,その時代の文化水準では,開墾が一応終了して新村の樹立がない地域,開拓地域には最も高密度にその語根型の地名が分布しており,開拓縁辺地域には,その地名が疎らに分布するのみである。
前充実地域にも同様に疎な分布がみられ,開拓が大部分すんでいて,充実地域に移行する漸移型を示すのである。
上表に掲げた地名は殆んどこのような配列をとっている。
開拓地域の前縁は,開拓前線(Pioneer Front)と称することができ,この線の通過する位置によって,開拓の進行する地域を捉えることができる。
鏡味完二(1981)「日本地名学(上)科学編」(東洋書林)(初版1957年) から引用
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2 千葉県における小字「~屋敷」検索結果
「~屋敷」は486件ヒットしました。
その分布図は次の通りです。
「~屋敷」小字分布
大局的にみると千葉県全域に偏在することなく分布しているように見えます。
詳しくみると分布が密集しているところと疎のところとがあり、この地名が流行した当時の開発地域をしめしていると考えます。
この地名分布と中世遺跡分布を重ねるとこれまで気が付かなかった情報を得ることができるかもしれません。
それは今後の課題とします。
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